「日本語練習帳」

日本語練習帳 (岩波新書)

日本語練習帳 (岩波新書)

9月22日読了。夏休み38冊目。

最終章の敬語以外は、「いかに簡潔で美しく、なおかつ最適な語彙が用いられた表現を創造するか」ということに重点を置いていた。文章にキレを出したり日本語の語彙力を増強させることで、自他共に心地よくなるような表現を紡ぎだせるようになりたい僕の興味と合致したし、その上、辞書を読むモチべが上昇した。

表現力豊かでキレのある文章を書くためには、やはりそのような文章を沢山読むことが必要らしい。著者は森鴎外夏目漱石谷崎潤一郎を挙げていた。僕は文体や表現力がどうのと言えるほどの審美眼を備えていないため、とりあえず語彙増強の方策として、三島由紀夫大江健三郎を継続して読んでいこうと思う。


「意義」と「意味」、「最良」と「最善」など、単語間の微妙な意味のズレというものは、単語を分解しその一語にどのような意味のニュアンスが含まれているかに注目することで鮮明に見えてくる。ヤマトコトバは主観的で感覚的な表現に長けているが、客観的な表現にはやや物足りない。そのため、微妙な意味を細かく分けている漢語に頼ることで、表現に彩りが増す。

文章を分かりやすく且つ綺麗にまとめようとする際に留意した方がよい(著者的に)点が2点ある。一つは「のである」「のだ」といった断定表現の使用を出来るだけ抑えること。もう一つは「〜が」といった留保・抑制の表現の使用を出来るだけ抑えることである。前者はそうした表現の多様で筆者の強調ばかりが目立ち、相対的に重要な箇所を強調することができなくなるからで、後者は留保・抑制の多用で読者に緊張と疲労を与えるからである。また、緊張と疲労を与えないという点で、「AはB」という表現を用いるときにAとBの距離は短い方がよい(この点、It is reported that... という表現をもつ英語は便利)。