Hatena::ブログ(Diary)

京都の古本屋 Fabulous

2016-08-24

時代劇は死なず!

誠に勝手ながら26日(金)は店休日とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ありません。

何卒よろしくお願いいたします。


今日のおすすめ本。

2016年8月24日は新刊本をご紹介させていただきます。


f:id:fabulous69:20160824131354j:image

『鬼才 五社英雄の生涯』

春日太一著 文春新書


 五社英雄フジテレビのディレクターとして一九六三年の『三匹の侍』で

「刀と刀の合わさる効果音」を開発して草創期のテレビ時代劇に革命的な旋風を

巻き起こし、その翌年にはテレビ局の人間として初めて映画を監督、八〇年に

銃刀法違反で逮捕されて一度は表舞台から姿を消すが、八二年の映画

『鬼龍院花子の生涯』で復活、以降は女優たちの濃厚な濡れ場やヌードに彩られた

極彩色の映画を連発して低迷する日本映画界を牽引した、希代の演出家である。

(中略)

 五社は作品を通してだけでなく、常日頃から、いかにして周囲の人間を

楽しませるか。そのことだけを考えてきた。そのために彼は、自らの人生をも

脚色していたのだ。

 これは、そんな「全身エンターテイナー」とも言える男の、虚実ハッタリ

入り混じった生涯の物語である。

(本文より)


あまりの面白さに2回続けて読みました。


文章からほとばしる、春日さんの五社英雄監督への熱情!

まるで五社作品を観ているかのようでした。


人一倍豪放に見えて、本当は人一倍繊細だった五社監督。

一度でいいから、京都の街を闊歩している姿を拝見したかったです・・・。


だまされたと思って、序章だけでも読んでみてください。

必ずや監督の生きざまに惹きこまれるはず。

おすすめです!!


こちらはFabulousでのお取り扱いはございません。

新刊書店でお求めください。


D

D


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-08-21

調停者の鉤爪

今日のおすすめ本。

2016年8月21日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160821161410j:image

 

『デス博士の島その他の物語』

ジーン・ウルフ著 浅倉久志伊藤典夫柳下毅一郎


 都市の縮小のことを考えてもべつに悲しくならないことに、彼は気づいた。

ある一時期、人口がふえすぎたことは、だれもが知っている。しかし、子孫を通じて

永遠の生命を手にしたいという衝動は、もはや存在しない。現実に永遠の生命が

手にはいったからだ。何百年間も、カトリックの僧侶や尼僧が子孫を残すことを

考えなかった理由は、ひょっとするとそこにあるのだろうか—人間の霊魂が死後も

不滅であることを信じ、すでに永遠の生命を自覚していたのではないだろうか。

これからは森林がふたたび蘇り、繁茂するだろう。鹿や、狼や、熊や、狐も、

いまからはもっとたくさんの仔を産めるだろう。

(中略)

 美術や文学や科学はどうなっていくのか?ひょっとすると(自分はそうは

考えないが)それもやはり永遠の生命を獲得しようという試みかもしれない。

もしそうなら、それはもはやなくなったか、それとも終わりなき先送りのなかに

溺れてしまったのか。もはや“大いなる遺産”はなく、もはやどんな種類の

偉大な作品もないのか?アルヴァードはそれも信じなかったし、これから

信じる気もなかった。

(「死の島の博士」本文より)


こちらは初版本となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-08-17

既にそこにあるもの

誠に勝手ながら19日(金)は店休日とさせていただきます。

ご迷惑をお掛けいたしまして申し訳ありません。

何卒よろしくお願いいたします。


今日のおすすめ本。

2016年8月17日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160817155902j:image

ネオンと絵具箱』

大竹伸朗著 月曜社


 夢を組み立てる素材とは一体何なんだろう。自分が実際に意識してみたものや

経験や感情など、記憶が大きく夢を左右するものだとは思うが、無意識に自分を

通過した出来事もそこは大いに関係しているに違いない。日常の記憶に強く残る

出来事よりも、特に考えたり意識しないまま見えてしまっている世界の無数の

ディテイルの集積が、実は「夢」というものを組み立てている何かの裏側に

ビッシリと貼り付いているのではないか・・・。

(中略)

