ドラゴン・タトゥーの女


追っていた実業家にハメられ名誉毀損で訴えられ、有罪判決を受けた月刊誌ミレニアムの記者・ミカエル(ダニエル・クレイグ)。

天才女性ハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)がそんな彼を依頼を受け調査していた。その調査結果から、経済界の大物一族の長ヘンリックがある依頼をミカエルにする。それは、40年前の16歳の娘ハリエットの失踪事件の謎を解く事。

様々な手掛かりから捜索するミカエルだがやがて手詰まりに近づく。しかし、自分の調査をしていたリスベットに興味を持ち、共同調査を依頼する…


観賞日

2012年2月10日







【75点】

(最近同じ点数ばっかですいません(笑)でも、アタリを結構引いてるってことです。)





今作は、2010年公開のスウェーデン映画『ミレニアム-ドラゴンタトゥーの女-』の、ハリウッドリメイク版。
さらにいうと、原作は「このミステリーがすごい!」で高く評価された世界的ベストセラー。その3部作の始まりの1作目。
(各所の書き方から見ると、原作のハリウッドでの映画化という様子。スウェーデン版はあまり関係ない?)

ちなみに私は原作未読、スウェーデン版は1作目のみ観てます。

↓ちなみにスウェーデン版のレビューはコチラ↓
http://d.hatena.ne.jp/chairmanzx/20101009/1286642344



















なんと言っても今作の特徴は、あのデヴィット・フィンチャー(『セブン』、『ゲーム』、『ソーシャル・ネットワーク』などなど有名作多数)が監督をやっている点。

この作品ラインナップからも分かるが、フィンチャーの作品には独特の空気感がある。
冷たさというか客観視されていうというか… とにかく洗練されている。







結論から言えば、今作も例に漏れず、スウェーデン版よりも洗練された出来だった。

予告編にもあるが、屋敷へと向かうカメラアングルは最高すぎる。
平面的なイメージのあったスウェーデン版に比べると、物語や舞台が立体的になった。


特にオープニング。かの有名なレッドツェッペリンの「移民の歌」を女性ボーカルでカバーしたものだが、
ダークで鮮烈な作品なのだと一瞬で、本能的にわからせる。
これからどんな映画になるのだろうかと緊張感が最高潮になる。ここがピーク過ぎるのも難点だが(笑)


既に劇場予告編の「移民の歌」から鳥肌モノなのだが、オープニングも鳥肌モノだ。
ぜひまずは、この衝撃的かつスタイリッシュな予告編を観てみて欲しい。ぶっちゃけ久しぶりに予告編で「ガタッ」ってなりました。



予告編はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=dD4dws3d5i4




















前作はミステリーを主眼としていたからなのかわからないが、情報量が多く、
分かりづらい印象があった。どうしても頭に入って来辛いようなモヤモヤ感。

ハリウッド版でそれが解消され、スッと入って来やすくなった。
テンポの良さは2時間半強の作品という長さを全く感じさせないほど無駄がない。







尺を取る場所もスウェーデン版と違っており、結末もまあまあ違う。
常にスウェーデンの寒さが伝わってくる冷ややかな映像は、サスペンスという要素と存分に絡み合い、絶妙なハーモニー。

しかしミカエルとリスベットの物語が、最初は平行に進んでいくため、ボーーとしてたらわからなくなるかも?








注意したいのは、少々性暴力表現などエグいシーンもあること。

個人的にはこれでスウェーデン版を受け付けられなくなって2作目以降を観れなくなったが、
今作はわりとマイルドに仕上げられている。
それでも「痛そう…」というイメージは健在なので苦手な方はご注意を。




















今作の特徴は、役者陣にもある。

ミカエルを演じたダニエル・クレイグは、スウェーデン版よりも恰好よく仕上げてある。
ジェームズボンドのイメージが強いせいか、イケメンすぎるきらいもあるが。

しかし、スウェーデン版の頼りなさとは逆の、懐の深さが光っていたようでもあった。
むしろこの映画はミカエルの懐の深い面を描くことにも注力されていたかにも見える。






そしてアカデミー賞にノミネートされたリスベット役のルーニー・マーラは圧巻の一言。

文字通り体を張ってリスベットを演じた。スタントやヌード、そしてリスベットというキャラクター…
頭が下がる勢い。この人が『ソーシャル・ネットワーク』の冒頭でザッカ―バーグをフッた女性と同一人物とはとても思えない。

スウェーデン版ではひたすらに強い女のイメージがあったものの、今作では時折弱々しさも垣間見せる。
そのため、スウェーデン版と比べるとミカエルとリスベット2人の関係も若干異なってくるのが面白い。



今作では記号的なキャラクターというよりも、より人間としての彼らに光を当てたようなつくりになっている。












リメイクは失敗に終わることが多い。というのがお約束のひとつではあるが、この作品は一見の価値あり。
前作を観た人も観てない人も楽しめるだろうし、観た後はもう一度比較できる楽しみも生まれるだろう。






それぞれカラーが違うため、どっちが良いかも分かれるだろう。しかし、そこが面白さの一つでもある。
リメイクを失敗していたら片方が良いという意見に寄ってしまうためだ。

個人的には見やすさ、テンポ、映像美でこっちに軍配が上がった感じ。




はたして続編も出るのだろうか…