大阪BABA「Pichet Klunchun Program」<one-Dance>

大阪は上方歌舞伎上方落語の発祥の地であり、古くから独特の芸術文化を生み出してきた。グローバリズムに支配される現代において個の身体に着目、大阪から新たな表現を模索しようという試みがDANCE BOX主催dB Physical Arts Festival2008<大阪BABA>である。今回は「場」の持つ特性を生かすことがテーマだったようだ。
Pichet Klunchun Programは大阪最古の能楽堂で行われた。ピチェ・クランチェンはタイ人。タイ宮廷舞踊の「コーン」とコンテンポラリー・ダンスを融合させた作風で知られる。ことに自作自演ソロ『Reconsider』が圧巻だった。摺り足や重心の低い動きは能をはじめとした日本の伝統芸能とも通じる。手の動きも細かく空気と自在に戯れているかのよう。ひとつの動きが他の身体部位にも波及し、それが連綿と続いていく。常に空間のなかでの身体が意識されている。今回の話題は能とのコラボレーション。能楽師の山本章弘による仕舞「隅田川」に続いてクランチェンも同曲に挑んだ。子を人買いにさらわれた母親の悲哀を描いた狂女物。クランチェンは小さな石を手に握り締め母親の想念を表現する。クランチェンのダンスには独特の磁力があって強く惹きつけられた。
(2008年10月8日 山本能楽堂)
DANCE BOX<One-Dance>はご好意でゲネプロを観せていただいた。これはDANCE BOXが若手アーティストの成長を手助けするステップシステムの最終段階にあたり20〜30分程度の創作を発表する。山田知美作品は観られず、野田まどか作品のみを観た。会場は天神橋近くにある大正モダンの面影を残した4階建てのビル。廃墟同然になっていたものを改修、現在はアートギャラリーとして使用されている。野田作品『生のっ!』は4階の小スペースで上演されたが観客参加型作品らしく開演前からはじめる楽しい仕掛けがあったようだ。そのため作品の全貌をうかがい知ることはできなかったのだけれども面白く観た。野田のダンスは腰をかがめて足裏を微細にもちいた動きから狂ったように回りまくるものまで多彩。静かなものから激しいものへの転調に魅力を感じる。千日前青空ダンス倶楽部の舞踏手であり、歌い手としても活動する野田は美人、チャーミングで人気が出るだろう。11月末に横浜・STスポットで行われる「DANCE BOX GO EAST」にも出演。関東でもその踊りを観ることができる。ぜひ注目したい。
(2008年10月10日 フジハラビル・ゲネプロ所見)