Hatena::ブログ(Diary)

投資の消費性について RSSフィード Twitter

2016-08-25

非伝統的金融政策の新展開

ポリシーミックスは政府も頑張ってアコードみたいな、民主党と白川日銀みたいなこと誰も彼もが言い出して、トンチンカンな財政とか一体何十年やってると思ってんだと、社会としての記憶力の欠如を再確認せざるを得ない最近だが、当然のことながら金融政策にできることは残っている。当ブログは、どこかで聞いたような話をスマートにまとめるみたいな仕事には全く興味がないので、モダンな視点から、残る金融政策の可能性について改めて考えてみたいと思う。奇跡の逆転を願う黒田日銀中の人には、参考にしていただければ嬉しい。


さて金利を誘導する伝統的な金融政策は、要するに無リスク金利への介入だ。ここがゼロに潰れてしまい自然な拡張として、しかし世界で初めて「リスクプレミアムを押し潰す」と高らかに宣言した中銀総裁は元野球少年だったそうだ*1が、ともあれ更に、この道を進んでみよう。徒然にいくぞ。


信用保証

最初に思いつくのは、すべての融資を日銀が保証するプログラムである。現在も、成長がどうしたとか細かいアレコレを実行していたり*2するわけだが、大規模に広範に風呂敷を拡張して、末端まで支援しちゃう。商店街の八百屋にも、酔っ払いのおっさんにも貸しちゃう。現実味がないとか、ノウハウを持ってないとか、ガタガタ言うやつも出てくるかもしれないが、なんなら保証協会*3と一体化しちゃえばいいじゃないか。そうすれば現場の声に耳を傾けつつ、現状から更に融資を伸ばす骨太のプログラムを、無理なく直接に実現することが可能である。本物のアコードである。


PER目標

ETF購入は、元々無理のあった225の問題*4を顕在化させたり、その過剰な存在感が日々の取引の活況に影響を与えたり、要するに困ったところまで来てしまった。買っている割には株が上がらないと分析を始める奴も現れて、取引の「法則」やフロントランナーに光が当たれば、国会での説明だって面倒になりそうである。ならばいっそのこと、「TOPIXの予想PERを20倍にする」と、目標とする株価の水準を定めてはどうか。その方が無駄金を使わない可能性は十分にあるだろうし、リスクプレミアムの代理変数として益回り*5は、完璧とは言えないかもしれないが明快だし、インフレ目標やらGDP目標やら*6とも、看板として並べやすい(ような気がする)。


ヘッジ支援

一部の金融機関は、国債の価格と品薄に困って、あちこちに代替先を探し回っている状況だが、そうしてカネを突っ込む先のリスクについて、ヘッジを日銀が請け負ってはどうか。例えば地銀が米国債を買うのなら、為替とカーブのリスク日銀が貰い、地銀には安全なリターンに加えて、ちょっと色を付けて返す。あらゆる投資先に、この支援プログラムを実践することで、金融機関は考えなくて済むわけだし、日銀BSを使わずに様々なロングのエクスポージャを確保できる。もちろん各種グローバル金融規制については、日銀から積極的に「大丈夫ですよ、これリスクは実際のところウチですから」と、緩和を働きかける。まずはカーニーに電話である。


さて実際の融資や、株式市場や、スワップ取引を想像いただければ、すぐに感じられると思うが、無論どれもこれもロクなもんじゃない。が、どれもこれも実効的である。どうですか日銀の中の皆さん、いつでもご相談承ります。え、マイナス金利?更に阿呆な値段で国債を買うことは、もちろん技術的には可能なわけだが、そんなの既に手垢もケチも付いてるわけで、何より見出しですよ見出し。派手にやれって話である。

2016-08-16

リバランス頻度とドルコスト平均法

ボートフォリオの、いわゆるリバランスの頻度を変えてテストしてみたところ、細かく実行するほどパフォーマンスが弱かったという話を伺って、「もしかして上げ相場で試しませんでしたか」と反射的に出てきてしまった。「一本調子の相場」と表現した方が、すこしだけ正確だったかもしれない。簡潔に表現する練習は、いつでも大切だ。


