タスポの情報、検察へ提供


 もしかしたらそうなるだろうなぁ、と思っていたが、タスポの使用履歴の情報が、検察の捜査のために渡されるそうだ。以下は『中日新聞』のサイトより。


タスポ情報、検察に提供 日本たばこ協会

2009年7月26日 02時08分

 成人識別カード「タスポ」と対応型のたばこ自動販売


 たばこ自動販売機の成人識別カード「タスポ」を発行する日本たばこ協会(東京)が、特定の個人が自販機を利用した日時や場所などの履歴情報を検察当局に任意で提供していたことが25日、関係者の話や内部資料で分かった。行方の分からなかった罰金未納者の所在地特定につながったケースもあった。

 クレジットカードや携帯電話の使用履歴はこれまでも捜査当局に使われてきたが、タスポ情報の利用が明らかになるのは初めてとみられる。

 刑事訴訟法に基づく照会に回答した形となっているが、タスポの利用者は通常、想定していない事態だけに、個人情報保護の観点から「どんな情報を第三者に提供するのか、本人に明らかにすべきではないか」と、疑問の声も出ている。

 日本たばこ協会は、共同通信の取材に事実関係を認め、「法に基づく要請には必要に応じて渡さざるを得ない。情報提供については会員規約で同意を得ていると認識している」と説明している。

 関係者の話などによると、協会は求められた個人の生年月日や住所、電話番号、カード発行日などのほか、たばこ購入の日時や利用した自販機の所在地を一覧表にして提供。免許証など顔写真付き身分証明書の写しが添付された申込書のコピーを渡した事例もあった。

(共同)

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2009072501000753.html

ついこの前、千葉女性殺害・次女連れ去りの事件の犯人が捕まったときも、クレジットカードの使用履歴からだいぶ足どりが明らかになっていた。

悪いことをしなければ、自分の行動の記録が残されていても問題はない――と我々は考えるべきなのだろうか。

タクシーは監視する

 もういっちょ監視カメラの話題。タクシーの車載カメラの映像が、警視庁に提供されるそうだ。

4万2000台の「眼」活用=走る防犯カメラ画像提供−タクシー団体と協定・警視庁

 警視庁は11日、東京都内のほぼすべてのタクシー会社などが加盟する業界団体「東京乗用旅客自動車協会」とドライブレコーダーの画像提供に関する協定を締結する方針を固めた。約4万2000台のタクシーなどを「走る防犯カメラ」として活用し、ひったくりなどの事件捜査に役立てる。8月5日の「タクシーの日」に合わせ、協定を結ぶという。

42,000台はすごいなぁ。都内全域が監視カメラのもとに置かれるようなイメージ・・・・

が、実はこれの運用はなかなか大変そう。というのも、ドライブレコーダーは車に衝撃があったときに、自動的に前後約20秒の画像を記録するそうだ。だから、逆に言うと衝撃がないときは記録されない。どうするかというと――

 同庁はタクシーなどの運転手が走行中、ひったくりやひき逃げ事件を目撃した場合、レコーダーをたたくなどして衝撃を与え、画像を記録してもらうように依頼。画像提供を受け、捜査に生かしたいという。

なかなか、これは実効性は低そうだ(笑)

ちなみにこの仕組み、協会の愛称にちなんで「タッくん防犯情報システム」と名付けられるそうな。

警察の防犯カメラの運用が住民に委託


 「警察庁が来年1月をめどに、全国15地域で通学路に防犯カメラを設置するモデル事業」をはじめるのだそうだ。そしてその防犯カメラの運用(による監視)は地域住民に委託するのだそうだ。色んな地方紙でそれぞれニュースが載ったと思うが、例えば以下は『西日本新聞』の批判的な社説。

 警察は全国の繁華街で計363台の防犯カメラを設置・運用しているが、住宅街へ設置するのは初めてであり、住民への委託も初めてだ。警察庁は「住民の防犯活動を支援する」と意義を強調するが、気掛かりなことが少なくない。

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/106962

次は『東京新聞』。

 同課[栃木県警生活安全企画課]によると、カメラの映像は公民館などの施設に機器を置いてボランティアがモニターを監視する。カメラの設置場所も公開する方針で、県警の担当者は「犯罪抑止効果は大きい」と期待する。

 ただ、国の補正予算に対応して突然発表された事業ということもあり、住民への説明や運用マニュアルづくりはこれからだ。地元の男性(66)は「住民同士で防犯カメラを見ることには抵抗がある。皆が皆、賛成するとは思えない」とプライバシーの侵害を懸念する。

 また、同事業は本年度から二〇一一年度末までのモデル事業であるため、一二年度以降の予算の見通しは不透明。年間三百万円かかるという維持費も確保していく必要がある。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/20090707/CK2009070702000091.html

