JR東日本から上野東京ラインの運行計画が発表された。常磐線特急「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」は「ひたち」と「ときわ」に再編され一部を除き品川発着となる。JR東日本の10月30日付リリースで発表された特急料金体系は、以下のとおり従来の制度を大きく変更するものである。3月15日のダイヤ改正で平日通勤時間帯に登場した「スワローあかぎ」のスワローあかぎ料金券を発展させたものだが、1年間の試行を経て、いよいよ本格的に導入される。
- 自由席の廃止(指定席特急券と座席未指定券が同額)
- 年間同一料金
- 車内購入料金と事前購入料金の格差
現行の特急料金と比較すると、次のようになる。
営業キロ | -50 | -100 | -150 | -200 | -300 | |
新料金 | 事前 | 750 | 1,000 | 1,550 | 2,200 | 2,500 |
車内 | 1,010 | 1,260 | 1,810 | 2,460 | 2,760 | |
現行料金 | 通常期指定席A | 1,270 | 1,700 | 2,350 | 2,680 | 2,900 |
通常期指定席B | 1,030 | 1,450 | 1,860 | |||
自由席A | 750 | 1,180 | 1,830 | 2,160 | 2,380 | |
自由席B | 510 | 930 | 1,340 |
表の現行料金は上段がA料金、下段がB料金である。B料金の適用区間は勝田までなので、勝田以北の各駅相互間及び勝田以南と以北にまたがる区間の特急料金は、上段の料金になる。
新料金は、現行の指定席料金や150キロまでの自由席A料金より安くなるが、大半を占めるB料金区間の利用者にとっては、それほどメリットがなく、デメリットが大きい。指定席特急料金は、通常期で13.2%から26.5%、閑散期では5.9%から17.2%の値下げにすぎない。一方自由席利用者にとって自由席廃止の影響は大きく、とくにB料金の50キロまでの区間は47%という大幅な値上げとなる*1。トクトクきっぷのひたち回数券、フレッシュひたち料金回数券と定期券用月間料金券も廃止される。
車内購入料金と事前購入料金の格差は、首都圏の普通列車グリーン料金に続くものである。「スワローあかぎ」の場合は、通常の指定席特急券を残しており、料金券は車内で発売せず、車内で購入すると指定席特急料金となる。常磐特急はこれを一本化し、車内購入料金は事前料金の一律260円増しとしている。なお、グリーン車の特急料金には車内料金がなく、事前料金から520円減額する。車内料金を事前料金より高くすること自体は合理的であるが、「すいているから、特急で座って帰ろうか」という途中駅からの利用者を逃すことにならないか。
この新料金体系が旅規にどのように反映されるのか興味深い。これだけの本格的な制度改定であるから、「スワローあかぎ」のように基準規程や通達で済ますわけにはいかないだろう。
一つだけはっきりしている旅規の改定がある。水戸・勝田での乗継通算制度*2の廃止で、旅規57条2項から7号が削除される。リリースは、特急料金だけで、グリーン料金の通算については触れていないが、おそらく58条2項7号も削除されるのだろう。
追記1(11月5日):乗継通算制度に関しコメントをもらったが、自由席であれば通算するよりも、分割購入したほうが安上がりのケースが多い。例をあげると、通算料金1,830円の柏・高萩間は、水戸または勝田で分割すると、930円+750円の1,680円で済む。同じく石岡・いわき間も、510円+1,180円の1,690円。自由席特急料金が指定席料金から一律520円引きであることと、運転区間がA料金区間とB料金区間にまたがっていることが原因である。
新料金体系では、このような特急券分割によるメリットはなくなる。乗継通算の廃止により、いわきから石岡まで乗車するとき、水戸まで速達タイプの「ひたち」を利用することができず、停車タイプの「ときわ」で行くしかないというのは改悪だろう。
追記2(11月6日):追記1で「新料金体系では、このような特急券分割によるメリットはなくなる。」と書いたが間違っていた。料金表をよく見ると、100キロまでが1,000円で、200キロまでの2,200円と釣り合いが取れていない。現実に柏・いわき間は、水戸で分割すると200円安くなり、「ひたち」と「ときわ」の乗継も可能になる。
100キロまでを1,000円と特に安くしているためだが、牛久、土浦、石岡などからの通勤利用者に対する激変緩和措置だろうか。不自然な料金体系である。
追記3(12月25日):JR東日本の12月22日付リリースで、7日間で10回(5往復)利用できる「定期券用ウィークリー料金券」の発売が発表になった。コメントでも評判が悪かった「定期券用月間料金券」廃止の代替措置だが、「定期券用月間料金券」及び「フレッシュひたち料金回数券」と、1回当たりの料金を比較すると次のとおり。現行の月間料金券には使用回数の制限がないが、22日間44回利用するものとして計算した。
ウィークリー | 月間料金券 | 回数券(自) | 回数券(指) | |
---|---|---|---|---|
石岡 | 814 | 436 | 570 | 770 |
勝田 | 1,046 | 831 | 720 | 1,130 |
日立 | 1,046 | 930 | 1,290 | |