モチベーションは楽しさ創造から

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仕事の仕組み化は万能か?仕組み化の副作用

マニュアルを作成したり、仕事の見える化を行ったり、仕事のシステム化を行ったり、統制の方法を作ったりという、「仕事の仕組みを作る」という仕事が、ここ数年、ドンドン増えています。「個人のスキルに頼ることなく、組織力、仕組みで仕事ができる体制」を作っていきたいという期待が増えてきているからでしょう。





しかし、ある意味「個人のスキルに頼ることなく、組織力、仕組みで仕事ができる体制ができると生産性が上がるか?」というと、実はそうではないケースも多いのです。

  • マニュアル化
  • 見える化
  • システム化
  • 内部統制の仕組み化

などは、表面的な論理性で考えると、社内の仕組みが整理され、「ムラ・ムダ・ムリ」が削減される仕組みのように思えます。だから人気があるのですが、実際には、思わぬ所に問題が潜んでいるのです。





「管理される側のモチベーションの低下」という問題です。





今、多くの企業で「仕事の仕組み化」が進んでいます。仕組み化では、「仕組みを作り出す人」と「仕組みにより動かされていく人」の2種類が生まれてきます。





うかつに「仕事の仕組み化」を行ってしまい、「仕組みを作り出す人」だけが自己満足に浸り、チームの生産性が逆に低下していくケースが多々発生するのです。論理的に、完璧な「仕事の仕組み化」を行っても、その中で働く「仕組みにより動かされていく人」のモチベーションがどんどん下がってしまい、相談に来られるというケースが増えています。





以前、会議の生産性が低いという会社から御相談がありました。





の会社の会議は、社長ばかりが発言を行っており、参加者の発言が少なく議論になっていないという事から、会議マニュアルの作成を専門家に依頼されていました。専門家は、会議状況をチェックしながら、あるべき姿を作り、それを「会議マニュアル」としていったそうです。





それから数ヶ月間、「会議マニュアル」に沿って、会議を進めていった結果、どうなったか?なお一層、会議での参加者の発言が減ってきたそうなのです。完全な社長の独演会に会議がなってしまったのです。





「押しつけの会議マニュアル」が会議参加者の「やる気」をグーンと下げる結果になったのでしょう。







ある会社では、社長が「目標に対しての現状把握が、財務数値だけしか管理できない。結果管理だけでなく、結果に至るプロセスを見える化して、先手を打てる体制を作りたい」という事でバランススコアカードを導入されました。





経営企画部が、財務諸表をベースに、顧客満足という視点での数値化、業務プロセスという視点での数値化、学習という視点での数値化という管理目標を作っていき、その目標値に対しての実績データがシステムで補足できる管理体制を作っていかれたそうです。





論理的にはパーフェクト。これで、「後手に回る管理ではなく、プロセスの見える化ができ、それをチェックし即対応していけば、業績は目覚ましく上昇していくに違いない!」と社長は最初そう思われたそうです。





仕組みを回していくと、社員に「面倒な事を無理矢理やらされているという意識」や、「何でこんな細かい事まで管理されてグチグチ言われないといけないんだ」という不満を高め、「言われた目標しかやらない」という雰囲気に社内がなってきたそうなのです。更に、言われたことだけをやればいいんだという、自分の頭で考えない人を増やしていったそうなのです。





結果、業績は悪化。1年後には、この仕組みはお払い箱になったそうです。(ホントは「仕組みにより管理されていく人達」を巻き込んで仕組みを作っていくべきなのですが、この会社はそのような配慮を欠いた仕組み作りをしてしまったのです。)





「仕組み化」はヘタすれば、「上の立場の人間の統制の強化」という側面だけが現れます。仕組み化の副作用です。「統制の強化」は、「仕事の楽しさをなくしていき、やる気を失わせていき」、自分の頭で考えない人を生み出していく事もに繋がっていくのです。





最近流行の内部統制やセキュリティ強化の為の統制強化をやっている企業でも、このような「統制強化疲れ」によるモチベーションが低下している社員さんが増えてきていると聞きます。セキュリティや、チェック体制ができてリスクは下がったけど、社員のモチベーション低下に伴い、利益減少になってしまい、会社倒産のリスクが高まってしまったという笑い話があるほどです。





今、「仕組み化ブーム」ともいえる時代です。これから、どんどん企業の中には「仕組み」が増えていくのでしょう。





万能のように聞こえる仕組み化ですが、「仕組みにより動かされる人のモチベーション」という視点を、決して忘れてはいけないと思うのです。彼らが、「よし、やってやろう!」というホンキで納得した気持ちで取り組んで貰える仕組み作りでなければ、本来の目的達成が実現できる仕組みにはならないのです。「論理的にパーフェクトな仕組みを考える力」よりも、彼らを巻き込む合意形成のプロセスや、リーダーの説得力が大事になってくるのです。





「仕組みにより動かされていく人」の視点を忘れた「仕組み」は、壊れた機械のように、「不良品を生み出す仕組み」になってしまうのですから。





「仕組み作り」は良いことです。しかし、仕組みを作り出す立場の人は、『仕組みにより動かされていく人のモチベーションを考慮した仕組み作り』というコンセプトを肝に銘じて、取り組んでいく必要があると思います。「論理的にパーフェクトな仕組み」だけでは、「人を巻き込んだ仕組み」は作る事ができないのです。

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