じじぃの「科学・芸術_680_鎮守の森・緑の防波堤」

横浜ゴム、いのちを守る森の防潮堤 大槌町「平成の杜」プロジェクト 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=GG9y3lxb5Pg
掛川市 「森の防波堤づくり植樹祭」


いのちの森づくり〜いのちの森を世界に〜 宮脇昭
明治神宮100年
大正9年(1920)明治神宮が代々木の地に造営されました。境内の造成にあたっては全国各地から延べ 11 万人にも上る青年たちの真心こもる勤労奉仕が行われ、全国から 10万本の樹木が奉献され、「市民の力」で環境風土に適した常緑広葉樹を主たる樹種に選定し「千年万年」と続く鎮守の森がつくられました。
https://www.inochi-no-mori.com/concept.html
『東京に「いのちの森」を!』 宮脇昭/著 藤原書店 2018年発行
〈対談〉「ふじのくに」から発信する、ふるさとの森づくり 川勝平太X宮脇昭  2014年11月30日 より
川勝 先生は、このたび第5回(2014年)の「KYOTO地球環境の殿堂」入りをはたされましたね。おめでとうございます。
宮脇 どうもありがとうございます。例年は2人か3人での受賞らしいのですが、今年は私1人だけでした。
川勝 第1回の受賞者には、ノーベル平和賞ワンガリ・マータイさんが入られています。この賞は「京都議定書」すなわち1997年のCOP3(第3回気候変動枠組条約終結国会議)の趣旨を継承して「京都」の名を残し、地球環境の保全に努めた方を顕彰する国際賞です。今日までに内外で1700ヵ所以上で4000万本の植樹という、驚異的な森づくりのエキスパートである先生の受賞はシンボリックです。「宮脇方式」の森づくりは「鎮守の森」の知恵に学ばれたものですね。「鎮守の森」は日本の資産ですから
先生の殿堂入りは「鎮守の森」が地球環境保全のモデルになるということの証です。先生のドイツの恩師で「潜在自然植生」理論の提唱者であった故チュクセン教授は、先生がその理論を必ず実証し、かつ実践できる人物であることを、見抜いておられたのではないですか。
宮脇 それはどうか知りませんけど、運がよかったんだと思います。私は結局、人、人、人、人のおかげでここまできています。偽物は相手にしないんです。本物を相手にします。
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宮脇 今、大槌町の森づくりをやっているんです。2012年の4月が最初で、今はもう3回目、横浜ゴムの南雲忠信会長の決断と実行力で、「宮脇方式」でやっています。
川勝 大槌町もことはよく知っています。津波で町長以下、役場の方が大勢亡くなり、かつ火事もあった。水責め、火責めです。私は震災の2週間後の3月25日、26日に現地に入りました。その凄まじい現場を見て、「ここを助ける」と決定し、現在もまだ救援活動を続けています。岩手県には今でも20人ぐらいの静岡県庁の職員が入っています。私が大槌町に行ったときは、雪が舞う寒空のしたで、吉里吉里小学校に皆さんは避難されていました……。
宮脇 吉里吉里小学校には、大きなタブノキが残っているんです。
川勝 それも見ましたが、どの樹木が津波に耐えたかに注目しなければなりませんね。静岡県大槌町とはつながりがあります。東北の大震災は他人事ではありません。東海地震南海トラフとの巨大地震が想定され、災害が起こる前に整える防災力は何かという問題意識をもって、後援活動をしています。大槌町の北にある山田町にも、大槌町を訪れたのと同じ日に行きました。山田町も役場の下の階が津波でやられ、車もすべて流されていました。役場の上の階で憔悴しながら指揮をとられていた町長にお目にかかり、車など救援部品を置いてきました。津波は沿岸部を一網打尽にしました。何とも名状しがたい、きつい被害の様相でした。被災地に「緑の長城」をつくるというのは素晴らしいプロジェクトです。私はそれを「事前防災」の考えをもって、静岡県レベルでも、市町の首長と相談しながらやっていきます。命令はできません。
宮脇 そうでしょうね。
川勝 掛川市に対しても、私はいわば軍師にはなれますが、防波堤をこうしろという命令はできません。知事の権限の限界はありますが、影響力は大きい。
宮脇 それは大きいですよ。今年の6月からやっと「海岸法」を改正して「緑の防波堤」計画には、ちゃんと50パーセント以上、国税が出るようになりました。国交省で、太田大臣とも一緒に森づくりをしています。彼も本気でやっています。 私は2020年のオリンピックがチャンスだと思います。オリンピックは一瞬で終りますが、オリンピックに来た人に3本のポット苗に10ドル、10ユーロ、1000円出してもらって、東京オリンピックを記念したいのちの森、9000年の森をと、日本各地に植えさせたらどうでしょう。植えた人の名前をつけてもいいことにして、毎年、クリスマスに、たとえば静岡県なら川勝知事のサイン入りで、育った苗木の写真をつけて毎年出すようにすれば、観光対象にもなるし、それをやろうと。
川勝 それはいいアイデアですね。オリンピックは東京だけでのものではありません。全国知事会の席で私は「カルチュラル・オリンピアード(cultural olympiad)を提案し、賛同をえました。東京五輪には世界のアスリートが来日しますが、文化にも着目し、日本各地で文化イベントをしながら、世界のアーティストも呼ぼうというものです。先駆けはイギリスで、ロンドン・オリンピックに合わせてカルチュラル・オリンピアードを展開して、成功させました。オリンピックの開催年には開催国にたくさんの人が来ますが、翌年の訪問客数はがた落ちになります。ところが、イギリスではオリンピッのク翌年のほうが、人数が多かった。それはイギリス全土で、オリンピックに合わせて各地の個性を出した文化的プロジェクトを立ち上げたからです。それは日本でもできます。しかし、ぜひ日本の独自性を出したい。それには文化の原点にもどるのがよいのです。文化(culture)の原義は人間が自然に手を加えることです。文化の原点は土を耕すことなのです。これが同じ自然に見えても、wild natureとcultivated natureの違いです。明治神宮は人間のつくった森なので、wild natureではなく、文化の所産です。
宮脇 そのとおりです。
川勝 神宮の森は自然に見えますが、人間がつくったもの(man-made)なので、規模の大きいgardenなのです。ガーデンとは人が手を加えた自然です。鎮守の森のようにヒトの心と手の加わった森を、私は「フィレスト・ガーデン(forest garden)」と名付けています。神宮の森は日本の実で里の文化資産です。イギリスは人間中心主義ですから、それに応じた文化イベントを展開しました。私ども日本人は、人間は自然の一部であるという哲学をもっており、しぜんとの調和を重んじ、自然を見下すどころか、富士山に見られるように、自然には畏敬の念をいだいていなす。人間が自然から学び、自然を生かし、人間のためにもなるように手を加える。そういう活動は文化です。有事には防災に役立ち、平時には美しい森を楽しむ。植樹は、景観をよくするし、人の心を耕します。土を耕すことは、人の心を耕すことに通じている文化活動です。そういう日本的な文化活動を、東京オリンピックをきっかけに、静岡県からも発信していきたいものです。
宮脇 すばらしい。やりましょう。それは。各市町村に呼びかけて、日本の中心の静岡県で、海岸から富士山まで、いろんなところで。今は、オリンピックまでちょうと6年で、ちょうどいいじゃないですか。