高田崇史 『QED 百人一首の呪』

 高田崇史(たかだ・たかふみ)の『QED 百人一首の呪(しゅ)』(ISBN:4062736071)を読んだ。
 題名にあるように,百人一首をモティーフにとったミステリー。メフィスト賞受賞作である。途中で延々と繰り広げられるトンデモめいた百人一首の読み解きが見どころ――ではあるのだが,殺人事件との関連はするものの連結しているわけではない。それはそれで十分に面白かったのだけれど……。国文学を取り込んだという点から,自ずから北村薫の『六の宮の姫君』が想起されたわけですが,その北村が本作を評して

「水は水,油と油を混ぜるような作業」

と述べているのは,上手い褒め方だと感心しました。
 それより,殺人事件のアリバイに関する部分で《常識》が通用しないというところに釈然としないものがあります。『人形館』以降としては有りだというのは分かるのですが。この部分の伏線処理が,もう少し親切だったらなぁと思うところ。