アルファ・ロメオ 100年の栄光と衰退 その9  ジュリエッタの時代

ジュリエッタはアルファにとって本格的な大量生産が成功したクルマとなる。ところが“MUSEO”では100周年イベント直後でジュリエッタの展示は遠くから見るしかできなかった。残念なり。


“1954 Giulietta Sprint”
直列4気筒 DOHC 1290cc 80ps/6300rpm 最高速165㎞/h

ジュリエッタ・シリーズは、このクーペボディの他に主にセダンとスパイダーのバリエーションによって構成されたが、最初に世に出たのはスポーツモデルのスプリントだったのがアルファらしいところか。フランコ・スカリオーネの傑作と称されるスプリントは、当初はジュリエッタの名前をイメージ・リーダーとして少量生産する計画だったが、あまりにも好評であったため、大量生産に転じたといわれている。
オールアルミDOHCエンジン、4速ミッション*1を介しての最高速165㎞/hという性能は、当時の1300クラス実用車としては驚異的なもの。


この赤いスプリントは、初期モデルの750に対し101と呼ばれるようになったマイナーチェンジ以降のモデルだが、その中でも“Sprint 1300”と呼ばれる最後期のモデル。



“1955 Giulietta”(right)
直列4気筒 DOHC 1290cc 53ps/5200rpm 最高速135㎞/h

サーモン・ピンクがやけに似合う初期型。スプリントとのグリルの違いに注意されたい。エンジンはスプリントの圧縮比を8.5 から7.5 に引下げ、小さなキャブレターで53ps/5200rpmと9.5mkg/3000rpmにデチューンしたものであったが,自重は870kgしかなかったので135km/hと当時としては十分な最高速度をもっていた。58年には同じボディにスプリントの65psエンジンを搭載した最高速155km/hのスーパー・モデルが、ジュリェッタTIの名で発表された。ダッシュに小型ながらタコメーターを備えたこの車は、スポーツ・サルーンのはしりで、ラリーには絶対的な強味をみせていた。
隣のルノー8のような顔つきのアルファは“Tipo 103”。燃費を追及したプロトタイプらしい。



“1957 GIULIETTA SPIDER SPLINT VELOCE”
直列4気筒 DOHC 1290cc 90ps/6000rpm 最高速180㎞/h

ピニン・ファリーナのデザインで生産もピニンで行なわれた。これはスプリント・ヴェローチェと呼ばれるもので、57年に入るとこのスプリントとスパイダーの両車に高性能版のヴェローチェが加えられている。エンジンは圧縮比を9.5 に高め,キャブレターをソレックスから2個のウェバー40DCO3に変えるなどして一挙に90ps/6000rpmと12.0mkg/4500rpmに増強された。同時にラリーなどへの出場を主な目標に計画されたスプリント・ヴェローチェでは,サイド・ウィンドーをプラスティックのスライド式に変え,ボンネットをアルミにし,シート,内張りを簡素化するなどして自重を850kg から730kg へと大巾に軽減した。この結果マキシマムは160km/h からさらに180km/h に向上,1.3ℓ級最速のグラン・トゥーリズモになった。

*1:最初の7300台は、当時の米車の影響を反映しでコラムシフトであった。