バブル再来
バブル再来, 原題はThe Next Great Bubble Boom
将来「何」が「いつ」「いくら」になるという話は読み物としては嫌いではありませんが、資産運用の為にはそういう数字は無視し、著者がそう考えるロジックや発想や知恵を学ぶよう私は心がけています。
著者は今は大きなバブルの中にいて09年に向けダウは4万ドルに向かいその後バブルは崩壊し10年から23年にかけ大不況となる、(ニュースレターで買いシグナルと売りシグナルをだすから購読してね!)、といっていますが、その「いつ」「いくら」を無視するとして...
著者のロジックのベースは(私の理解では)
- 人口年齢分布
- 新技術のS字カーブ
- 経済のサイクル
の3つといえましょう。
人口年齢分布(人口特性)
人間は生まれると、消費しつつ成長し、成長すると消費の他に生産に従事し、結婚し子供ができると子供にカネがかかり、子供が独立するとカネがかからなくなった分をリタイア後の貯蓄に回せるようになり、リタイア後は貯蓄をとりくずし消費する。
経済を乱暴に近似すれば、供給(生産)能力は労働人口に比例するし、需要は人口に左右される。したがって、人口年齢分布をみれば将来の供給能力の動向や、消費量の動向や、貯蓄の増減が予測できる、というわけです。
米国では50歳弱が支出(消費)のピークで、その人口は09年をピークに減少するため、09年に向け経済は強くなるが、その後景気は下落する、と著者は主張しています。
日本の場合は人口のピークのセグメントが支出から貯蓄へ転じたため長く深い不況となった。
世界の各国の人口分布は U.S. Census BureauのInternational Data Base (IDB) にあります。雰囲気を知りたい場合は Population Pyramids をクリック。
新技術のS字カーブ
新しい技術が現れ普及率は10%に達すると急速に普及し、その技術がブームとなり、普及率50%の時点でいったんブームの崩壊が生じ、その後普及率90%に向け新たな成長が続く、というものです。
- 革新段階
- 普及率 10%
- 成長ブーム いろいろな会社が参入する
- 普及率 50% ブームが崩壊し淘汰が生じ、次のリーダーが決まる
- 成熟ブーム シェアを奪い合いしつつ市場は成長し少数の会社が大企業として成長する
- 普及率 90%
モーニングサテライトでおなじみの堀古さんも良く似たことを書いています。
著者によればバブルには3種類あり
- 資産バブル (例:日本の土地)
- 構造不安定バブル --- ある産業が打撃を吸収しきれないとき、例 石油の高騰*1
- ハイテクバブル --- 通常のインセンティブでは創出されないような全く新しいインフラを生み出すために、ビジョンを持った一握りの人々にハイテクバブルが資本を与える。新しいモデルや技術を主導する国や地域に集中的に起きる。
とのこと。ハイテクバブルを生み出す原動力は
- 新技術が経済や社会の基盤を変える全く新しいものであること
- 新技術を応用して利益を得る方法を最初は誰も知らない、多くの企業による実験が起きる
- 巨額の新規投資を必要とする共通インフラを必要とする
- 経済が健全であること、投資をする余裕があること
- インフレ率が低いこと
前回の大規模なハイテクバブルは80年前の自動車で、今回はインターネットやワイヤレスで、00年の急落は1921年の急落と同様の本当のバブルの前段階におけるの普及率50%の調整と、著者は主張。
人口特性にもとづく支出トレンドが上昇し、新技術がS字曲線で主流化するとき景気が加速する。
自由な市場がある米国で多くのハイテクバブルが発生した。日本やヨーロッパは政府の力が強く旧制度が保護される、旧来の利益を守る。
米国のバブルが大きくなる理由
- S字曲線の成長ブーム
- ベビーブーム世代の人口の多さ
- 株式が主流のトレンドになった、投資家の大半が経験不足のときバブルが成長する
- 超長期の強気相場の最後
すべての投資家が参入しそれ以上買い続ける人がいなくなったときバブルは崩壊する。
経済のサイクル
著者によればサイクルの周期は
- 4年 ・・・ 大統領選挙
- 10年 ・・・ 10年代のサイクル、前半の5年は停滞、後半の5年は成長、技術革新による
- 40年 ・・・ 人間の世代交代
- 80年 ・・・ ニューエコノミーが1世代(40年)おきに到来する、前回は自動車、今回はインターネット等
著者によれば、07年から09年or10年にかけ次の大型バブルが来る。その理由は
- ベビーブーム世代*2の支出トレンド 10年〜11年まで上昇
- 技術のS字サイクル 08年後半〜09年にピークに達し減速
- ダウを80.5年ずらすと09年後半にバブルが発生・崩壊
09年後半から12年〜14年まで大不況・弱気相場
更に著者によれば現在は1968年から2048年までの80年サイクルにいて、
- 1968年からの15年間 革新 ベビーブーム世代が大人になり新しいタイプの消費を始める
- 1983年からの15年間 成長ブーム第1期
- 1998年からの10年間 成長ブーム第2期 初期にいったんバブルが成長し破裂、その後最大のブームとなる
- 2008年からの15年間 淘汰 ここで最大のバブルが成長し崩壊。大不況が長く続く
- 2023年からの15年間 成熟ブーム第1期
- 2038年からの10年間 成熟ブーム第2期
とのことですが、
私としては、供給と消費と貯蓄(=投資)のうねりの変化を意識しつつ「確実なことは何も無い」を心がけつつアセットアロケーションを考えていこうと思います。
- 作者: ハリー・S・デント・ジュニア,神田昌典,飯岡美紀
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
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