なぎさとほのか〜他者との出会い
要約:「ふたりはプリキュア」はいままで自分と似たような人たちだけの世界に住んでいた全く異質の中学生(それはいわゆる普通の中学生には当然のことだろう)ふたりが初めて異質な他者(お互い)と出会い、異質さを受け入れながら徐々に分かり合っていく成長物語(ビルディングス・ロマン)である(らしいように僕は感じているのだがこの先そう進んでいくかはわからない)。運命でいっしょにたたかうことになったという王道的友情アニメには不似合いなぐらい、中学生ぐらいの子供が他者という異物に出会ったときのごつごつとした質量をはっきりとリアルに意図して描いている。この先なぎさとほのか(主人公の中学生ふたり)をどのように成長させていくか(ふたりがどのように成長していくか、また周囲の友人たちとどのように折り合いをつけていくか、とはいえ孤高の人ほのかにそういうジレンマがあるかどうかはわからない)が楽しみで仕方が無い。(論考セクション表示から本日分を全表示する)
1 プリキュアは突然に
日曜日の8時30分が待ち遠しい。土曜日の夜から待ち遠しい。うーむ。「ふたりはプリキュア」が土曜日の夜から待ち遠しい30過ぎのオヤジ… それが今の私だ。正確に言えば、「ふたりはプリキュア」が土曜日の夜から待ち遠しい30過ぎのオヤジでしかも学習塾の教室長… それが今の私だ。いけない。いけなさすぎる。ぶっちゃけありえない…
と思いながら気が付くと塾の机に座ってけなげに(というわけでもないが)鉛筆を動かしている女子中学生たちのうなじをじーっと眺めていたのは第7話までだった。女子中学生たちはつやつやとしている。チョコパフェとかイケメンとかマジで夢中になれる年頃らしいが、塾で一年間毎週4日ずっと彼女たちを観察していると、やはりそういうものにマジで夢中になっているらしいのだった。30過ぎのイケてない教室長にはマジで夢中になっていないらしい。残念がっている自分を発見し、うおっ僕は今残念がっているいかんこれではロリな人ではないかと少しうろたえるのであった。しかしでは残念がっている先に僕が何を求めているのかといえば、まあ彼女たちの成長を電柱の影から見守っていられればいいなあというぐらいのことだ。まあマジで夢中になられても教室長としては困ってしまう。しかし蚊帳の外というのもそれはそれでしょんぼりだ。んーそういう心理的なことだけではなく、女子中学生のお肌はなぎさやほのかと同じようにすべすべなんだなあと考えていると、うおっ僕は今アニメを起点にして現実の彼女たちを見ていたこれはいかんこれではアニメオタクではないかと少しうろたえるのであった。
いろいろなところでプリキュアの第8話はすでに放映直後から神認定を受けているが、僕もこの回を見ながら「プリキュアは最後まで見届ける」という決意が僕の中に芽生えしまったのを認めざるを得なかった。まあ心の中の暗い部分や落ち込んだ心情を表現するためとは言えあんなに影をつけまくったら鼻につくとか、藤Pと木俣が「これ、どういう状況」と言うのはなぎさが「ちょっと雪城さんっ」と怒鳴った後じゃないといけないじゃないかとか、「あなたとはプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだからあっ」の後で列車を通したのなら、ラスト「行こっ。ほ・の・か」の直前にも列車を通すべきだろ(絵も使いまわしで済むし、意味的にも使いまわすべきだし)とかいろいろ言いたいことはある。
といいながらも、僕は実のところプリキュアを結構だらだらと見ていたのだった。だって、お化け掃除機とたたかうんですよ。絶対に友達にならないような頭のいいお嬢様と元気な体育会系女の子が(プリキュア同士とは言え)突然買い物に行ったりハイキングしたり仲良くなるんですよ。小さなお友達のためわかりやすい図式にしなきゃいけないとは言え、ぶっちゃけありえない。そんな風に思ってました。小さい頃は世界名作劇場や変身ヒロインものをよく見てましたが、僕はいわゆる大きなお友達ではないなあと思う。今から考えると少女アニメをそれなりに多めに見ていたのに唯一萌え心でアニメを見たのはクリーミーマミだけだったように思うし、最近はアニメ(というかテレビを)ほとんど見ていない。ではなぜプリキュアを見始めたのかというとそれはどれみ枠だったからだが、どれみも結局飛ばし飛ばしだらだらと日曜朝の暇つぶしに見ていただけだった。ナージャなんてやっていたのも知らなかった。
