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投資の消費性について RSSフィード Twitter

2017-09-16

限られた資源としてのファクター投資

ほとんどあらゆるアクティブな投資判断はサイズの意味で有限である。例えばトヨタがVWに対して買われることを見込むとき、より大きく顧客の資産を背負うほど、取引が動かす価格は、期待する収益を押し潰してしまう。にもかかわらず運用のプロフェッショナルでさえ、矛盾した価格体系を提示している場合は珍しくない。アスネスが指摘するように*1例えばトラッキングエラーの意味でのリスクと、整合的な報酬となっていないケースだ。ロングショートをイメージいただくのが手っ取り早いと思うが、ざっくり二倍のリスクを取りたければ、二倍のポジションが必要になる。ざっくりキャパシティは二倍消費するわけで、それに応じてフィーは二倍貰わなければ、ディスカウントしているのと同じことだ。


加えて、こうしたアクティブな投資判断が、例えばバリューのように広く知られた投資テーマの場合には、あるいは日経平均の銘柄入替でもよいが、自分だけでなく他のマネージャとキャパシティを共有していることになる。原油やサンマと同じで、自分だけが価格や収穫を調整しても、誰かが持って行ってしまえば、その分だけ資源は減ってしまうわけだ。これまでに絶滅してきた、数々の共有された資源と同じように、例えばモメンタムが既に絶滅しているのかどうか、よくわからない。期待されるアルファの大きさは観察できず、他方でそれが単にノイズだったとしても、トラッキングエラーは消えていないからだ。あるいは職人が上手に捕まえるクオリティは、そこらへんの雑なクオリティ*2が絶滅に瀕している中でも、生き残っている可能性さえある。リスク管理のテーマは絶えない。

2017-09-13

娘がビットコインを買ったんだ、そして上がった、彼女はいま自分を天才だと思ってる

CNBCのDelivering Alpha*1というカンファレンスで、JPモルガンのダイモンがビットコインについて、「そんなものやってる阿呆なトレーダーは秒速でクビだ」と発言したそうだ。面白いので、いくつかピックアップしてみる。


JPMorgan's Dimon: Bitcoin is a fraud that will eventually blow up

https://www.cnbc.com/2017/09/12/jpmorgan-ceo-jamie-dimon-raises-flag-on-trading-revenue-sees-20-percent-fall-for-the-third-quarter.html


"I'm not saying 'go short bitcoin and sell $100,000 of bitcoin before it goes down," he said. "This is not advice of what to do. My daughter bought bitcoin, it went up and now she thinks she's a genius."


"It's worse than tulip bulbs. It won't end well. Someone is going to get killed," Dimon said at a banking industry conference organized by Barclays. "Currencies have legal support. It will blow up."


Dimon also said he'd "fire in a second" any JPMorgan trader who was trading bitcoin, noting two reasons: "It's against our rules and they are stupid."

2017-09-08

誰がデジタル通貨を欲しているのか

そんなもん山師に決まってるじゃないですか。来るべき世界とか吹いて、ひと山当てようって話ですよ。あ、日経の記事は読んでません。


デジタル通貨 中銀に待望論 英中など構想、日本も研究 金融政策効力堅持へ :日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGKKASDC05H0M_V00C17A9MM8000/


生活者として、カネを払うに際して、そのとき何を望むかといえば、

  • なるべく面倒を減らして
  • なるべく手続きを簡単に
  • 安心して使いたい
  • 誰かに盗まれるとか、そういう心配したくない
  • 手数料とか取られたくない
  • そのまま保管させて
  • できれば高い金利を付けてほしい

くらいの話で、そんなもんデジタルだろうがアナログだろうが、アンプと一緒でどっちでもいいわけですよ。デジタルが有利だとか、アナログの暖かみだとか、そういうのはそっちでやってくれって話。分散だとか暗号だとか、非中央集権だとか、知ったことじゃないわけですよ。そういうのはそっちでやってくれって話。


政府の手出しがアレみたいな話は、さんざん金利金利騒いでる当ブログが言うのもナンだけど、ほとんど世界中ゼロ金利な現状、ぶっちゃけ二の次なわけですよ。ビットコイン?そう思ったら、もはや無関係だと思いませんか。預金から振込とか、あるいはデビットカードの方が、ちょっとダサく感じるだけで、ずっと近いと思いませんか。


中銀?税金優雅なリサーチお疲れ様です。塩爺の離れでスキ焼き論、いつだって忘れるなよ。

2017-07-28

Chopsticksを組み合わせて先物取引をつくろう

オタク向けです。二択の賭けは、リスク取引の最も原始的な形ですが、複数のChopsticks*1を組み合わせて、より高級なデリバティブズをつくってみようという企画です。できるかな。


