ニコニコ動画がアニメビジネスに与える脅威

ニコニコ動画がアニメビジネスに与える脅威は二つある。
一つは新作アニメにおけるテレビ視聴率の低下。
もう一つは、旧作アニメにおける有料ネット配信との競合。

同日同時刻一斉放送の不可能性とテレビ視聴率の低下

特に深夜アニメに顕著だが、アニメは元々視聴率を取れる番組ではないこともあり、ゴールデンタイムに全国で同じ時間に放送することができない。
そのため、東名阪限定でのテレビ放送が行われたりするわけだが、それも各テレビ局に独自に交渉して番組枠を取得するため、同じ日同じ時間に一斉に放送することができない。
地域によっては、一週間放送が遅れたりすることもある。


ニコニコ動画では、放送日当日あるいは翌日にアニメ最新話の動画がアップロードされてしまうため、放送が遅れる放送局の地域に住む人がニコニコ動画でアニメを見てテレビで見なくなるという現象がおきてしまう。
最悪の場合、最新話の放送が他の地域より遅れることで視聴率が取れないという理由で断られ、テレビ放送ができないという事態が生じ得る。


新作アニメを、ネットで提供すれば良いという考えもあるかもしれない。
しかしながら、インターネットの動画配信メディアとしては最多の利用料を誇るニコニコ動画において、削除されずに残っている人気アニメでさえ数十万回(30万回くらい?)の再生に止まる。何度も再生する人がいるため実際にはその数よりも少ないだろう。
テレビであれば、東名阪(三大都市圏の人口は全人口の50%)で1%の視聴率を獲得するだけで50万人以上の視聴者が見込める。深夜帯については録画して見る人もいると考えると数百万人規模の視聴者が見込める。
DVDの宣伝メディアとして、テレビを外すのは非常にリスクが高いといえるだろう。

無料配信メディア(ニコニコ動画)VS有料配信メディアでは勝負にならない

旧作アニメは、レンタル店の在庫やインターネット配信あるいはテレビ(CS,BS等)での再利用によって収益を得ることができる。
十分なライブラリを持つことで、毎年そのような再利用メディアからの一定の収益が得られれば、中小企業である製作会社の収益性が安定し倒産の危機は少なくなる。


しかし、ニコニコ動画で旧作アニメが見られるということになると、これら再利用メディアのうちレンタル店やインターネット有料配信との競合が起きる。
特定のアニメを見たいと思ったとき、あるいは何か良さそうなアニメを見ようかと探すとき、一方で有料で配信メディアがあり一方で無料配信メディアがあれば、まず無料配信メディアから先に検討し、その後有料メディアを利用するということになるだろう。その結果、ニコニコ動画は有料配信メディアが得られたであろう収益を奪ってしまうことになる。
なお、ネット配信にも、Gyaoのような宣伝方式の無料メディアがあるが、著作権者が配信期間を限定することで有料配信と協調することができる。しかし、ニコニコ動画の違法アップロードはコントロールができないことが大きな問題となる。