 使い方によっては「防犯カメラ」も有用だろうが、それにしても地域住民に「相互監視」させるとは・・・ 恐ろしい世の中になりつつあることよ。警察の言う「犯罪抑止効果」も多少は期待できるだろうけれど、それと引き替えに地域ボランティアの人は「監視」することを求められ、通行人は無用なカメラの視線に曝され、録画される。いい方向とは思えないなぁ。補正予算でいきなり始まった事業のようだから、継続して予算が出ることなく、このまま廃止になっていって欲しいのだけど。この動きが広がらないことを切に祈る。

 

移動履歴を蓄積してこんな実験をするそうな


 まったく何を考えているのか、というニュース。防げるわけないだろ。「あなたは感染者と同じバスに乗っていました」というような事後報告だぞ(T-T) インフルエンザを口実に、この種の実験を実現したいのだろうなぁ。

 しかしGigazineの記者は「被害を最小限に抑えるという観点では非常に意義がある実験なのではないでしょうか。」(「総務省、インフルエンザなどに感染した人に近づくとメールで知らせる仕組みを実験へ」)とか言っているよ・・・ それが平均的な現在の感性なのだとすると、こういうシステムが「実験」の次の段階に進む日も遠くないのかも。

 ニュースソースは以下。

「感染者に近づけばメールが届く 携帯電話で秋にも実験」

asahi.com)2009年5月3日13時17分


 利用者の居場所を特定できる携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能を活用し、感染症の世界的大流行(パンデミック)を防げないか――。総務省は今秋にもこんな実験に乗り出す。新型の豚インフルエンザの感染拡大懸念が強まるなか、注目を集めそうだ。

 実験は都市部と地方の2カ所で計2千人程度のモニターを募って実施。GPSの精度や費用対効果を見極め、実用化できるかどうか検討する。

 具体的には、携帯電話会社などがモニター全員の移動履歴をデータベースに蓄積。その後、1人が感染症にかかったとの想定で全モニターの移動履歴をさかのぼり、感染者と同じ電車やバスに乗るなど感染の可能性がある人を抽出し、注意喚起や対処方法を知らせるメールを送る試みだ。

 こうした個人の移動履歴や物品の購入履歴を活用するサービスには、NTTドコモが提供する携帯電話サービス「iコンシェル」などがあり、今後もサービスの増加が見込まれている。ただ、プライバシーである移動履歴をどこまで共有して活用できるか、といった点は意見が分かれる。このため、総務省は実験を通じ、移動履歴の活用に対する心理的抵抗感などもあわせて検証する方針だ。(岡林佐和)

http://www.asahi.com/business/update/0502/TKY200905020184.html

 以下は少し古いニュースだけれど、ちょうどセットにして考えるべき動向なので掲げておく。


性犯罪者にGPS 出所時同意で装着、法務省検討

中日新聞(2008年12月28日 朝刊)

 法務省は、性犯罪受刑者が出所した後の居場所を把握するため、衛星利用測位システム(GPS)端末を同意の上で装着させることを検討している。GPSを活用した犯罪の再発防止策が欧米などで広がっていることを背景に、日本でも実施の可能性が出てきた。

 出所者の同意を得るとはいえ、GPSを使った防止策は人権やプライバシー侵害として反対の声は根強く、議論を呼びそうだ。

 日本では、2004年に奈良市で発生した小1女児誘拐殺人事件を機に性犯罪者対策を強化。法務省は翌年6月から、13歳未満に対する性犯罪受刑者の出所予定日や居住予定地などの情報を、警察庁に提供するようになった。

 各警察署が所在を確認するものの、行方が分からなくなるケースもあった。

 法制審議会の部会などで問題提起され、今年4月にGPS活用の検討を自民党の特別委員会が提言した。

 英国や米国では、性犯罪の前歴のある人の住所や顔写真などを提供。米フロリダ州では拘禁刑終了後も生涯、GPS端末装着を義務付ける法律が制定され、他の州に広がっている。

 韓国では今年9月、たびたび性犯罪を繰り返す受刑者の仮釈放後や出所後、居場所や行動を電波で24時間把握する「電子足輪」の運用が始まっている。装着期間は最大10年。

 日本の場合、性犯罪の中で強姦(ごうかん)の認知件数は2000年以降、2000件から2500件の間で推移。06年からは2000件を下回り、再犯率は傷害や詐欺などに比べ低いが、被害者が届けないために統計に表れないケースも多いとみられる。