 自分が生まれる前の世の中の出来事を正確に知ることはもちろん不可能なことだ。

 しかしこの世には書物などに書き残された出来事の断片を手がかりに

研ぎすまされた想像力をもって頭に描くことができる人もいるのだろうし、

またそんな人々にとっては僕らが眺める何の変哲もない退屈な風景も

全く異なる風景としてその頭の中に思い描くに違いない。

(中略)

 そのような人物は自分が生まれ落ちて経験したり記憶したものと、想像力

基づいた膨大な過去の時間によるヴィジョンが折り重なる夢の時空の中を

歩いているのかもしれない。

(「バクテリアの夢」本文より)


単行本版は現在絶版となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


f:id:fabulous69:20160817160100j:image


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-08-10

Buddy 2016

おかげ様をもちまして、

Fabulousは6周年を迎えることができました。

みなさん本当にありがとうございます。


「変わらないでいるために変わる」


昨年と同じ歌詞の引用となりますが、

これからもこの精神を忘れず、

一意専心してまいります。


一冊でも多くの本がみなさんの元に届きますように。

Fabulousがその一助となりますように。


今後とも引き続きご愛顧のほど、

よろしくお願いいたします。


D

2016-08-03

木彫りの兎

今日のおすすめ本。

2016年8月3日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160803172248j:image

『庭の砂場』

山口瞳著 文藝春秋


 私は父に玩具の刀を買ってもらった。それは欲しくて欲しくて仕方のない

ものだった。それは、おそらく、胸が張りさけるような喜びであったと思われる。

私は、庭で刀を振り廻して暴れた。床に就いても刀のことが頭から離れなかった。

玩具の刀と言っても、剣戟の役者が舞台で使えるような立派なものだった。

父は兄にも同じものを買った。

 どこでどうなったかという記憶はない。たぶん、兄と二人で庭でチャンバラゴッコを

していたのだと思う。私は、刀で、兄の額に傷をつけてしまった。それだって、

はたして私がやったものかどうかわからない。証人は誰もいない。

 祖母が怒った。この家の跡取りの額に傷をつけたと叫んだ。たちまちにして

私の刀は祖母に取りあげられ、どこかわからないところへ棄てられてしまった。

宝物を取られた私は悲しかった。悲しくて泣き叫んだ。私の叫び声は、余計に

祖母の憎しみを買うことになったかもしれない。私は毎日毎日、毎晩毎晩、

泣き続けた。これは理不尽だと思った。私が大人の理不尽、この世には

自分の力ではどうにもならないことがあるのだと知った最初の事件である。

(「−に−を掛けると」本文より)


こちらは現在絶版となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-07-29

世界の真上で

今日のおすすめ本。

2016年7月29日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160729164546j:image

『優雅な獲物』

ポール・ボウルズ著 四方田犬彦訳 新潮社


 町は荒れ放題だった。貧しさが臭っていたが、人々はそれに馴れて生きていた。

ひと昔前からそれ以上のことが起きたというわけでもなかった。海の風のせいで

街角の塵埃が空高く舞い上がり、怒ったように町外れのほうに降り注いだ。

無花果の葉ですら白く覆われた。溝地の下方へ通じる脇道の角を曲がるときには、

熱砂が彼女の腓を刺した。彼女はタオルを頭に纏い、片手で押さえた。この町を

憎らしいとはこれまで思ったこともなかった。どこへ行こうが多かれ少なかれ

似たようなものだと、高を括っていたからである。

 表通りも路地とほとんどちがったところがなく、両脇が壁に囲まれている

だけだった。突然,彼女は地を打つ重い靴の響きを背後に聞いた。振り返りは

しなかった。すると手がきつく彼女の腕を摑み、荒々しく軀を壁に押しつけた。

兵士だった。笑っている。彼が両手を壁にむかって拡げたので、彼女は逃げようにも

逃げられなかった。

 マリカはなにもいわなかった。男は立ち止まって彼女をじっと見つめた。

まるで走ってきたかのように荒い息遣いをしている。やがて彼はいった。

お前、いくつだ。

 彼女は相手の顔を間近に見つめた。十五よ。

 酒とたばこと、それから汗の臭いがした。

(「学ぶべきこの地」本文より)