日経平均

A) 20000円を超える

という証券について、20000円分買います。より正確には、Aが実現したときに20000円が返ってくるように買います。すると、馬鹿みたいですが、日経平均が20000円を超えなかったときにはゼロ、日経平均が20000円を超えたときには20000円が返ってきます。下記に図示してみました。縦軸はペイオフ、横軸は日経平均です。

f:id:equilibrista:20170728113412p:image


日経平均

A1) 16000円を超える

A2) 20000円を超える

という証券群について、A1を16000円分、A2を4000円分買います。より正確には、A1が実現したときに16000円が返ってくるように、A2が実現したときに16000+4000=20000円が返ってくるように買います。すると、馬鹿みたいですが、日経平均が16000円を超えなかったときにはゼロ、日経平均が16000円を超えたときには16000円、さらに20000円を超えたときには20000円が返ってきます。下記に図示してみました。縦軸はペイオフ、横軸は日経平均です。

f:id:equilibrista:20170728113409p:image


日経平均

A1) 16000円を超える

A2) 18000円を超える

A3) 20000円を超える

A4) 22000円を超える

という証券群について、A1を16000円分、A2からA4を、それぞれ2000円分買います。より正確には、A1が実現したときに16000円が返ってくるように、A2が実現したときに16000+2000=18000円が返ってくるように、A3が実現したときに16000+2000+2000=20000が返ってくるように、以下略。すると、馬鹿みたいですが、日経平均が16000円を超えなかったときにはゼロ、日経平均が16000円を超えたときには16000円、さらに18000円を超えたときには18000円、さらに以下略。下記に図示してみました。縦軸はペイオフ、横軸は日経平均です。

f:id:equilibrista:20170728113401p:image


日経平均

A1) 16000円を超える

A2) 17000円を超える

A3) 18000円を超える

A4) 19000円を超える

A5) 20000円を超える

A6) 21000円を超える

A7) 22000円を超える

A8) 23000円を超える

という証券群について、A1を16000円分、A2からA8を、それぞれ1000円分買います。より正確には、A1が実現したときに16000円が返ってくるように、A2が実現したときに16000+1000=17000円が返ってくるように、A3が実現したときに16000+1000+1000=18000が返ってくるように、以下略。すると、馬鹿みたいですが、日経平均が16000円を超えなかったときにはゼロ、日経平均が16000円を超えたときには16000円、さらに17000円を超えたときには17000円、さらに以下略。下記に図示してみました。縦軸はペイオフ、横軸は日経平均です。

f:id:equilibrista:20170728113357p:image


だんだんと近づいてきました。もう数回繰り返せば、どうですか、それなりに実用的な先物が、近似的に完成します。やったぜ。グラフの見やすさのために16000円のところで多く買っていたり、あるいはちょっとだけ中心がズレていたり、細かいところが気になる方もいるかもしれませんが、ともあれ手掛かりは掴みました。また気づかれていると思いますが、プロセスの中に既にオプションは現れていて、コールでもプットでも、あるいはより複雑な組み合わせでも、なんでも来いだ。


もちろん課題としては、それぞれ部品としての各Chopsticksに、それなりに商いがなければ、バスケット注文は自在にはいきません。まずは営業を頑張らなきゃ。それから現時点ではChopsticksは、実際のおカネは扱えません。念のため。いつか実際に取引できるといいな。


また非常にオタクな皆さんための課題としては、各値段の関係があります。それぞれ部品としての各ChopsticksのAnには、それぞれ値段がついています。もちろん組み合わせて構成する先物にも、組み合わせて値段はつきます。そこから部分的に切り出すオプションにも、そこから部分的に切り出して値段はつきます。そうした各値段は互いに、どのような関係にあるのか。市場参加者は、それらに何を表現していることになるのか。いつか実際に観察できるといいな。

2017-07-21

フィンテック風サービス雑感

ここのところフィンテック風というか、取引サービスのようなものがポツポツ出てきて、どれも使ったことはないのですが、勘で徒然に書いてみようかなと。間違っていたら、教えて下さい。


VALU | だれでも、株式会社のように、あなたの価値をトレード。

https://valu.is/

株式会社のように、などと言われた瞬間にゲーと思ってしまう*1のは、どうしたってロクでもない場面ばかり思い浮かぶからですが、実際のところ何を売買するサービスなのかよくわからず、スパイスとしてのビットコインをまぶしつつ、むしろ「俺たちは雰囲気で」を地で行ってる感じにシビれます。無をトレードしますみたいなパロディ*2の方が、むしろ構造を浮き彫りにする素敵さを備えている気もしますが、試行錯誤の過程なのか、最近は「優待」と称して、何らかのサービスを提示する発行者も出てきているようです。とはいえ、やりとりを最初から仕組みベースで提供されていないと、どうしても金融的には、悪貨に駆逐されてしまう未来もチラつきます。蛇足ながら、構造的に詐欺的なアクションが比較的容易なサービスにもかかわらず、リリースやらニュースの中で金融庁にまで言及されることには正直ビビるのは、歴史を振り返るまでもなく役所の名前を騙る連中は常に詐欺の一大勢力で、消費者庁を含む当局だって、常にそのことは気にしています。