株式債券の2銘柄を、50:50で買うポートフォリオを想定しよう。シンプルな例だが、あとで拡張することは容易である。ある期に株式市場が上昇し、これが60:40になった。ここで、1)リバランスするポートフォリオの配分は50:50に戻る。他方で、2)リバランスしないポートフォリオの配分は60:40のままである。


翌期、再び株式市場が上昇したとしよう。運用成績の優劣は、こんな感じだ。リバランスしない方が勝ち。

50:50 < 60:40

翌期、株式市場は下落に転じたとしよう。運用成績の優劣は、こんな感じだ。リバランスした方が勝ち。

50:50 > 60:40


これだけの話である。ある期に株式市場が下落し、配分が40:60になったケースについても、暗算を試みていただきたい。ざっくり言えばリバランスは、つまり動いた価格が、再び同じように動くとき、負けてしまう。冒頭の問題では、リバランス「頻度」に興味があった。より長期を見て、また短冊の刻み方を変えて、やはり試してみていただきたい。だんだんと見えてくるのは、つまりリバランス頻度によるパフォーマンス差異の観察は、当該スペクトルでモメンタムを測っているようなものだ。


そう思うと、巷で見かけるリバランス調査には、そうした基本的な点を見落としているものが少なくない旨に触れると、即座に「ああ、ドルコスト平均法ですね」と指摘いただいた。そうですそうです本当ですと、首が痛くなるほど頷く。ああ首痛が、ずっしりと重く効いてくる。風呂入ろう。


今日よりも明日をオーバーウェイトするポートフォリオは、おおむね均等に両者に配分する(つまり買いっぱなし)ポートフォリオと比べて、今日よりも明日の方が上昇するときに勝つ。自明である。短冊を細かく刻んだケースについても、暗算してみよう。時間軸に沿って、例えば値段が山のように推移すれば負けるし、V字なら勝つ。それだけである。ドルコスト平均法にかかる「テスト」が、何を調べていることになるのか急に見えてくるわけだが、要するに環境だ。


さて、話が飛躍して恐縮だが、これだけ単純な、暗算で検算できる仕組みでさえ、一旦プログラムとして切り出した途端、つい「テスト」したくなってしまう。ついフィッティングしたくなってしまう。これが我々の性である。「最適」なリバランス頻度や、ドルコスト平均法よりも優れた投資プログラムさえ、僕らは容易に見つけ出してしまう。より複雑なバリエーションを、つい発明してしまう。そんな自分を、見つけないだろうか。


気をつけなよ。あんた俺にカモられてるぜ。

2016-07-28

タックスヘイブンの使い方

知ったふうな解説にウンザリしてたタックスヘイブン、出ました決定版。これだよ。これが教科書だよ。


浅川元社長 告白の一問一答「株価操作 言うとまずいけど」 | NHKニュース

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160728/k10010612431000.html


元社長:これ違うの、作ったんじゃないのよ。当時ね、香港に行くと、会社を買えるの。僕が作ったわけじゃないの。外資系の時代。これは、ひとつはお客さんの口座なの。要は何かって言うと、名前出すと響くから言わないけど、当時、節税対策とか、当時でも悪いことだな、考えたら。そこにお金を流して、そこから日本の株を買うとか。


記者:名義を出したくない人?


元社長:出したくない人。そういう形で利用してたの。


記者:お客さんが名義を隠すために会社を買ってあげた?


元社長:そうそう。しかも自分の会社が上場する時とか。そうすると、わかんない形で流したいじゃない。自分のところの株価操作してたの。当時はまだ金融庁にしたって、トロかったから。外資系証券とかは当たり前のようにやってたんだよ。


シビれるぜ。これが90年代である。ちなみにAIJ投資顧問の損失隠しは、これよりもずっと後の話、これよりもずっと物理的な手法だった。おっさんのぶっちゃけは続く。


元社長:ないよね。使うっていうか、当時はお客さんの金もあったし、あとは株価操作、言うとまずいけど。つまり日本の市場に(顧客が自社株買いの注文を自分の名義で)直接出すとうるさいから、外資系を使って注文を出すと。そうすると、外資系が注文出すと外人買いだから。わかんないよね。だから(名前を)出したくない場合には、そうやってるんですよ。色んな使い道ありましたよね。お客さんが名前出せないとか、あるじゃないですか。そういうのは全部バラしたらキリが無いででしょう、20年分のくらいの。全部バラしてごらんよ、逮捕はできないけど、目つけられちゃうでしょ、検察にさ。あんたこんなのどこで集めてきたの、こんなの。


