「ソーシャル・ネットワーク」

Facebookを創設したマーク・ザッカーバーグを虚実とりまぜて描いた、デヴィッド・フィンチャー監督作品。
アカデミー賞の多部門にノミネートされるなど、前評判も高かった作品だし、期待して観たが、個人的にもツボに入りまくり、これは傑作や!と高揚した。
名作「市民ケーン」を彷彿させる…とか言われても、「市民ケーン」を観てないし、ピンとこなかったのだが、脚本の構成とそれを生かす演出は確かに見事だと感じた。
インターネットやキャンパスライフという題材が、デヴィッド・フィンチャーのハイパーな映像と相性が良かったというのもあるが、今回は映像技術をこれ見よがしに使わず、実は裏でかなり凝ったことやってるとわかる人にはわかる程度に抑えて、演出に徹したのが功を奏していると思う。テンポもスピーディーで、一瞬たりとも退屈することがなかった。
何を考えてるかわかりにくい主人公に、アスペルガー障害という自閉症の一種のような病を持つという設定を加え(実際にザッカーバーグ氏本人がそうであるかは関係なく)、ディスコミュニケーションを強調したことで、より魅力あるキャラクターになっている。感情移入しにくい人物のはずなのに、ラストシーンはせつなくてグッとくるものがあった。
なんといっても虚実のバランスが絶妙で、「成功者の孤独は理解されない」というテーマが、観客のいろんな想像力を働かせることを要求して、非常にスリリングな映画体験だった。