CASH|目の前のアイテムが 一瞬でキャッシュに変わる

https://cash.jp/

現在は稼働していないようですが、写真を撮るだけ簡単査定のオンライン質屋のようなサービスに見えます。ところが、よく見ると薄い字で、カネを返す場合には15%/2月を取りますみたいな(手数料と称した)豪快な金利*3が書いてあってシビれます。これだけの数字なら、一見担保に見えるモノと写真については、やってる感のためのダミーあるいは連絡パイプ確保のための手段と言ってもおかしくはなさそうで、実際のところ何の写真を送っても、カテゴリに応じて決まった金額を返してくるらしいことを確認する遊びまで流行っていたようです。グレーゾーンというか、屁理屈的に法体系脆弱性を突くことは、もちろん未来に向けて整備を喚起するアクションとしては強力なのでしょうが、もうちょっと日陰っぽくやらないと、最近は消費者庁の活躍も目覚ましいわけで、なんというか正直ビビります。


日本円に対して為替が安定した仮想通貨を志向した デジタルトークン社会実験において「Zen」の発行を開始 | BCCC - ブロックチェーン推進協会

http://bccc.global/ja/articles/20170705.html

箱の区分所有権を売却すると同時に、資産として円の短期金融資産を買い持つ仕組みのようですが、だとすれば要するにMRFの再発明にはなりませんか。金融規制の歴史が示すように、こういった仕組みから脆弱性を取り除いて洗練させるのは大変で、いっそのことMRFクローンからスタートした方がスピードがあるようにも思われました。現在はゼロに近い金利も、日本を除く先進諸国では既に見直しが始まっているところですが、そうなれば資産側も当然のことながら、金利分だけ増えていくわけです。当初100Zen=100円だったものが、いつからか100Zen=101円のように、だんだんと見にくい単位になってしまうところは残念*4ですが、保有するZenの方を増やす連続的な分割もまた面倒です。思い切ってポイントカード的に、最初から購入額相当を保証した方が、決済通貨としての使い勝手はずっとスッキリしそうですが、そうなればクオカードやスイカと見分けがつかなくなってしまい先端感も減るジレンマでしょうか。


Timebank(タイムバンク

http://timebank.jp/

例えばコンビニのアルバイトも時給なわけですが、さほど珍しくない「時間を売る」アクションの柔軟性を高める内容のように見えます。買う側から見たときに、では有名人の10秒を保有することの嬉しさは、例えばバフェットとのランチ*5を想起すればよいのかもしれませんが、何を話したらよいのか正直戸惑うところです。どちらかといえば、この仕組みが例えばフリーランスのマッチングを広げるのなら、そちらの方が素敵なことなのかもしれません。とはいえ時給の制約のようなものが、ここでも結局のところ効いてくるように思えるのは、そもそも時間の価値は使い方次第であって、その内容をあらかじめ約束しようと思えば、VALUの「優待」やら他の既存サービスにも近づくのかもしれません。あるいは、より内容ネイティブな形の仕組みなりサービスの姿が、何らか存在する*6はずです。マーケィング的には力強い「時間銀行」という言葉の幻影は利用しつつも、人間の営みにかかる取引の姿を探り、それらを直接的に扱えるように、我々も頭を体操したいものです。


こうして見ると、より値段に着目した*7取引サービスの出現に最近の特徴を感じられますが、これらに先駆けて登場した、二択の賭けを取引する我が http://chopsticks.trade/ の直球加減に、手前味噌ながら一層のコクを感じるところでもあります。諸事情ありまして、ここのところ元気に営業できていませんが、今年の後半から来年にかけて頑張っていきたい所存です。また、その発展に力を貸していただけるという方、一杯ビール*8おごりますよ。

*1:その後、削除されたそうです

*2https://nilu-is.appspot.com/user/t9pHHvxFwvOQnzuJGNsFDmFfExl1

*3:その後、買い取り専門になったそうです

*4:金利分はサービス側が取るのではないか、とのコメントをいただきました

*5https://twitter.com/equilibrista/status/907534254929715200

*6:東インド会社かもしれません

*7:あるいは巧妙に回避した

*8http://beerbalance.net/