もちろん(当時トロかった)当局だって黙ってないわけで、戦いは未来永劫続く。合法なんだから問題あるのか、みたいな小学生レベルの感想も見かけるが、どんなふうに法は折り合うのか。おっさんが感じさせてくれる。最高のインタビューだ。

2016-07-26

流動性とソルベンシーあるいはタダ飯について雑文

資金繰りと財務は別の概念であって、例えば相続税を払うために、家を売却せざるを得ないが釣りは残るケースもあれば、例えば我が国の現在のように、貸し手が殺到しつつも将来について心配されるケースもある。両者を意図的に混同させた「お金がない」を、しばしば夜の街で見かけたりするが、そんな話はどうでもいい。



さてヌルいヘリマネ*1が道路をこしらえて、たまたま具合バッチリで皆の役に立ったとすれば、評価の困難は置いておいても立派な資産であって、つまり必ずしも財政を悪化させるとは限らないわけだ。あるいは微妙に不要気味な道路だったとしても、その価値ゼロとは言えないものなら、突っ込んだカネの全てが失われたことにはならない。


他方で、財政を悪化させない素敵な道路以前に、貸し手としての金融機関は貸したくて仕方ない状況にあるわけで、そもそも政府は資金繰りには困っていない。要するに現在、その目的がヘボい道路であれ何であれ、いい値段で国債は売れるさ。現在のズバーカに加えて、日銀国債を引き受ける必要は希薄だ。


もちろん素敵な道路が完成するのかどうか、事前にはわからない。あるいは見えにくいことだが、一見素敵な道路でさえ、他の商売に振り向けられるはずだったリソースが削られてしまい、よーく数えてみると全体としては、やらない方がマシだったというケースもあり得る。なんとなく俺達、全体としてはカネ持ちになれなかったねと。


どっこい本チャンのヘリマネは、そもそも直接的な純資産の移転が目的である。日銀のソルベンシーをゴリっと削って、家計にドカッとプレゼント。「責任をもって無責任に」とかダセー貨幣数量説は引っ込んでろ。いくらでも預金を「印刷できる」流動性をもって、ヘリコプターよりも正確に、家計の口座に打ち込むわけだ。


とはいえ日銀は、結局のところ我々が保有している。家計の純資産が増えたように見えても、このプログラムは実は、我々が我々に、カネを配っているに過ぎない。では、どのように帳尻は合うのだろうか。どこで実質的に我々のカネは「減る」のだろうか。あるいはこのとき結果的に、誰から誰にカネは移転されるだろうか。

2016-07-17

ヌルいヘリマネと本チャンのヘリマネ

比較的最近のことだと思うのだが、ヌルいヘリマネが「俺が本流」みたいな顔して歩いているのが気に食わない。


ヌルいヘリマネ

日銀国債を買わせて資金調達し、例えば道路をこしらえるわけだ。


    政 府         日 銀
------+------ ------+------
 道路 | 国債   国債 | 預金

こんなヌルい緩和、張り切ってヘリコプターなんか持ち出す理由さえ存在しない。考えてみなよ。一所懸命働いて道路つくってんだから、給料貰って当然だろ。


本チャンのヘリマネ

いきなり日銀が、お金を家計にあげちゃうわけだ。ざまあみろ。


    日 銀         家 計
------+------ ------+------
純負債| 紙幣   紙幣 |純資産

こいつはすごいぜ。もちろん紙幣の代わりに預金でも同じことだが、いきなり何もしないのに日銀が損して、いきなり何もしないのに家計が得する。シビれるだろ。


【問1】流動性とソルベンシーの観点から、上記二種のヘリマネについて説明せよ。

【問2】「タダ飯は存在しない」観点から、上記二種のヘリマネについて説明せよ。