裁判イーーン、バイバイニーチェ

■以下は、裁判員制度のとくに成立にいて裁判所のなかの人にヒアリングしたもののメモ。
知財を中心にした民事での導入が目的だったという話は聞いていたのですが、なんで、刑事裁判、しかも注目の集まる重要事件に。
■あくまで、個人の話を書いているので裏取りが必要になりますので、本当にメモとして。
■問題の多い制度だと、司法関係者も感じている。もともと成立に司法は反対の立場。


◇成立の背景
・平成13年の司法制度改革審議会で意見書が出た時点では、とにかく国民を裁判に入れるという話になっていた。一般的には米国が、米国の弁護士を日本で弁護活動をさせたい。ただし日本の弁護制度というか裁判制度がアメリカとかなり違うので、合わせろといわれたというのが一般的に言われているはじまり。つまりは、「市場開放」。
・当時、整理回収機構で国民の支持を集めていた中坊氏や、京都大学の名誉教授佐藤幸治さんがイメージしていたものとも合致したのだと思います。佐藤氏は、裁判所に法創造機能、特に救済法の分野で、がちがちに作られた法律のなかで、ただそれを適用していくのではなくて、裁判所が積極的に弱い人たちを、助けたい人を助けてしまえ、という考え方。一方で中坊さんは、いろいろと国賠訴訟などで苦労していた。そういう人たちが、その当時は時のヒーローのような感じでもてはやされていて、そういう人たちの思惑とうまく合致しちゃったんじゃないかと思う→要確認


◇司法サイドは反対の立場をとっていた

・法創造の視点は、司法積極主義vs消極主義というところから言うと、もっと積極的になれという立場。被害者救済や国賠など。従来、裁判官は法の正確な適用についての勉強が専門であり、間違っちゃいけないという範囲で鍛練。法の適用に対するプロではあるが政治や行政のプロではない。そこが、法創造のネックであり、司法としては反対の立場をとっていた。

◇民事での適用はどこに?
・国民の裁判参加は、当初は、米国の要請ということもあり、産業界での裁判に対して検討されていた。特に知財関係訴訟などの分野においては、知財裁判の分野では、民間のスペシャリストを裁判官として入れるいう構想もあった。いわゆる技術裁判官として。
・そういうことも含めて、米国の弁護士が参入できるようにと準備されるはずだった。
・あたり前だが、米国の裁判官は刑事裁判に参入しようとしていた訳ではなくて、民事裁判への参入障壁を取り除きたかった。巨大な外資系法律事務所が日本で企業の訴訟を引き受けるというイメージ。陪審員を説得する技術を持っているので、そのやりかたに合わせてくれ、と。特に知財の分野では米国が先進国なので、そのあたりがターゲットになっていたと。

◇現状の裁判員制度の成立経緯
・司法側は反対していたのだがつぶされていく形で、刑事裁判への裁判員制度が固まっていく。
・最終的には当時の最高裁長官が、もう反対しないと公言。
・通称「裁判員法」の成立をみる。
・民事については、法務省がはねのけた形。民法だけじゃなくて、特定商取引法や商法など様々な法律が絡み合う中で、そういう状態で裁判ができるかという考えで。司法制度改革審議本部には、法律の専門家や民事スペシャリストだけではなく、大学教授や労組なども入っていたため、そういう人たちが、状況的に無理であることを認める形でなくなる。
知財については、特許庁とのせめぎ合いのなかで「技術裁判官」構想がなくなる。代わりに「知財高裁」が成立。東京と大阪に2か所。知財関係で控訴されたら知財高裁にという制度に。裁判所側は、知財関係のスペシャリストを揃えて判断を統一していくということで・・・。
知財高等裁判所」という形のほうがイメージしやすい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/知的財産高等裁判所

◇事実認定・量刑について
・大きなズレ。司法が予想している量刑と大きくズレはないと思う。今まで通りに近い。
・社会的影響力の大きい事件の裁判、の場合は、裁判員の判断を抑えられないかもしれない。
・ただ、この制度では、基本的に一番若い裁判官・左陪席と呼ばれている判事補が説明役として、担当し、裁判員への説明を担当する。それにより、ある程度、裁判官の意図は裁判員に伝わるようになっている。裁判員からの質問にはつぶさに答えられるようにしているので、事件について、裁判について理解されるばす。
・ただ、マスコミに取り上げられたような事件の場合は、影響力があり、説得できない場合もある。
・模擬裁判の例では、どうしても実刑に納得いかないという裁判員が出るケースがあった。頑として譲らない。そういう人がいると抑えられないかもしれない。

◇検察側が有利?・模擬裁判を観ている限り、検察側が有利に見える。
裁判員は、印象で決める傾向。検察官の人たちはその印象を操作する訓練をしている。
・一方、弁護士は一回ぽっきりだし、裁判員裁判ばかりではないので、不利。
・検察官の説明のほうが利きやすい。そのまま納得しちゃう。裁判員は状況証拠や目撃などに過剰に動かされる。今まで裁判所は膨大な状況証拠を相当検討して判断をしている。裁判員制度では、状況証拠の威力が高まる可能性がある。
・そのために、裁判官3人全員が無罪で、裁判員が6人全員が有罪の場合は「無罪」。有罪の評議ができなかったということで「無罪」になるという制度があります。

◇その他
・裁判が速くなる。一般の人が見てわかりやすくなるのは間違いない。
・精神鑑定の鑑定書などのような証拠は、とても難解で一般には理解されにくい。いくらわかりやすいと言っても限界がある。そこが、懸念される点。今までは裁判官が熟読して理解して、という過程を踏んできたが、一般のかたには、それは難しい。
・検察サイドが勝負しなくなるかもしれない。裁判員裁判ではこれは難しいというものについて、積極的に起訴するかどうか。ワンランク落として裁判員制じゃない裁判にかける傾向になるかもしれない。
・司法としては裁判員制度をやるのはかなりの労力。
・担える弁護士を育成できるのかも課題。相当な労力が必要になる。否認している事件はその労力は当たり前だが、罪状を認めていて国選弁護人による裁判の場合は「情状」で争う形が多かったが、裁判員を説得できる裁判ができるかが課題。
・8月4日が一番最初(東京地裁)だが、現在模擬裁判を通じてやっていることは、裁判官の裁判官と検察官と弁護士のイメージトレーニング。裁判員制度を進めていくにあたって、裁判員の人とどう接していくか、どう運用していくか。そのイメージが確立されるまで時間がかかる。


※とりあえず、聞き書き的なメモですので、随時、加筆訂正入る予定です。