127時間


2003年4月25日、アーロン・ラルストン(ジェームズ・フランコ)はいつものように行き先を誰にも告げずに旅に出た。今回の目的地は、ブルー・ジョン、ビッグドロップ。

翌日、マウンテンバイクにまたがり旅に出た彼は、途中迷った2人の女性をガイドし、意気揚々としていた。
だが、そんな彼に思いもよらぬ運命が待っていた…



観賞日

2011年6月24日




【80点】








久しぶりに映画で思いっきり疲れた。だが、「長すぎて疲れた」とかそういう類のものではなく、とにかく集中できて、力がはいったからだ。

この奇跡の実話に。


















前半は、
スラムドッグ・ミリオネア』のダニー・ボイル監督らしく、
スタイリッシュな映像と軽快なノリが非常に面白い。


まるでミュージックビデオのようなつくり、ポップさ。
スタイリッシュという言葉がまさにピッタリだ。





考えると、
とにかくワクワクする「前半」というのが適当だろう。

アーロンもとにかくワクワクしていて、自転車で転ぼうと笑顔。
さらにアーロンは2人の女性をエスコートする時も地震に満ち溢れている。


観ている側もこういった自然を体験することの楽しさを感じ取れるつくりは、ある意味後半への伏線だったのかもしれない。

単純に自然の雄大さや楽しさも表現されていたわけだけれども。















そして後半、
映画はメインの展開へと突入する。


突如、手を岩に挟まれるアーロン。なんとかして動かそうとするも、岩は頑として動かない。ここからは基本的にアーロンはその場から動けなくなるわけです。

そうなると、画的にはつまらなくなってしまう・冗長的になってしまうのではないかと思いますが、まったくそうはならない。












やはりここでもダニーボイル監督の手腕が冴え渡る。
撮影監督を二人にしたことで、様々な効果が生まれた。

水を飲むアーロンをボトルの内側から観た映像、ハンディカメラの映像などなど…
とにかく飽きる暇がないほど多彩な映像。

そこに時おり挿入される、雄大な自然の映像。
ひとりぼっちで渓谷に残されているアーロンのちっぽけさがありありとわかる。




正直、圧巻の映像力でした。どうしてここまで飽きさせないことが出来るのか?












だが、個人的にさらにプラスで良いと思ったのは、
ユーモアにも富んでいる点。


アーロンは人柄は快活で明瞭な人間。
それを表すユーモアもたっぷりで、腕を挟まれてからもユーモアセンスが残っている。まあ段々笑えない冗談になってくるわけですが。





しかし、ユーモアたっぷりの彼も過去にあったことを思い出して空想に浸る。

充実感や後悔、感謝。様々な感情が過去からあふれ出す。

また、ここの演出が秀逸だこと。ここもやっぱり『スラムドック・ミリオネア』の感じと同じ。過去と現在のリンクのさせ方がスムーズかつ、毎度毎度手法を変えて飽きさせないようにしている。

しかもそれが非現実すぎるのではなく、こういう極限状況になったらこうなるんだろうなーと説得力がある。まさに観客にアーロンの体験を追体験させて、同化させようとしている。














そして
最後にアーロンが下す決断。

若干痛々しいが、それから目を背けてはいけない。



私は痛々しさに目を背けたくなったが、しかし同時に彼を応援する気持ちにも溢れていた。

「痛い痛い痛い…でも、がんばれ!」と歯を食いしばり、手に汗握っていた。
これまでアーロンが腕に挟まれてからあった緊迫感・切迫感がピークに達し、心臓もバクバク。















いや、むしろ私達はここで彼と同化し、生の実感を体験する。

ラストに待っているのは、圧倒的な実感。コレに尽きる。



いやはや濃密な90分強。
だからこそ私は観た後にドッと疲れたのだろう。
だが、充実感に満ち溢れていた。登場人物にエールを送りたくなるような映画はそうそうない。
主演の、というかもうほとんど1人芝居のジェームズ・フランコスパイダーマンシリーズのハリー・オズボーン役が有名)には脱帽だ。余裕の顔も絶望の顔も、決死の顔もまさに完璧。


まさに引き込まれる感覚。



生の力強さを感じたい方には是非観てほしい、
快活な一本だった。











↓予告編はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=q7mjegvyt60