HARD CORE LOGO TRILOGY


そろそろブルース・マクドナルド監督について書いておかないといけないと思います。日本での公開作は皆無ですが、僕はカナダ人ではアトム・エゴヤン以上の監督だと思います。ドキュメンタリー・タッチの作風が得意で、雇われた場合ではなく自分の企画の場合、ほとんどがロックに関するものです。ROADKILL、HIGHWAY 61などで頭角を現し、有名な作品にはジーナ・ガーションジュリエット・ルイス主演の『ピクチャー・クレア』、エレン・ペイジ主演のTHE TRACY FRAGMENTS、ゾンビ映画PONTYPOOL、カナダのドリーム・チーム的バンド、ブロークン・ソーシャル・シーンをフィーチャーしたTHIS MOVIE IS BROKENなどがあります。

そんな彼を一躍カナダで有名にした作品が1996年のロック・モキュメンタリー、HARD CORE LOGOです。

80年代後期にブレイク、そして解散したパンク・バンド、ハード・コア・ロゴの再結成ツアーを追いかけた作品で、ピストルズを髣髴とさせる、バカで楽しくて悲しい映画です。
メンバーはボーカル=ジョー・ディック(ヒュー・ディロン)、ギター=ビリー・タレント(カラム・キース・レニー)、ベース=ジョン・オクセンバーガー(ジョン・パイパー・ファーガソン)、ドラム=パイプフィッター(バーニー・コールソン)の4人。写真左からビリー、パイプ、ジョー、ジョン。

物語はジョーの恩師である伝説的パンクロッカー、バッキー・ヘイトが暴漢に銃で撃たれ、銃規制のチャリティ・コンサートのためにジョーがバンドを再結成させるところから始まります。その後、バンに乗ってカナダ横断再結成ツアーを行い、その一部始終、ドキュメンタリー作家のブルース(演じるのは監督本人)がカメラをまわすというのが主な筋立てです。ジョーとビリーは親友同士なのですが、ビリーが解散後に始めたバンドが売れ始め、ジョーは嫉妬。ベースのジョンは精神状態が不安定で、ピルを飲んでいないとヤバイことになります。能天気なのはパイプだけですが、コイツがまた空気を読まず、ハンバーガーが食べたいとごねた挙句、バンの床を破壊、お漏らしする始末。ブルースはブルースでプライベートなところまでずかずか入り込んでくるので、ジョーやビリーにうざがられています。ステージ上では、ジョーは相方に始終唾を吐きかけ、ビリーは酒でベロンベロンになりながらギターソロ、ジョンは顔を白塗りにしてパンツ一丁に、パイプはまたも空気を読まずにドラム破壊。ツアーも終盤に差し掛かった頃、ビリーを手放したくないジョーの精神が徐々に崩壊していきます。途中バッキーの家によると、バッキーは撃たれてなどいなかったことが判明し、ジョーが全て仕組んだことが明るみに出ます。おまけに皆でピルをやって暴走、ヤギを殺害、血を浴びる始末。
ツアー最終日、ビリーがジョーを見捨て、新たなバンドに本腰を入れていくことに、ジョーが腹を立て大喧嘩に発展します。ライブ終了後、今までないがしろにしてきたブルースに酒瓶を渡し、「お前は俺の友達だよな?」と聞くジョー。そしてジョーの急すぎる決断が一瞬にして映画を終わらせます。

ハード・コア・ロゴはカナダではカルト作として人気があり、人気バンド、ビリー・タレントは本作のビリーから名前をもらっています。もちろん監督公認です。
今年のビクトリア映画祭には、ブルースがそんなハードコアな映画の続編を引っさげてきました。それも2作も。
一つはHARD CORE LOGO II。

ジョーの悲劇から15年が経ち、ブルースはハード・コア・ロゴのドキュメンタリーを撮ったことで一躍ハリウッドの仲間入り、拳銃ならぬ聖書で戦う西部劇のドラマで人気者に。そんなある日、主演俳優がタイでニューハーフの娼婦(未成年)に手を出し、番組が急に終了、一気に仕事にあぶれるブルース。時を同じくして、カナダ、サスカチュワンではジョー・ディックに乗り移られたと抜かす若手の女性パンクロッカーが出現。自称魔女のフィルムメイカー、リズに誘われ、本当にジョーが彼女を導いているのかを確かめるべく、ブルースは再びカメラを握る。今度はカメラの後ろではなくカメラの前で。