2 第8話にて
美墨なぎさ(キュアブラック)と雪城ほのか(キュアホワイト)は、何から何まで徹底的に違う、というところからプリキュアの物語は始まる。何から何まで違うから普通の中学生ならば友達になんかならないし、実際2年生で同じクラスになって枕草子をやる季節になってもほとんど口をきいていなかったという設定だ。この辺は学習塾の教室長をしているのでよくわかる。枕草子はだいたい2学期後半に学習する。塾生たちに付き合って僕も十数年ぶりに暗記しなおしたので今なら冬まで暗唱できる。まあ僕のことは置いておこう。
そんな彼女たちがあれやこれやでふたりはプリキュアになってしまうわけだ。まあ普通ではぶっちゃけありえないプリキュアになってしまい、しかもドツクゾーンという世界から出張してくる侵略者たちから虹の園(人間の世界ですね)を守らなきゃいけないなどという運命共同体にされてしまう。そういういきなりの展開に翻弄されているうちは、自分たちがそれまでは全く違う世界に住んでいたということとはそれほど決定的な矛盾も無くなんとかやれてしまうわけだ。プリキュアというだけでは日常の生活でいっしょに時間を過ごすリアリティに欠けているから、メップルとミップル(というわけのわからない生き物に出会ったからふたりはプリキュアになってしまったのだ)がラブラブカップルで彼らに引きずられるようになぎさとほのかがいっしょに時間を過ごさなければいけなくなるとか、ふたりが社会見学委員に任命されてしまったから打ち合わせをしなければいけないという設定を入れたりしている。
まあそれはそれでありがちなのだが、そういうわけでなぎさとほのかはすこしずつお互いのバックグラウンドや性格を知るようになるのだった。それでずるずると親しくなるのならばなんともリアリティの無いおともだちアニメ以上にはならないのだろうし、僕も「ゆかな(ほのか役の声優さん)萌えっ」とか言いながらだらだらと放映を見たり見なかったりということになったのだろう。しかしそうはならなかった。あいかわらずなぎさは志穂莉奈とお昼ご飯を食べているし、志穂莉奈はほのかとはともだちになっていないし、ほのかは相変わらずともだちがいない(というか単独行動)。
で、第8話の主題になるわけだ。ほのかは自分がなぎさをともだちだと感じ始めていることに気が付き、なぎさのために何かしたいと思った。そんな時に幼なじみの藤Pのことをなぎさが気にしていることをメップルから聞いたほのかであった。偶然三人で登校することになり、びみょーな恋心など忘れて生まれたようなほのかが、なぎさと藤Pを紹介するときひじょーに無神経に「藤Pとしゃべりたいと思っているみたいだったから」と藤Pの目の前でなぎさに言ってしまう。なぎさショーック。走り去るなぎさ。追いかけるほのか。立ち止まった堤防で、突然プリキュア同士になったけれどほのかにずっと違和感を持っていたなぎさが思わず「あなたとはプリキュアってだけで、友達でもなんでもないんだからあっ」と叫んでしまう。ほのか呆然。近くの鉄橋を列車が通る。ほのか愕然(この時の表情ってのがまたとんでもなく傷ついてることがわかるんだよー)。ほのか… ほのか… やっとともだちができたと思ったとたんにこれかよ… 悲しすぎて言葉にならん。