 携帯電話はライフログ発信器になりつつあるのか


 携帯電話の契約者にそれぞれ割り振られる契約者固有IDというのがある。なんでも、携帯電話向けのサイトを訪問すると、そのサイトの設置者にそのIDがデフォルトで通知(送信)されるように最近なったんだそうな。高木浩光さんが詳しい分析と批判を書いておられ、色々なところで話題になっている。

>>「日本のインターネットが終了する日」(高木浩光@自宅の日記)

 ポイントはやはり契約者固有IDのもとに、さまざまな個人情報が「名寄せ」されてしまうところにある。これは、規制側がまず念頭に置いている悪意のユーザの排除の役にも立つだろうが、弊害が大きすぎる。

PCから使う通常のインターネットなら、GoogleYahoo!で検索して見つけた、初めて訪れるネットショップで、いきなり買い物をする(代引き等で)というのも、そこそこ普通のことである。商品の送付先として住所氏名を入力するわけだが、仮にそのネットショップの信頼性が低いものだったとしても、単に住所氏名を渡すことくらい、たとえ名簿に記載されて販売されようと、それだけなら問題がないという判断もあり得る。〔…〕

しかし、ケータイWebではそうはいかない。住所氏名を送信する際に、同時に携帯電話の契約者固有IDも送信してしまう。当該サイトの信頼性が低い場合、その固有IDの契約者が誰であるか、住所氏名とひもづけられて記録され、第三者に販売されるおそれがある。ひとたびそうなってしまうと、別のサイトを訪れても、訪れただけで、住所氏名を特定されてしまう(そのサイトがその名簿を購入している場合)。このような事態は、PCから使う通常のインターネットでは起こり得ない。IPアドレスは固定ではないからだ。

PCから使う通常のインターネットでは、匿名で使うサイトと、顕名で使うサイトの両方を利用することができた。SNSやblogでは名前を明らかにして活動し、掲示板では匿名で活動するということが安心してできた。(警察の取り調べが入るような犯罪的行為をしない限り。)

ケータイWebではそうはいかない、どこかのサイトで匿名で行動したいと思うなら、他のどのサイトでもずっと匿名のまま使うように気をつけないといけない。どこかに明かした個人的な情報は、契約者固有IDと紐付けられて他のサイトで共有され得る。逆に、どこかのサイトで自分が誰か明かして行動したいなら、他のどのサイトでも自分が誰かは知られていると覚悟の上で行動しなくてはならない。匿名で使うことを選択したなら、ネットショップを使うわけにはいかない。

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20080710.html#p01

 自分がターゲットを絞った広告の標的になったり、音楽サイトを訪問したときに「どこのだれそれだ」ということがわかる程度なら、まあ我慢しようという考えもある(私はイヤだが)。

 ここで考えてみたいのは、もうちょっと違う視点、ライフログや、国民総背番号制の観点からである。

 たぶん、具体的な例を出すとわかりやすいと思う。高木さんのエントリの注1に、

このIDがどんな文字列で送信されているかは、たとえば、このIDをあえて表示するようにしている掲示板の書き込み例を見ることで、知ることができる。たとえば、2ちゃんねる掲示板のこの板には、多数の契約者固有IDの表示が見られる。ここに表示されているID文字列をキーにGoogleなどで検索してみると、同じ人が別のところでどんな書き込みをしているかを調べられることがわかる。


とあったので、やってみた。:proxyXXXX.docomo.ne.jp(XXXXX)とか、XXXXXXXX.ezweb.ne.jp(XXXXXXXXXXXXXX)とかなっているのがそれである。プロキシの部分を削ってググると、まぁ色んな板への書き込みが出てきますね。

 高木さんが書かれていた、PCのIPアドレスは固定ではないが、ケータイwebのIDは不変であるということの恐ろしさは、ここにも関わってくると思う。つまり、その携帯を使って書き込んだ発言は、たとえ匿名であってもすべて「名寄せ」されうることになり、しかも(発言が削除されないかぎり)一生ずっと消えることなくつきまとう可能性がある、ということである。

 ここで忘れないでおきたいのは、個人情報はあらかじめデータベース化されていなくても、グーグルのような高機能な検索エンジンがあれば、場合によってはデータベース化されているのと同じことになってしまうということである。Aさんが携帯を通じて掲示板やらレビューサイトに書き込んだ情報は、どこかにデータベース化されているわけではないが、検索すれば最近から数年前に至るまでずらりとならんでしまう。結果、掲示板によってキャラを変えたりして変えなかったりしながらやってきたAさんの活動は、すべて「統合」されてしまう。

 実際に契約者固有IDでネットを検索するとわかるが、その「気持ち悪さ」は買い物の履歴が蓄積されていくこととはまた違ったものがある。おそらく、何を買ったかという情報よりも、より直接的に「その人」の人格を想像させるからだろう。

