UN-GO episode:0 因果論


坂口安吾の『明治開化安吾捕物帳』を原案に、設定を独自にアレンジしたTVアニメの劇場版。(フジテレビのノイタミナ枠)
近未来の東京を舞台に、探偵を名乗る青年・結城新十郎と相棒の美少年・因果が難事件を解決していく姿を描いてるのがアニメ版だが、映画版では新十郎と因果の出会い、ふたりの初めての事件が語られる。


観賞日

2011年12月23日





【73点】







本作は10〜12月まで放送していたアニメ「UN-GO」の前日談を描いたものである。

タイトルにもある通り、まさしく「エピソード0」。
つまり作品の放送版を観たことがないとけっこう厳しい。
いや、さすがに本放送のエピソード未見だと無理かも?


数少ない上映劇場でも明日までの公開となってしまった今となっては遅いですが、
本放送を観ていた人間なら必見の内容。というよりも、これとセットで「UN−GO」という作品は完成している。
この映画自体の上映時間が約50分なので、本放送11話分+映画版(放送2話分)=13話分で完結しているといったところか。

「BLOOD−C」や「東のエデン」のように劇場版をみないとどうにもならない作品ではないので、その辺は好感が持てる。




















劇場版と放送版の両方やるアニメが増えてきた中、注目すべきはその手法。

謎を抱えたまま進行する放送版に対して、このエピソード0が付与される。
全話観た後でも途中でも楽しめるというのがミソで、というか観ないとわからないところも多々ある。

全話観るとむしろ、このエピソード0の内容が知りたくなるというのは上手いところ。
実際のこの映画には様々な放送版への伏線が張り巡らされていて、計算して放送と映画に分けた印象がある。


これでは劇場に足を運んで1200円を払わざるを得ない。ビジネスとしてもうまい。
アニメの映画化がより加速するであろう今後はビジネスとして、いかに戦略も練れるかも重要になってくる。
数が増えれば増えるだけ、下手な作品は淘汰されていってしまうのだから。



















さすが「鋼の錬金術師」第1期、「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」で、原作とは全く違ったベクトルでオリジナルストーリーを進めながらも原作の良い要素を失わずに名作をつくった、水島精二會川昇のタッグといったところ。

過去と現在が何度も何度も交錯していく内容ながら、しっかりまとまっている。また、観客を絶妙に焦らしてくるような進め方でもある。



このエピソード0の事を放送版で何度か言及していたので、見直せるという楽しみも観客に与えているのがポイント。
つまらなくて、放送版からあまりにも乖離している劇場版では、その気も起きないだろう。
それこそ練られている脚本のおかげに他ならない。










放送版と合わせた意見だが、この「UN−GO」のみどころのひとつは、因果役の豊崎愛生の演技。「けいおん!」の平沢唯
とある科学の超電磁砲初春飾利、さらには声優アイドルユニット「スフィア」に所属することで有名な豊崎愛生は、役で多いのはいわゆる”ゆるふわ”系の役。
しかし、今作は全く違う印象の役、因果を演じている。

因果は少年と大人の女性のふたつの姿を持っているが、どちらもきっちり演じ分けている。今までは豊崎愛生が演じていると大体わかったもんだが、今作は事前に知らなければわからなかっただろう。






短いながらもしっかりとエピソードが凝縮された作品。
放送を見ていて興味を持った人は、観れたら絶対観るべきだと思われる。




予告編はこちら↓
http://www.youtube.com/watch?v=ajPvxCA-Z3c