こちらは現在絶版となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-07-27

水声

今日のおすすめ本。

2016年7月27日はこちらです。

f:id:fabulous69:20160727184905j:image

『龍宮』

川上弘美著 文藝春秋

 夜の始まりのことを、話そうか。

 会社を出るとき、私はいつもふかぶかとお辞儀をする。ビルの壁面は濡れたような

夕闇におおわれ、輪郭が曖昧になっている。光を灯した窓は、空中に浮かんだ

四角い白紙のようだ。お辞儀をする私を、退社する人間が大きくよけてゆく。

人間たちは,会社を出てしまうと、二度とビルを振り返らない。もし今夜

死んでしまえば、明日は同じビルに来ることはないというのに、人間たちは

そそくさと出て、そそくさと帰るばかりだ。

 思うさまお辞儀をしてしまうと、私は夜の街に向かって歩きはじめる。

 夜はまだ浅い。夜の闇も淡い。

 私は一軒の居酒屋に入り、生ビールを注文する。注文を聞きに来た若い衆は、

私の毛深いからだに一瞬驚くが、表情は変えずに、生ビールの注文を通す。

つきだしの切り干し大根の小鉢もすぐに持ってくる。

 若い衆が驚くのは、最初だけだ。すぐに慣れて、私がつぎつぎに注文する

揚げ出しどうふだの、砂肝の塩焼きだの、ぶり大根だのを、てきぱきと持ってくる。

「このへんに、アレ、いますかね」と私が聞くのは、燗酒が二本目になったあたりだ。

「うちみたいな店には、アレ、来ませんよ」と若い衆は答える。

(本文より)


単行本版は現在絶版となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-07-19

悪魔パズル

今日のおすすめ本。

2016年7月19日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160719181605j:image


『金庫と老婆』

パトリック・クェンティン著 稲葉由紀・他訳 ハヤカワ・ミステリ


 まつたくの話、マーマレードはヒルダ叔母さんのことが頭にこびりついて

離れなかつた。彼女に対する敵意は刻一刻とつのる一方だつた。彼は、

鉛筆でスケッチをすることと韻律のでたらめな狂詩とスケッチでブラニイを

抱腹絶倒させた。うわべでは、ヒルダ叔母さんにたいして蜜のように甘い

態度をしめしていながら、ひとたび陰にまわると、あどけない天使は怪物に

早変わりするのだつた。彼はヒルダ叔母さんのためにかぞえきれないほどの

仇名を考えだした。そのなかでも、「ゴキブリ」、「鬼ばばあ」、

「めすのゴリラ」などというのは、まだ品のよいほうだった。

 たしかに、他人の心のなかの憎悪を助長する憎悪ほど恐ろしいものはない。

いまのブラニイとマーマレードは、おたがいに相手を煽動しあいながら、

二人の気持を熱狂的な憎悪へと駆りたてているのだつた。こうして、

自分とおなじ年令の少年と新たに同盟をむすんで、うらみかさなる大敵に

反抗しているうちに、ブラニイはいつしか、母親の暖い愛情に対する

飢えを忘れていた。

(「姿を消した少年」本文より)


こちらは現在絶版となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-07-17

夢なきものの掟

今日のおすすめ本。

2016年7月17日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160717170108j:image

『黄土の奔流』

生島治郎著 講談社文庫


 浴室を出ると、部屋に備えつきのラウンド・テーブルの上に葉村が

ボストンバッグの中身を並べているところだった。オイルと鉄の臭いが、

真吾の身体にかすかな緊張を伝える。彼はその緊張を押えつけるように、

わざとゆっくりとテーブルに近づいた。

 テーブルの上には、大小の拳銃が四丁並べてあった。

(中略)

