クイーンズライクによるカヴァー集。
クイーン〈イニュエンドウ〉も取り上げているのだが、なんか変。基本的には原曲をなぞっているのだけれど、ギターといいヴォーカルといいフレーズをこねくり回して、自分たちなりの節回しを追加している。その追加部分が、曲から浮いている。曲の全体に対して独自解釈を施すならいいのだが、全体をなぞって部分だけ妙にいじるから、バランスが崩れるのだ。同様の状態が、ピンク・フロイド〈ようこそマシーンへ〉のカヴァーにもみられる。
逆に、選曲がはまっていたのは、ブラック・サバス(ロニー・ジェイムズ・ディオ時代)の〈ネオンの騎士〉。これは素直に聞ける。
また、面白かったのは、ポリス〈シンクロニシティーII〉。後期ポリスの場合、アンディ・サマーズのギターは、ヘヴィ・メタル的なトーンから離れて、いかにライト感覚で弾くかをテーマにしていたところがある。加えてスティングは、ハスキーな声自体が特徴的だから、しつこい節回しで自己アピールする必要はなかったし、むしろぶっきらぼうに歌っていた。なのにクイーンズライクは、かつてのポリスを知る人からすると、ずいぶんこってりしたメタルの方向に持って行きましたなぁ、という風に仕上げている。ところが、アルバムを通して聞くと、この曲はクイーンズライクにしてはあっさりめの演奏だとわかるのだった(笑)。
QUEEN+PAUL RODGERS〈SAY IT’S NOT TRUE〉
クイーン(ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー)+ポール・ロジャースがスタジオ録音した曲が、シングルでリリースされる。
もともとは、ロジャーがライヴでアコギをバックに、リズム隊なしでさらっと歌っていたソロ的な曲である。それを、ロジャー、ブライアン、ポールが歌い継ぐ形に変更。例によって濃厚なギターとバタバタするドラムを加え、バンド・サウンドに仕立て直している。
彼らが新編成バンドでシングルを出そうとした時に、アフリカ(、ネルソン・マンデラ)、エイズ関連のメッセージ・ソングとして作られたこの曲を選ぶというのは、やはりフレディ・マーキュリー不在でクイーンを続行するための大義名分を考えるからだろう。
フレディという“華”抜きでも、誠実に盛り上げさせていただきます――そんな印象を与える出来になっている点は、フレディ追悼としてブライアンとロジャーで歌った以前のシングル〈ノー・ワン・バット・ユー〉(こちらはブライアン作)を思い出させるし、曲調もどこか近い。
とはいえ、〈セイ・イッツ・ノット・トゥルー〉は、ロジャーが書いたバラードのなかでは良曲の部類だと思うし、僕は嫌いではありません。
(関連雑記http://d.hatena.ne.jp/ending/20071122#p1)