この後ほのかがなぎさにカードコミューン(プリキュアになるためのアイテム)を渡してしまう。うーむ。とはいえゲキドラーゴが来ると説明はしょるがカードコミューンはふたりの手に戻り、ぎくしゃくしたままゲキドラーゴと戦う… というかゲキドラーゴを無視してプリキュア姿で大喧嘩。説明はしょるがお互いがプリキュア手帳を取り違えて持って帰り、結局ふたりともお互いが書いたことを読む。そしてお互いがやっぱりぜんぜん違うことを知り、それでもお互いがお互いのことを気にかけているということも知る。翌朝ふたりはどちらともなく(とは言えある種の確信を持って)あの堤防にやってきて、初めてお互いを「なぎさ」「ほのか」と呼ぶようになるのだった。これがまたよく気を配った演出で泣かせるんだ。なぎさ… ほのか… よかったねえ。でも志穂莉奈(なぎさといつもいっしょに過ごしているなぎさの親友たち)はどう思うんだ…
そんなわけで第9話ではやっぱり志穂莉奈となぎさが今後びみょーなことになりそうな模様。そんなわけでなぎさとほのかをどう描き分けているのかを表にしてみました。第9話も当然見ている(しかも10回ほど)のだが、前回までこれでもかという具合にふたりの違いを描いていたからだろう、今回は「違い」にそれほど意味をもたせてはいないように感じたので割愛します。
3 なぎさとほのかの違い一覧表
なぎさ | ほのか | |
第1話〜第7話 | ||
部活 | ラクロス部 | 化学部 |
髪の色 | オレンジ | 青 |
座り方 | あぐら | 体育座り |
ヘアスタイル | ショート | ロング |
まなじり | 上がりめ | 下がりめ |
あだ名は | なし (視聴者と同一化させるため?) |
うんちく女王 |
もてもてなのは | 女子 | 男子 |
教室の座席は | 窓際真ん中 | 廊下側最後列 |
ともだち | 志穂莉奈 | (犬;中トロ) |
家族構成 | 両親、弟 | 祖母、中トロ |
親の仕事は | 主婦、サラリーマン (たぶん) |
海外勤務(両親とも) |
お家 | 3LDKぐらいのマンション | 蔵つきのお屋敷 |
勉強 | 苦手 | よく出来る |
ピンチには | 動いてよける | うずくまる |
プリキュアは | わけわかんない | 面白そう |
一日経って | もういや | 運命かな |
性格は | 協調的、感覚的 | 自己完結的、分析的 |
ミポメポには | 怒る | 困る |
難しいことは | 思わず連想が | じっくり考慮 |
他者の反応には | 敏感 | 鈍感 |
人間関係は | 協調的 | 自己完結的 |
思考方法は | 感覚的 | 分析的 |
好きな色は | ピンク | 白 |
私服は | ショートパンツ | ロングスカート |
恋心は | ある(藤P) | ない |
部屋は | 洋室 | 和室 |
オブジェは | ぬいぐるみ | 書籍 |
あこがれは | 李飛龍 | プレキストン博士 |
パンフ分担は | 下手な絵 | 上手な文章 |
驚くときは | がにまた | うちまた |
食べるといえば | 焼きのつく食べ物 | 横文字の食べ物 |
回転方向 | 縦 | 横 |
二人の関係は | いまいち居心地が | すごく楽しい |
行くといえば | 買い物 | 図書館 |
ハイキングには | ジャージ | 登山服 |
くまちゃん危ない! | とりあえず救助開始 | 状況を判断して |
怒りのポイント | くまちゃんのお母さんに ザケンナーをとり憑かせた |
人々の幸せを利己的に 踏みにじること |
プリキュア手帳は | へんなの | 面白そう |
第8話 | ||
アバンタイトル なぎさがはまり始める |
光 | 影 |
タイトルあけ ほのかを意識するなぎさ |
影 | 光 |
ほのか家にて 「ともだち」に気づくほのか |
(登場せず) | 影 |
三人で登校 | 光 | 光 |
堤防;〜なぎさ怒り | 影 | 光 |
堤防;なぎさ怒り〜 | 光 | 影 |
Bパート開始 | 光 | 影 |
居場所 | 屋上 | 廊下 |
悩んだ後 | すぐ反省する | まだ考える |
怒り出すと | その場で発散 | 溜め込んで炸裂 |
大人のアドバイスに | あっと気が付く | 自分の意見に自信を持つ |
プリキュア手帳に | 枕草子 | 自己分析 |
お互いは | もっと知りたい | 友達になりたい |
手帳を読み終わり | うつむいて目を閉じる | 夜空を見上げる |
堤防で | 光 | 影 |