明日からのフェスを前に

Ftarri の鈴木です。ftarri doubtmusic festival 明日からですが、19日(日)の出演陣について少し紹介しておこうと思います。

内情を暴露しますと、2日目の19日がいわば Ftarri の日で(ちなみに初日が doubtmusic の日です)、3日目が Ftarri 5組と doubtmusic 4組の合計9組という内訳になってます。2年前にFtarri Festival 東京をスーパー・デラックス(2日間)で、Ftarri Festival 京都をアバンギルド(1日)でおこなったのですが、今回doubtmusic と共同で開くにあたってまず考えたのは、前回出演してもらったミュージシャンと今回新たに出てもらうミュージシャンのバランスをどうするか、ということでした。幸いというか、大友さん、山本さん、今井さんなどは今回doubtmusic の枠で出演するので、その分、Ftarri の枠で別の人たちに出てもらうことが可能になりました。こうして、前回出演者と新たな出演者がだいたい半分ずつとなりました。

もうひとつフェスの企画段階で、どうにかして実現したいと考えたことがありました。今年の春にジョン・ブッチャーとロードリ・デイヴィスのデュオ・アルバム『Carliol』をFtarri からリリースしました。で、折角なので、ジョンとロードリをフェスに呼びたい! このことをJazz & NOW の寺内さんに相談したら、なんとジョンとエディ・プレヴォの日本ツアーを企画するというじゃありませんか! その後もロードリには未練があったのですが、結局経費の点で断念。でも寺内さんのおかげで、ジョンとエディに出てもらえることになってホッとしました。

さて、ここからは出演者の紹介です。19日(日)の一番手、5人編成のHELLLは2年ぐらい前に聴いた時、なぜか60年代末期フラワー・ムーヴメント時代のサイケ調バンド(別にその時代を実体験してるわけじゃないですが)というイメージがすぐに浮かんだのを覚えてます。とてもくつろいでいて、いい雰囲気だなあと一聴して好きになりました。その後、ずっと聴く機会はなかったのですが、つい1ヶ月前ぐらいに再びライヴを目にしましたが、やはりいい雰囲気です。出演を依頼した時には、既に彼らに最初にやってもらおうと決めてました。始まったばかりでまだざわついた場を、包み込むように自然と和ませてくれる気がしたからです。

HELLLの次がHelloというのも出来すぎた話ですが偶然です。Hello は川口貴大をリーダーとし、作曲ものを演奏する3人組のバンドです。川口君はサウンドインスタレーション的な演奏スタイルを取るので、どんなことをやるのか前もって予測するのが難しいタイプの音楽家です。昨年、Ftarri からHello のデビュー・アルバムをリリースしました。その時は山口晋似郎君とのデュオでしたが、その後、神田聡君が入ってトリオになりました。アルバムでは音叉(川口)とギター(山口)で川口君の作曲を演奏してましたが、よく計算された構成とサウンドの美しさがあまりにすばらしかったので、初めて聴いた時、思わず川口君に電話したのを覚えています。彼らには申しわけないけど、こんなすごい作品を作るとは思っていなかったから。フェスではアルバム収録曲の編曲ヴァージョンを演奏するようですが、おそらくかなり趣の違ったものになるんじゃないかと期待してます。

休憩を挟んで第二セットの最初は水谷聖(きよし)さんと畠山地平君のデュオです。これはかなり面白い組み合わせを実現できたなあと、ひとりほくそ笑んでます。水谷さんはかつてメルツバウのメンバーだった方です。爆音を想像しそうになりますが、最近の彼のリリースはいずれも、清々しさに満ちたフィールド・レコーディング作品です。ニュージーランドのレーベルからリリースされた『Yokosawa-iri』というCDを聴いて感銘を受けて、『Improvised Music from Japan 2005』本の付録CDに1曲提供してもらいました。水谷さんと連絡を取ったのはその時が初めてで、今回、出演依頼を再び受諾してもらった時には本当にうれしかったです。ライヴの時の水谷さんはフィードバックを使った音響とのことで、ソロではなく誰かとのデュオをと思ってました。畠山君は近年CDを多くリリースし、海外ツアーも経験している逸材です。何度かラップトップ・ドローンのソロ演奏を聴いて、やはりフェスでは誰かとデュオでと考えましたから、思惑一致です。楽しみです!