「こいつはモーゼルのミリタリー・モデルだな」

「そうです。よくご存じですな」

 葉村は冷笑を浮かべながらからかうように片方の眉を上げ、大げさに

驚いてみせた。

口径が七・六三ミリで、気の利いた土肥の使用しているのはほとんど

これですよ。もっとも、近ごろは中国製の模造品も出まわりはじめたという

噂ですが、こいつは正真正銘のドイツ製です。破壊力がすばらしいし、

軍用自動拳銃としては最高でしょうね。ぼくなら、こいつはぜひ五、六丁

持ってゆくな」

「そうしよう。しかし携帯用としては少し大げさすぎる。他にも小型の

拳銃を用意しなければならないだろう」

「携帯用ならこいつがいいんじゃないかな」

 葉村はテーブルの上からモーゼルよりずっとスマートな拳銃をとりあげた。

「ブローニングだな」

「そうです。ブローニングの最新型ですよ。一九一〇年型よりも銃身が少し

長くなっているでしょう」

 真吾の年季のはいった拳銃の扱い方を見て、これはからかう相手ではないと

見直したのか前よりはずっとていないな口調で葉村は説明した。

「ごらんなさい。だからバランスをとる関係で銃把もだいぶ長くなっているが、

扱いやすさは抜群だし、携帯にももってこいだ」

「よかろう。とにかく、この拳銃を全部試射場へ持っていって、連中に

使いやすいやつを選ばせるんだな。ところで、拳銃の他にどんな武器が

揃いそうだね」

「そうですね。軍用ライフルなら、いつでも揃いますがね。

サブ・マシン・ガンをなんとか手に入れようとして、今苦心している

ところです。弾倉と両方揃えようと思うと、値が張るんですよ。

それから手榴弾を三ダースばかり買っておきました」

(本文より)


こちらは初版本で現在絶版となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。

2016-07-13

創造の狂気

今日のおすすめ本。

2016年7月13日はこちらです。


f:id:fabulous69:20160713170433j:image

『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々』

ディヴィッド・A・プライス著 櫻井祐子訳 早川書房


 ジョブスは暇をもてあましていた。ある日、かれは散歩に出ることにした。

ケイと健康食レストランに立ち寄り、それからスタンフォードにほど近い

カリフォルニア運輸局の鉄道線路沿いを散策した。ケイはルーカスフィルム

友人の話をした。「すごいグループが分離独立しようとしていて、かれらが

既に知っていることと、これから解明したいと思っていることを活用すれば、

いろんなことができそうだという話をした」ケイは回想する。

 ほどなくしてキャットムルとスミスは、シリコンバレーのウッドサイド村にある

ジョブズスペインコロニアル様式の大邸宅に出向いた。アップル

ジョブズと仕事をしたことのある友人たちは、こぞって二人に警告した。

ジョブズは会合の間は魅力をふりまくだろうが、契約したが最後、とんでもなく

ひどい仕打ちをしてくるぞ。それでも二人はかれの話をじっくり聞こうと、

カーナー大通りからやって来たのだった。財務の話が出た場合に備えて、

ルーカスフィルム事業開発部門からアジット・ギルも同席した。

(中略)

 キャットムル、スミス、ギルは、午後一杯をジョブスと過ごした。

ジョブスはスカリーへの不満を腹立たしげにぶちまけながらも、

コンピュータ部門に持っている構想を語った。最後にかれらを外に散歩に

連れて行き、グループを買収して経営したいと言った。キャットムルと

スミスは、それには興味がないと返事をした。ジョブスの金を投資として

受け入れる用意はあるが、事業は自分たち自身で運営したいのだと。

かれらは友好的に別れた。別れ際、ジョブスはルーカスフィルムの提示価格は

高すぎる,下がったら知らせてくれと言った。五〇〇万ドルってとこだろう。

(本文より)


みんな大好き、ピクサー

最新作の『ファインディング・ドリー』が今週末から全国公開されます。


D

ファインディング・ドリー


こちらは初版本となっております。

通信販売もさせていただきますので、

お気軽にお問い合わせください。

69fabulous@gmail.com


日々のおすすめ本から、

貴方のお気にいりの一冊が見つかりますように。