前作では監督曰く、「映ったのは8秒」でしたが、今回は全編彼の一人称視点で話が展開、もとい大暴走。まるでドキュメンタリーとして成立しない無茶苦茶なコメディです。前作では同じく登場シーンの少なかったバッキー・ヘイトがバンドのプロデューサーとして登場し、出番が大幅に増えています。バカさも倍増です。ジョーに乗り移られたケア・フェイリアーは実在人物で、実際にダイ・マネキンというパンクバンドを組んでいます。ファイルーザ・バルクとジュリエット・ルイスを足して、ヒュー・ディロンの魂をぶち込んだらケアになります。日本盤もスピニングから出ています。脱毛リサーチ
カナダでは9月からの劇場公開を目指しているそうです。

もう一つはTRIGGER。

正確には続編ではありませんが、企画段階のタイトルは45: HARD CORE LOGO 3で、ジョーとビリーが久しぶりに再会する話を予定していましたが、いろんな理由でかなわず、別の作品として製作されました。「どうしよう。ヒューとカラムが出られないらしい。そうだジョディ・フォスターの昔の映画みたいに10歳の子供にやらせたらどうかな?それともアニメにしてしまおうか?」と悩んでいると、脚本家に「女にしちゃえば?」と言われ、トリガーという女性ロッカー二人の話になったそうです。

ライブ中に大喧嘩をし、バンドを解散に持ち込んだカットとヴィック。ハリウッドで音楽プロデューサーとして成功したカットに対し、ヴィックはカナダで細々とミュージシャンを続けていました。ある日、出張でカナダに戻ってきたカットはヴィックを食事に誘います。親友同士で、会えば仲良く会話も続けられるのに、どうして関係が断絶してしまったのかな?夜の街へ繰り出した二人は愛とは、友情とは、音楽とは何か、初めて本気で語り合うことに。夜が明ける頃、二人の関係は修復されているのでしょうか?

カットを演じるのは『アドルフの画集』や『ひかりのまち』、『デッドウッド』などで知られるモリー・パーカー。ヴィックを演じるのは舞台女優トレイシー・ライト。映画では『月の瞳』、『君とボクの虹色の世界』などに出演。ブルースのHIGHWAY 61やTHIS MOVIE IS BROKENにも出演しました。旦那さんの映画監督ドン・マッケラーもルームメイト役で出演しています。他にも、サラ・ポーリー、カラム・キース・レニー、ジュリアン・リッチングスが出演しており、カラムとジュリアンはそれぞれHARD CORE LOGOで演じたビリーとバッキー役です。実はトレイシー・ライトは本作の撮影中、癌に蝕まれており、治療が開始される前に本作を完成させたかったブルースは、低予算での撮影を選び、期間はたった八日に絞りました。トレイシーは映画の完成を待たずして、2010年の6月に永眠されました。
故に本作は能天気極まりないHARD CORE LOGO IIの合せ鏡として、非常に良くできた感動作になっています。

HARD CORE LOGO、HARD CORE LOGO II、TRIGGERの三作はいずれもブルース・マクドナルドの最高傑作です。映画鎖国日本でも公開されてしかるべきなので、というか公開しない国はカナダに国交を遮断されても文句言うなよな。何処の会社でも良いから、さっさと買い付けて公開してください。

HARD CORE LOGO TRAILER

HARD CORE LOGO - WHO THE HELL DO YOU THINK YOU ARE?

HARD CORE LOGO II WORLD PREMIRE

DIE MANNEQUIN - DEAD HONEY

TRIGGER TRAILER

リンク
THE TRACY FRAGMENTS
THIS MOVIE IS BROKEN
HARD CORE LOGO
DIE MANNEQUIN

Hard Core Logo

Hard Core Logo