近いほうが高い乗車券2(旅客営業取扱基準規程第149条)

大宮から三河島への片道乗車券です。
大宮・東京間で東北新幹線を利用し、東京で折り返して常磐線(上野東京ライン)経由で三河島まで向かう経路で、運賃は470円です。経由欄は「大宮・新幹線・東京・常磐」とあります。


一方で、大宮から東京で同じく新幹線を利用し、東京で下車すると運賃は550円です。
経由印字は「大宮・新幹線・東京」です。乗車距離の短いはずの東京までの方が運賃が高くなる逆転現象が発生します。


これは東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業取扱基準規程(以下、基準規程)第149条第1項第1号に規定される特例の適用によるものです。
西日暮里以遠と三河島以遠を乗り継ぐ場合、日暮里経由の乗車券で区間外となる日暮里〜東京間の折り返し乗車が可能です。
すなわち、大宮→三河島の乗車券の運賃計算上の経路は大宮(東北本線)日暮里(常磐線)三河島営業キロ25.7kmで対応する運賃は470円です。
この乗車券の効力として、日暮里・東京間(片道5.8km、往復11.6km)の区間外での折り返し乗車が認められています。上野を通過する新幹線が今もあることからか東京折り返しで自由席に並ぶ旅客を想定してか、上野折り返しだけではなく東京での折り返しも認められています。

一方で大宮→東京の乗車券には特例はなく、乗車経路である大宮(東北新幹線)東京営業キロ30.7kmに対応する550円が運賃となります。

大宮→三河島の乗車券470円は経由欄に東京を含んではいますが運賃計算上の経路になく、東京での折り返しは西日暮里以遠と三河島以遠の相互間を利用することを条件に認められているに過ぎません。
この乗車券で東京での下車を希望した場合は本来区間変更が必要となるのですが、経由欄に東京が印字されていることから途中駅での前途放棄とみなされそのまま下車が認められてしまいそうな気もします。
片道200kmを超えると東京都区内発着となるため三河島と東京で差がなくなるので実際に問題となることは少ないように思われますが、実際にはどのように扱われるのでしょうか。

なお、基準規程第149条は基準規程第151条と異なり、分岐駅を「通過」する列車に乗車していることを条件としていません。従って、西日暮里→三河島(東北・日暮里・常磐経由)の乗車券を所持する旅客が西日暮里から山手線外回りで東京、東京から折り返し山手線内回りで日暮里、日暮里から常磐線三河島という各駅停車の列車を乗り継いで折り返すということも(規定上は)可能となってしまいます。
また、上野や東京に限らず秋葉原御徒町といった列車運行上の起終点以外の駅での折り返して乗車することを除外する規定もありません。やったところであまり意味の無い折り返しではありますが。

(特定の分岐区間に対する区間外乗車の取扱いの特例)
第149条 次の各号に掲げる各駅相互間発着(規則第157条第2項の規定により当該区間を乗車する場合を含む。) の乗車券を所持する旅客に対しては、当該各号の末尾かつこ内の区間については、途中下車をしない限り、別に旅客運賃を収受しないで、乗車券面の区間外乗車の取扱いをすることができる。
(1) 西日暮里以遠(田端方面)の各駅と三河島以遠(南千住方面)の各駅との相互間(日暮里・東京間)。ただし、定期乗車券にあつては、特別車両定期乗車券を除く定期乗車券に限るものとし、日暮里・上野間の新幹線以外の線区に限る。

(以下略)