佳村萠 / 秋山徹次 / 宇波拓トリオは昨年から活動を始めたばかりで、まだライヴも数少ないです。そのうちの1回を見たのですが、宇波君の一癖ある作曲が奇妙な味を出してますね。このライヴ聴いて、その場で出演を頼みました。佳村さんは2年前のFtarri Festival での杉本拓とのデュオ「さりとて」に続く出演です。

次の梅田哲也君は既に知名度の高いアーティストなので、別に説明いらないかもしれませんね。日用品や自分でちょっとした装置を作って、それらをステージ上のあちこちに置いたり吊したりして、そこからいろいろな音を作ります。なるべく広くステージを使ってほしいので、佳村萠 / 秋山徹次 / 宇波拓トリオの後に、ステージを片づけるのに10分間を取りました。それから30分、彼は何をやってくれるでしょうか。彼の場合、道具や物をステージにセッティングするところからパフォーマンスが始まっているようなところがあって、ステージを動き回る彼の姿を見ているのも楽しいものです。でも生み出す音もすごいですよ。

休憩をはさんで、第三セットは大蔵雅彦スライドホイッスルアンサンブル Active Recovering Music です。数年前、千駄ヶ谷のループラインでオーストリアのグンター・シュナイダー、バーバラ・ロメン、それに確か宇波君も含めた3人だったと思うけど、大蔵君の作曲作品を演奏するのを聴いて、その曲のすばらしさに感動して(もちろん演奏もすごかった)、いつかフェスで大蔵君に作曲ものをやってもらおうと勝手に決めてました。それが実現したわけですが、内容的には全然違うものでしょう。スライドホイッスルとは
どんなものかというと、大蔵君のブログに写真があります。

http://d.hatena.ne.jp/masahikookura/20100210/p1

Active Recovering Music は大蔵君の作曲を演奏するアンサンブルで、これまでに2回ライヴをやってるのですが、メンバーの数が5人から7人に増えていき、今回はついに9人編成です。私はこのアンサンブルをまだ聴いたことがありません。一体どんな演奏をするのか、興味津々です。

次の村山政二朗さんは現在はパリに住んで活動しているパーカッショニストですが、毎年帰国して東京でライヴをおこなってます。まだ聴いたことがない方は、ぜひこのフェスでの演奏を聴き逃しませぬよう。スネア・ドラムとコンタクト・マイクという非常にシンプルな楽器使用なのですが、出てくるサウンドはとてつもなく迫力があり、しかも超個性的! 必聴です!

第三セット最後は山内桂、石川高、齋藤徹の3氏による演奏です。山内さんは大分に住むサックス奏者ですが、海外ツアーも頻繁にこなして精力的に活動してます。石川さんは笙を演奏する雅楽の人ですが、大友さんや宇波君をはじめ、即興演奏シーンにもよく出没します。齋藤さんはコントラバス奏者で、べつに説明は不要でしょう。笙を真ん中にサックスとコントラバスが両隣に配置します。私にとって、齋藤さんの出演はとても感慨深いものがあります。1996年にImprovised Music from Japan というウェブサイトの運営を始めたのが、現在のFtarri へと続く原点なのですが、そこで最初に紹介したミュージシャンが齋藤さんでした。その齋藤さんの出演が決まった時はうれしかっただけでなく、なんだか安堵の気持ちで一杯でした。ま、個人的な話ですが。

ふたたび休憩をはさんで、最後のセットです。ジョンとエディには、フェスでは別々に他のミュージシャンと共演してもらうことに決めましたが、誰と共演するかは最後まで悩みました。でも最終的には落ち着くところに落ち着いたと言えますね。中村としまる(ノーインプット・ミキシング・ボード)、秋山徹次(アコースティック・ギター)両氏の最近の演奏のすばらしさにはとにかく目を見張るものがあります。ふたりはこれまでに何度も共演して、デュオのCDもリリースしたばかり。中村さんとジョンも既に何度かデュオで演奏していて、CDにも名演を残しています。秋山さんとジョンとの共演は初めて。一方、Sachiko M(サインウェイヴ)は2年前のFtarri Festivalではドラマーのマーティン・ブランドルマイヤーとのデュオで出演し、多くの人からフェスで一番の演奏だったと評価されました。そして今回再び、ドラマーのエディ・プレヴォとのデュオです。どちらの組み合わせも名演の予感大です。

3日間の出演者のリストに改めて目を通すと、とてつもないフェスだなあとつくづく思います。これも沼田さんのdoubtmusicと共同で企画できたおかげですね。単に大物ミュージシャンがたくさん出ているというだけじゃなく、即興音楽というジャンルの中にある色々なカテゴリーのかなりの部分を網羅したイヴェントになってます。ですから、1日、2日間といわず、ぜひ3日間通して足を運んでください。既にお気に入りの演奏を目にするだけでなく、新しい発見があること請け負います。三日間通し券の予約まだ間に合います! 本日金曜日の午後6時までです。スーパー・デラックスのサイト http://www.super-deluxe.com/2010/9 から申し込みましょう。

と、最後に売り込みもしたところで、終わりにします。明日からの3日間、スーパー・デラックスでお会いしましょう!!