目標と現実のギャップ

サッカー日本代表岡田監督先日、2010 FIFAワールドカップの予選リーグ組み合わせ抽選会が行われ、岡田監督率いる我が日本代表はグループE組で、オランダ、デンマークカメルーンと対戦することになった。強豪のオランダはもちろんのこと、欧州予選にてポルトガルスウェーデンを押しのけて一位通過を果たしているデンマークと同組になったことで、悲観的な意見がじんわり出てきているようだけど、まったくもっておかしな話だ。決勝トーナメントベスト4に残ることが、本大会の岡田JAPANの目標であることは、割と多くの人たちが認知している事実である。ベスト4進出を目標に掲げているチームが、何故予選リーグのこの組み合わせで悲観的にならなければならないのか。それではまるで、予選リーグの突破を目標に掲げているかのようだ。

しかし、この悲観的な意見もそのはずで、それは、ベスト4進出という目標が、まるで信憑性の伝わらない単なる字面だけの目標になってしまっているからに他ならない。1分2敗で惨敗だった前回大会から、凄まじいほどの劇的な進化を日本代表が遂げない限りベスト4進出などはありえないわけだけど、そんな進化など起こっていないことは、ワールドカップ予選の結果からすでに多くの人が認知していること。そうであれば、ベスト4進出などと岡田監督が掲げている目標に本気になって思い入れを持つことは難しい。

1993年、未だワールドカップ出場経験がないという状況で、ワールドカップ最終予選の最終戦を残し、日本は首位に立っていた。最終戦で勝利すれば確実に、引き分けでも2位のサウジアラビア、3位の韓国の両方が勝利しない限りは出場権獲得と、かなり有利な条件で最終戦に臨んだが、あろうことかロスタイムでイラクに同点ゴールを許し引き分け。サウジアラビア、韓国ともに勝利を収めたため、ほぼ手中に収めていたはずのワールドカップ出場権を日本は逃した。いわゆるドーハの悲劇である。

この当時と比較すると、Jリーグによるサッカーのプロ化、海外リーグにて活躍する選手も現れ、確実に日本代表のレベルは上がっているのだろう。しかし、当時の日本代表が掲げていた「ワールドカップ本選出場」という、今となっては当たり前の条件になりつつある目標が、当時としては高い目標であり、かといって決して届かない目標というわけでもなく、尚且つ分かりやすい目標であったことが功を奏して、単なる予選大会にもかかわらず国民的な関心事にまで発展した。目標が明確であり信憑性のあるものだから、普段サッカーに思い入れを持たない人々にも、入り込むことがたやすかった結果である。世界的なスポーツの祭典であるワールドカップであるならば、こういった国民的な関心というのはやっぱり必要なのだとボクは思う。だが、今の代表には残念ながらそれがない。

目標であり夢であったはずのワールドカップ出場は、いつしか当たり前の条件となってしまい、日本代表は新たな目標を持つことを強いられた。その結果がベスト4進出なのだろうけど、なんら根拠もなく、信憑性を持たない目標であれば、やっぱり多くの人は関心を持てない。そもそも、ワールドカップ出場が当たり前になりつつあるのは、目標であり夢であった十数年前と比べてアジア出場枠が増えたことの恩恵を被っているところが大きい。そんな状況下で、例えレベルが上がっているとは言え、世界の4強に肩を並べるなど、代表選手ですら本気では思っていないのではないかとさえ思ってしまう。

だがもちろん、死ぬ気で本気にならなければ決して実現することができない目標であることは紛れも無い事実だ。もちろん何が起こるかは分からないし、これまでも多くの「意外」がワールドカップでは生まれてきた。大舞台の短期決戦であれば尚のこと。ただ、この多くの人々が関心を持つことが出来ない、半ばやけくそとも思えるようなこの目標に、代表選手達全員が本気になって向かっていけるのか。勝負のキーはここだろう。もし仮にその本気ぶりが伝わってくれば、大衆の思いは次第と引き込まれていくもの。野球日本代表SAMURAI JAPANとの明確なる差はつまるところここにあるのだと思う。

サッカー日本代表が再び国民の関心事にまで高まる日が果たして来るのだろうか。まだ暫く時間がかかるのかもしれない。