不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

休日派フリマ日記

 昼過ぎ、昨夜本を預けた古本屋へ行くがまだ開店前。12時過ぎくらいには開いていてくれよー。
 水道橋へ行き、東京ドームのふもとで催されているフリーマーケットに顔を出す。S嬢が出店していたので、バレンタインのお返しと、餞別を渡しに来たのだ。久し振りにフリマに来たが、掘り出し物があるんじゃないかという期待感はいいもんだ。三島由紀夫の函入り帯アリ初版本が2000円くらいで売っていた。買わなかったけど、高価なものなのだろうか。
 S嬢は旦那の転勤により、カナダに引っ越すのだ。5年は向こうにいるそうだ。大学時代から、一緒にいろいろな事をしてきた。頻繁に会えなくなるのは、淋しいね。バレンタインのお返しは昼食のホットドッグ、餞別はS嬢が好きな澁澤龍彦の『澁澤龍彦奇憚集Ⅰ』『同Ⅱ』とちくま日本文学の「澁澤龍彦」。内容被ってそうだけど。
 春は別れの季節、と何年か振りに実感。さよならだけが人生だ。身体には気をつけて。また会おう。
 S嬢と別れて渋谷でkjと待ち合わせ。茶を飲んだり、本屋を覘いたりして時間を潰し、映画を見に行く。
 上映時間までに少し時間があったので、kjを映画館に残し、一人急いで地元に戻り、再度古本屋へ行く。映画の後では閉店してそうだから。今回の売り上げはぴったし3000円だった。ま、予想通り。置いていったkj、すまん。
 鑑賞後、立ち飲み屋で談笑。
 帰宅。週末に見た映画の感想を書くも、『ノーカントリー』だけ書けず。難しい。
 F1見つつ寝るか、会社行きたくねぇなぁと思っていたら上司から電話。30分早めに来てくれとの事。こうなると、逆に行く気になってくるから天邪鬼。行きましょー。

酒とパイとアイスとキス


 マイ・ブルーベリー・ナイツ鑑賞。監督・脚本、ウォン・カーウァイ。出演、ノラ・ジョーンズジュード・ロウナタリー・ポートマンレイチェル・ワイズデヴィッド・ストラザーン。脚本にローレンス・ブロックの名前も連なっていたけど、あのローレンス・ブロックなの?
 失恋した一人の女性の、ロードムービー(?)。ニューヨークでのカフェのオーナー、メンフィスでの警官と元妻、ベガスでの女ギャンブラー、様々な土地で人と触れ合いながら、キズを癒し再生していく。
 言葉にしてしまえば他愛のない恋愛・再生物語なのだが、映像がスタイリッシュで、セリフも粋。超オシャレ映画だ。そのオシャレさが、ギリギリ鼻につかない辺り、ウォン・カーウァイの腕はさすがである。
 カフェに忘れられた鍵を取っておく店主。全て保管して捨てないのは「その扉は永遠に開かない。そんな決断は下せない」だってさ! 言えるか、こんなセリフ。でも、それが自然の流れで出てきて、しかもストーリーの核となっているからすばらしい。これ以外にも、出てくるエピソードや小道具が、特別なものじゃないのに、グッとくる。
 スローモーションの使い方、カットの入れ方、時間軸の前後のさせ方、どれも一級品。中でも、上から撮影したキスシーン(画像)はステキなシーンだった。一歩間違えば失笑だが、完璧にロマンチックなワンシーンにし、しかもクライマックスに持ってきたのはお見事。
 基本的にセリフ劇。間や言葉の使い方がよくて、こんな会話で日常を過ごしてみたい。無理だけど。
 ノラ・ジョーンズは映画初主演とは思えない自然な演技だった。歌声を披露したりしなかったのもよかった。ジュード・ロウの気障っちいんだけどいつも同じ日々を愉しみながら繰り返しているカフェのオーナー役もいい。今までで一番よかった。ちと残念だったのは、ナタリー・ポートマン。悪くはないんだけど、清純さが出ちゃっていて、アウトローな女ギャンブラーではない。もっとビッチだったら、味な人物になったのだが。
 みんな悩んで、もがいて、見っとも無い姿を見せながら生きている。隠したいんだけど、隠す事もできず。できるのは、それを認めて、抱えていく事だけ。それしかできないし、それでしか進めない。
 そんな当然といえば当然の事を、若干大雑把でゆるいが、心に沁みるように描いていた。ほっとしたい時に見るといいかも。
 ステキな映画でした。でも、やっぱりブルーベリーパイは売れ残ると思うよ。

カクカクカク


 『コントロール鑑賞。監督・製作、アントン・コービン。原作、デボラ・カーティス。出演、サム・ライリーサマンサ・モートン、アレクサンドラ・マリア・ラーラ、ジョー・アンダーソン、ジェームズ・アンソニー・ピアソン、トビー・ケベル、クレイグ・パーキンソン、ハリー・トレッダウェイ。
 ジョイ・ディヴィジョンのボーカリストイアン・カーティスの生涯を描いた作品。全編モノクロで、最後のアルバム『クローサー』のイメージが動いていた。
 ジョイ・ディヴィジョンは殆ど聴いた事がないので、イマイチ入り込めなかった。どちらかというと、ニュー・オーダーの方が大好きで、その前身という事しか知らない。
 だから、イアン・カーティスが自身の不倫から悩みに悩んでいて、その結果から自殺に走ってしまったとしても、知ったこっちゃないね、という感想しか持てなかった。自殺の理由に、てんかんの発作の恐怖や、巨大化していくバンドの存在などもあるのだろうけど。
 イアン・カーティスはただの青年だったという事はよくわかる。普通の青年が、一つの才能を持ってしまった悲劇。無垢で純粋な心が、バンドの成長によって環境が変わり、戸惑いながら、イノセントな妻も、自由な恋愛も欲しいと思うのもわかるよ。
 だけどなぁ、どうにも優柔不断で神経質でイライラする青年の鬱陶しい不倫からの葛藤しか見えてこなかった。発作やバンドの存在などはマイケル・ウィンターボトムの『24アワー・パーティ・ピープル』の方が見えた、ような気がする。実はそれほど覚えていないんだけど。もう少し、ジョイ・ディヴィジョンを知ってから見た方がよかったかも。
 それにしても、イアン・カーティスてんかん一歩寸前のカクカクダンスは絶対にかっこ悪い。あれが当時受けたにしても、あのダンスはそんなナイーヴな心じゃ出来ないんじゃなかろうか、と思ったりもする。