琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

槇原さんと松本さんと「創作者としての倫理観」


asahi.comでは、こんなふうに書かれています。

 問題となったのは、槇原さんが作詞し、人気デュオ「CHEMISTRY(ケミストリー)」が歌う「約束の場所」の歌詞に出てくる「夢は時間を裏切らない/時間も夢を決して裏切らない」という部分。松本さんは、「999」に出てくる「時間は夢を裏切らない/夢も時間を裏切ってはならない」というせりふの盗作だと主張している。

 証人尋問で槇原さんは、このせりふについて「全く知らなかった」と述べ、「(覚せい剤所持の)事件を起こして以来、仏教を勉強していた。歌詞は『因果応報』の教えを、分かりやすく伝えたものだ」と説明した。

 一方、松本さんは、せりふについて、「座右の銘として公に発表し続けてきた大事な言葉で、傷つけられた思いだ」と述べ、槇原さんに対して「公の場で謝罪してほしい」と訴えた。

YOMIURI ONLINEでは、以下のような記事。

 問題となったのは「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」という歌詞と、「銀河鉄道999」の「時間は夢を裏切らない、夢も時間を裏切ってはならない」というセリフ。

 法廷では、まず槇原さんが尋問に立ち、「問題の歌詞は、仏教の『因果応報』の教えに基づき、『あきらめずに時間をかければ、夢はきっとかなう』というメッセージを込めて自分で考えた。泥棒扱いされて非常に不快」と発言。松本さんの尋問を待たずに、法廷を後にした。

 これに対し、松本さんは「偶然似ることはないし、万一、私の著作を知らなくても頭を下げるのが、創作者としての倫理感だ。一言謝ってくれれば終わりにしようと思ったのに、公式の謝罪がない」と反論した。

 このYOMIURI ONLINEでの松本さんのコメント、事実なんでしょうか?
「万一、私の著作を知らなくても頭を下げるのが、創作者としての倫理感だ」
 ええっ?「偶然似ちゃってすみません」って謝らなくてはいけないの?
「どこかで聞いて、耳に残っていて使っちゃったのかもしれません」くらいなら、ありえる話だとは思うけど……

 こうしてブログとかを書いていると、「これ、僕のネタを真似したんじゃないの?」って思うことってたまにあるんですよ本当に。
 でも、一歩引いて考えてみると、これだけ大勢の人がブログをやっていて、しかも、取り扱っているネタが新聞の社会面に載ってるような話だと、「みんな同じようなことを考えている」のが、むしろ当然なんですよね。
 槇原さんの世代だと、『銀河鉄道999』をテレビや映画で観たりマンガを読んだりしたことがあるほうが自然だと思うし、無意識の記憶に刷り込まれていた可能性は十分あるとは思うんですよ。たしかに「誰でも思いつくような表現じゃない」だろうし。
 でも、「世界で松本さんしか思いつかないような言葉でもない」。
 松本さんの気持ちはわからないでもないんだけど、なんというか、いまの松本さんは、自分を客観視できなくなっているような気がしてなりません。こういうのは、「槇原さんも子供の頃読んで、覚えていてくれたのかもしれないね」とか言っておいたほうが「美しい」と思うのだけれども。こんな話で、『999』を汚してほしくない……

伊坂幸太郎さん、直木賞選考を辞退


伊坂幸太郎さん:ゴールデンスランバー、直木賞選考を辞退(毎日jp)

 今回の直木賞候補作が発表されたときには、『ゴールデンスランバー』は、もう本屋大賞を(山本周五郎賞も)獲ってしまったので「選考外」になったのだろうな、と思ったのですが、伊坂さんのほうから、予備選考の段階で「辞退」されたのだそうです。
 もし今回候補になっていたら、他の作家の顔ぶれからすれば、「そろそろ伊坂さんに……」ということになっていた可能性は高そうな気もします。

同賞の候補作は2日発表された。主催する日本文学振興会によると、候補作を決める予備選考は6月に行われるが、その前に辞退の意向が伊坂さんから文芸春秋の担当編集者を通して伝えられた。同振興会が確認したところ、「作品が論議されることはうれしいが、執筆に専念したいので、今回は予備選考の時点から対象となることを辞退したい」との考えを示したという。伊坂さんは過去5回、同賞候補になっている。

 伊坂さんは新潮社の担当編集者を通じ、「直木賞は他の賞に比べ影響が大きく、候補になるとおだやかな気持ちで執筆できなくなる」と説明している。

御本人のコメントもなんだかちょっと「複雑」な感じで、今回だけなのか、それとも、これからずっと「辞退」していくということなのかは微妙ですが(実際は、一度「辞退」すると次回からは選考対象にならない、という話もあるようですけど)、結果的に、直木賞の「影響力」みたいなのを思い知らされる話になっているようにも思えます。
「有力候補」と言われながら、5回も落選して、毎回「人間が描けてない」とか「老害」な人たちに言われ続けるのは辛いのだろうけど……

個人的には、『ゴールデンスランバー』は、あまりにも「伊坂幸太郎的な『政治色』」が強すぎて、僕はあまり好きな作品じゃないんですけど。本当は『死神の精度』か、『チルドレン』のときに授賞されているべきだったのではないかと。
もしかしたら、もっと早く直木賞を受賞していたら、伊坂さんの作風は少し違ったものになっていたかもしれません。

ゴールデンスランバー

ゴールデンスランバー

↑『ゴールデンスランバー』への僕の感想はこちら。

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