 もちろん、こうした事態はいわゆるコテハンを使う人や、あるいはmixiのような実名が(一応)前提のコミュニティがすでに存在する以上たいしたことじゃないぞ、という反応も予想できる。だが、携帯のネットでは全員がデフォルトで通知(記録)されるのである。実際にはそう簡単に契約者固有IDが検索可能な状態におかれるとも考えにくいが、記録のすべてが検索結果として返ってこなくとも、部分的に露わになるだけで、十分に脅威である。また警察などが捜査に利用し、携帯会社が情報提供に協力することは考えてみるまでもないだろう。

 ライフログというのは、その名の通り、人生の記録である。この言葉はそれを積極的に自ら作る(記録する)人についての文脈で使われることもあるが、その本人が知らぬところで集められて構成されていく個人情報の集積という意味でも捉えられる。

 携帯電話はいまや個人情報のなかでももっともセンシティヴな情報が蓄積し、かつ送信されていく端末である。誰が何を買い、何を調べ、何を注文し、何を読み何を聴いたかという履歴は、大手のネットショップのデータベースには、すでに相当蓄積しているだろう。今のところそれらと結びつけられる可能性は低い(よね?)ものの、携帯は、会話を媒介し、GPS情報を発信し、メールを送受信し、テレビ・ラジオの受信機になり、音楽再生機になり、デジタルカメラになっており、それらの情報を相当な部分蓄えるハードディスクとなっている。

 携帯は、未統合のライフログそれ自体だともう考えた方がいいだろう。契約者固有IDのデフォルト全通知という事態は、その統合への道のりの、たしかな「前進」であるように思える。

広告から見られる日

 監視カメラ・防犯カメラが増える一方の昨今。いま盛んに報道されている舞鶴の殺人事件でも、「国道の方を向いた」防犯カメラに被害者の方ともう一人のようすが写っていたのだという。有力な手がかりであり、こうした事例を見るとこの種のカメラが役に立つ場面は確かに存在する。

 が、だからといって街中いたるところ監視カメラをじゃんじゃんつけよう、というのに諸手を挙げて賛成する気持ちにはなれないのは、私が偏屈にすぎるのだろうか。

 街中に設置されたカメラというと、犯罪抑止あるいは記録のための監視/防犯カメラが真っ先に思い浮かぶが、どうも世の中それだけではすまないご時世のようだ。cnetのニュースから。

>>「顔認識をマーケティング活用 広告にカメラ取り付け性別・年齢をデータ化」

 体の一部の特徴から個人を特定する生体認証のひとつである「顔認識技術」をマーケティングや広告宣伝に活用する動きが広がっている。本来はセキュリティーシステムに使われる技術だが、商業施設内などの広告に取り付けたカメラで、前で立ち止まって広告を見た人の性別や年齢を識別しデータ化。効果的な売り場のレイアウトや広告宣伝に生かす仕組み。IT(情報技術)各社が相次いでシステムを開発し、売り込んでいる。

 NECは昨年、広告に取り付けたカメラで顔認識技術で性別や年齢を識別しデータ化するシステムの販売を始めた。

 システムを導入した商業施設は「何歳くらいの男性あるいは女性がいつどこの広告をどれくらいの時間見たか」などを把握。このデータを基に、ターゲットの客層が多い場所に商品を配置するなど売り場をレイアウトできる。

 さらに同社は客層データと電子広告モニターを連動させるシステムを今年度中に開発し商品化する予定だ。

http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20372839,00.htm

広告は見るものと思っていたが、広告から見られる日が来ようとは・・・。

「数百台のカメラ映像を一元管理」と「組込み用「指静脈認証ユニット」」


 目に入ったニュース二つ。ともに日立です。


>> 数百台のカメラ映像が一元管理可能に、日立が映像監視向けプラットフォーム開発 (Japan.internet.com 2008年2月4日)

この技術は、数百台のカメラで撮影した映像の中から、人の顔や動きの有無などの情報を基に、変化が起きている映像など、監視業務を行う上で重要度の高い映像を、高画質かつ他のカメラの映像よりも優先的に伝送。警備室の監視者用モニタ画面などに拡大表示するとともに、過去に撮影した映像データベースの中から類似画像を瞬時に検索することを可能にするものだ。

http://japan.internet.com/webtech/20080204/3.html


>> 日立、組込み用「指静脈認証ユニット」を提供開始 (Japan.internet.com 2008年2月1日)

日立は1日、さまざまな機器に組込み可能な「指静脈認証ユニット」を提供開始する。
〔…〕
なお、認証を行う際の、指静脈の撮影から指静脈の登録データとの認証・照合までの処理は、組込む機器に依存することなく、新製品だけで行えるという。

http://japan.internet.com/webtech/20080201/9.html