夏やで。

夏やで。
ええんかいな。
夏やで。

全国のライダー達が北を目指してやってくる。

バイクっちゅうのは両手をはなせば北へ向かうように
造られている。

国内4メーカーはそうなっとる。

外車は知らん。

だから、ライダーの聖地 「北海道」なんや。

みんな北へ走りにおいで。

南に向かえばバイクが誤作動おこすで♪

ぶらり2200キロの旅〜。

還暦が来る前にやっておく事がある。

昨年の夏。
旅人のエンジン壊れたバイクを貰った。

素人修理で治してはみたが「完治」という
確信がない。

ここはひとつ「耐久テスト」をする必要がある。

還暦を前にしたわいにも「耐久テスト」が必要や。

腹は出てるし、老眼やし、身体も硬い。

デブやし。

男前だけがわいの取柄や。

そんな、がらくたバイクとがらくた親父の

華麗なる挑戦や。

「北海道の国道を海沿いに1周するのに何時間かかるか?」


日本国民が一度は疑問に思う答えを探しに旅に出た。



写真なんか撮ってたら前に進まん。
飯なんか食ってたら前に進まん。
途中で寝たら死ぬ時じゃ。


でもお腹はすくのよ。
十勝の池田町から襟裳〜浦河〜苫小牧〜函館と
走って「横綱の里 ふくしま」で飯。

たらふく食べたら睡魔に襲われるから
カップ麺で終わる。

ヘルメットのシールドに油膜が着いて
対向車のヘッドライトで前が見難い。

急遽コンビにでウーロン茶を買って
シールドにタオルでこすりつける。

これで油膜が落ちて視界スッキリ。


夜明けっまえっの〜♪
むらさきのっ ハイウェイ〜♪

北海道の夜中は動物天国。
サファリパークっちゅうほど
動物の飛び出しが多い。

鹿。きつね。たぬき。うさぎ。へび。てん。

どうぶつビスケットやな。

ぶつからんように走るのは神経使うんよ。

この朝焼けに癒され、写真を撮ったのも
つかの間。

バイクの前輪に異変が・・・。

それくらいでプロのライダーは慌てない。

まずは飯を食って煙草吸ってからじゃ。

パンクにしては空気の減りが遅い・・・。

おそらくバルブ周辺のチューブが劣化して
エア漏れを起こしたもよう。

バルブのムシに異常はなかった。 以上。

明るくなって距離を稼ぐつもりが予定を変更。

パンク修理剤を投入し、一旦小樽までゆっくり走行してみたが
やはりエア漏れが止まらない。

パンク修理剤を再度投入し、札幌に。

早朝のGSにてエアを補充。
GSのご好意で1時間ほど仮眠。

天使の休息やね。

10時前にバイク屋でチューブ交換。

GSといいバイク屋といい、さすが手稲区

人も仕事もていねいじゃ。

5〜6時間のロス疑惑を取り戻すために
ひたすら北をめざす。

宗谷岬に到着〜。

うれしくてガッツポーズしたけど
ゴールやなかった・・・。

まみやりんぞう?
こんな奴、前はおらんかった像。

最北端で燃料入れたらすぐ出発。


天気は悪いが
エサヌカ線を楽しんご

ドドスコスコスコ。


エサヌカ線の1本海側にダート有り。

しばらく遊んだが想像してたのと
ちと違う。

ここで時間を費やすわけにはいかぬ。

第三次睡魔はすぐそこまできている。

夜中のサファリパークはさすがに
神経がもたず、サロマのトイレで明るくなるまで仮眠。

トイレだけに横になれず座ったままで・・。

シュラフは甘えの元。
置いてきた。

明るくなってきた頃には小雨でんがな。

やがて豪雨に雷。

けどサファリパークに比べりゃ屁のカッパ。

豪雨と落雷の中での激走。

格好いい自分に酔いしれる。

この頃には思考回路はショートしていた。


標津の峠は濃霧で視界15メートルほど。

峠は動物パラダイス。

慎重に走るが幻覚も出てきた。

何見ても獣に見える。

天使の羽を休めなければ・・・。

結局、釧路で燃料補給しただけで
ノンストップ。

モトクロスブーツがずぶ濡れで足が重い。
アチェンジの度に足がつる(笑)

古傷のヒザが冷えて痛い。
尻と腰と肩も限界。

休憩でもしたら闘争心が切れてまう。


ついにゴール♪

がらくたバイクにがらくた親父。

がらくたコンビががんばった。

家の玄関開けたら嫁に怒られた。

「一周したん?お風呂はいって寝なさい」

この日の布団は一年間の懲役すませた健さん
の気持ちや〜♪

出発時にメーターは記録したけど
写真撮ってなかった。

がらくたやからしゃあない。


よく日は濡れたバイク達も天日干し。

お前ら良くやった。

もう連れていってやらんからな!

日付と時間は燃料のレシートでご勘弁。

F650GSダカールは1リッターで
30キロ前後走るから長距離ツーリングに
うってつけや。

いろいろあったけど、走って良かった。

バイクのことも少しはわかった気がする。

限界まで自分を追い込んだからこそ
わかることもある。

仕事や人間関係、人生に疲れたときは
好きなバイクで限界まで走ってみるのも
ええかもね。

極限まで追い込んだら
感情がリセットされてええんや。

達成感で視野も広がり、新たな気持ちで
出発できると思うで。


無謀と批判はあるやろけど、無理なら
途中で止めればよろし。


くるしくたってぇ〜♪
かなしくったってぇ〜♪
バイクぅ〜のうえでは、ひとりっなのっ。

だけど涙が出ちゃう。
眠たいんだもの。


走行距離2200キロ
48時間かかりました。

帰ってから三日経つけど
まだ、尻が痛い。