丸山真男の『日本の思想』(岩波書店・1961)の160ページには、儒教の「五倫」の内、四つまでが縦の関係であり、横の関係は一つしかない、という説が語られている。
この説について私には大いに異論があるのだが、それは今回の本題ではないので割愛する。
筑摩書房の現代日本思想体系の『キリスト教』(1964)を読んでいたところ、そこに収録された小崎弘道の「政教新論」の中に、丸山のこの五倫論に酷似した文章を見つけたのである。なお61ページによると、この「政教新論」は、1884年から連載したものを加筆のうえ1886年に一冊の本として出版したものとの事である。
62ページで小崎は、儒教が統治のために「上下、貴賤、尊卑、治者被治者と厳格なる区別を立て」たとし、そして「この区別の詳細を渉れば、いわく君臣、いわく父子、いわく長幼、かの五倫と称するもののうちただ朋友の一を除くのほかみなこの区別を示さざるはなし。」としている。
つい先程まで私はこれを丸山の独創だと思い込んでいたのだが、約70年前には既に言われていたものであると知った。
そして「丸山」・「五倫」・「朋友」等のキーワードで検索してみたところ、昨日迄の私と同じ様な勘違いをしている人がかなり多い事が判ったので、公益のため個人的な恥をこうして曝す事にしたのである。
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