カード現金化:元業者、2回目以降、商品発送せず






クレジットカードのショッピング枠の現金化業者による出資法違反事件で、逮捕された元貸金業で飲食店経営、橋本幸治容疑者(41)が、利用が2回以上になる顧客には売買を装うための「商品」を発送していなかったことが捜査関係者への取材で分かった。商品が送られなくてもカードの明細には商品売買の記録が残され、警視庁生活経済課は、橋本容疑者が違法な高金利による融資であることを認識したうえで、商品売買を偽装工作したとみている。【伊澤拓也】

 捜査関係者によると、橋本容疑者は06年7月〜今年3月、カードのショッピング枠を現金化する手法で、約750人に約4億3000万円を高金利で貸し付けたとみられ、回数は約2800回に上った。橋本容疑者は商品取引であることを装うため、30〜120円程度のおもちゃのネックレスやブレスレットを顧客に送っていたが、実際に商品が送られていたのは1000回程度だったという。

 橋本容疑者は初めて利用する顧客におもちゃを送る際、「必要なければ捨ててください」と伝えていた。再び現金化を申し込んだ顧客には商品は送らない一方、カードの明細書は商品を購入したことになっていたという。

 橋本容疑者の逮捕容疑は、顧客4人にネックレスなどの売買を装って現金を貸し付け、法定金利の最大23倍となる計約70万円の利息を受け取ったとしている。調べに対して、「周りもやっていて、逮捕されるとは思っていなかった」と容疑を否認しているという。
 ◇「売買は形式的」ヤミ金とみなす

 クレジットカード現金化業者を巡ってはこれまで、「商品売買」という理由で摘発されることはなかった。

 捜査幹部によると、ほぼ無価値とはいえ実際に商品を送付しているケースが多く、当局も立件には慎重にならざるを得なかった。カード会社は換金目的の使用を規約で禁じており、業者について会社をだましたとする詐欺罪の適用を検討したこともあったが、顧客も業者の共犯に問われる可能性があり、断念した経緯があるという。

 貸金業法を所管する金融庁も、カード現金化の手法について「貸し付けに該当するかはケース・バイ・ケース」と明言を避け、事実上の黙認状態が続いた。

 しかし、キャッシュバック率が法定金利を大きく超え、多くの相談が国民生活センターに寄せられるなど社会問題化する中、当局は法解釈の細部を詰めて検討を重ねてきた。警視庁は今回のケースについて、売買とうたいながら商品を顧客に選ばせていない点などを重視し「売買は形式的」としてヤミ金とみなし、出資法違反での摘発に踏み切った。

 一方で、すべての業者が摘発対象になるとは言えなさそうだ。商品が金券など相応の価値のあるものだった場合は、貸し付けとの認定は困難になるとみられ、捜査幹部からは「まだ司法判断はなく、摘発には慎重にならざるを得ない」との声も漏れる。【伊澤拓也】
毎日新聞



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