モチベーションは楽しさ創造から

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海上保安官事件にある「組織の人間だから」という批判は正当か?

海上保安庁の保安官が、逮捕されないという事が決定しました。
この事件に関してみなさんはどう考えているでしょうか?
この事件は
・情報セキュリティという観点
・法的な観点
・組織論的な観点
の3つの視点で考えていく必要があるでしょう。


私は、組織論的な観点から、この事件を考えてみました。
よく街頭のインタビューの中で、「組織の中の人間なんだから、あのような行為はマズイ」という人が大勢いました。

読売新聞にも以下のような記事がありました。組織の統制取れなくなる…海保「見送り」に驚き

「主任航海士を擁護する声もあるが、もし刑事罰に問えないようなことになれば、組織として統制が取れなくなる」と話した。一方、主任航海士が所属する神戸 海上保安部(神戸市)の職員の一人は「検察や警察の判断は妥当だが、本人への処分は必要だ。それが組織というものだ」と漏らした。


こんなコメントが載っています。

私は、このような「組織の人間としては・・・」的なコメントを発言する人達の多くは「組織」をどのように考えているのだろうか?と疑問を持ちます。組織論的には、とても難しい問題なのに、この人達は分かって発言しているのだろうか?と思うのです。

私達が組織に集っているのは、何の為か?
すぐに思いつくのが、「給料をもらう為」ということ。確かに、それは一つあると思います。しかし、給料をもらえる仕事場はたくさんあるのにも関わらず、なぜ、その組織を選んだのか?という事が大事だと思うのです。

私達は、組織の目的に共感して組織に集っているはずなのです。特に、仕事ができる人であればあるほど、この感覚は強いはず。

組織論の中に、指揮命令の原則とか命令一元化の原則等とがあります。分かりやすく言えば、上司の指示・命令を部下は守らなければいけないという原則。
この原則から、「組織の人間としては・・・」という話がでてくるのだと思います。

しかし、これが最上位の原理原則かといえば、状況によっては、私はそうではないと思います。上司が「人を殺せ」と言えば、殺すのか?という理屈になるからです。


私は、実は上司よりも、偉い存在がいると思っています。
それは「組織の目的」という上司です。
「組織の目的」が長であり、組織のトップですら、組織目的の僕にしかすぎない。

民間企業においては、「組織の目的」はトップの変更によりチェンジしていくのだが、国においては、組織の目的はさほど変わらないハズです。
全ての官庁は、国民を幸福にするという大目的があり、各役所にはその大目的に貢献する為の注目的が存在すると思う。海上保安庁であれば「海の安全を守る」ということが、役所レベルでの目的。(民間企業で言えば、パナソニックグループなどというグループの目的と、グループ企業の目的という関係)


そう考えると、「組織の人間として、彼の行動はオカシイ」という理屈はどうだろうか?と思うのです。
確かに「上司の命令を部下は聞かなければいけない」と原則を破ったということでは、オカシイのかもしれない。
しかし、組織発足の原点に戻ればどうでしょうか?
組織は、「目的が発生することにより、集まってきた集団である」という原点に戻れば、組織の目的のほうが、上司よりも上という考えになると思うのです。


私は、サラリーマンと一見分かるような人が、「組織の人間とは・・・」などと訳知り顔の姿を見て、世の中、これだから閉塞感が強いんだなと感じました。「上司のほうが、組織目的より上である。」或いは、「私達は上司が言うことが誤っていても従うしかないのだ」という盲目的な組織論に毒されている人達が、こんなに多いんだという驚きです。


盲目的に「組織で働いているのだから、組織の命令は絶対である」という考え方の先にあるのは、腐ったミンチをコロッケに入れた食品製造メーカー等の不祥事を起こす企業になっていくリスクです。


そして、何より「組織の目的より、上司が言えば、それが間違っても従うしかない。隷属するしかない」という理屈で働いていては、ホントにやりがいのある仕事など出来ないと思うのです。

上司の言っている事が、組織の目的と違うと思えば、徹底的に議論をしていく!そんな事が今、求められているのではないでしょうか?上司も、反対意見を聞く度量を持つ。
官房長官外務大臣国交省の大臣は、ホントに官房長官に、「VTRを見せないという事は間違っている」と、クビをかけて議論をしたのだろうか?
国交大臣と、海上保安庁長官は、差し違えるつもりで「VTRを見せないという事は間違っている」と議論をしたのだろうか?
これが一番気になるところです。誰も、本気で「VTRを見せない」という事を議論せずに、「官房長官が言っているから仕方ないや」的な誤った組織論で動いている人達がいるから、このような事態になったのではないでしょうか?

「組織の目的の為に差し違える覚悟」を持った人は、この国には、結局この海上保安官だけしかいなかったか?そこが、私がホントは一番知りたいところです。


もちろん、このような「上司より、組織目的を上に置く」という思考が許されれば、「この国のためと思って、他国に戦闘機でミサイルをぶち込む」という人が出てくるのではないか?というリスクがあることも分かります。だから、「目的」が正しくても、どこまでが許されるかという問題はあるかと思う。

だからこそ、この事件をベースに「自分の会社だったら、どうなのだろう?」という事を真剣に考えることができる、ホントにいい教材になる話だと思う。