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米田一基と京極慶吾
やり直して気付いたのは、この二人の水面下での戦いが当初から熾烈を極めていたという事である。
平和な時期だというのに、米田が大神の再登用や旧星組の加入や藤枝かえで副司令の登用といった人員の増加を決めたのは、戦いが起きる前から黒鬼会の蠢動を見抜いていたからであろう。やはり名将である。
この動きを表から妨害するのではなく、人員増加を寧ろ支援して、その流れに紛れて影山サキを送り込んだ京極もまた、名将である。
互いに奥の手として巨大兵器の空中要塞武蔵と空中戦艦ミカサを隠し持っており、これらが対峙した際に互いに相手を内側から破壊するという作戦を思いついたという点でも、二人は表裏一体の存在である。
こうした関係は無印の『サクラ大戦』でも見受けられた。聖魔城とミカサの撃沈が共に確定した際に、山崎真之介が採った行動と米田が採った行動が酷似しており、しかもその最後の一撃が丁度引き分けに終わっていた。
幸福を享受している現在の民衆を守るという保守的な帝国華撃団の正義が、敵から見れば打倒すべき悪であるという事を示唆するには、こうした図式は非常に優れていると思われる。
この二人が互いに相手を誤解していたのは、かなり勿体無かったと思われる。
米田は最終的には魔神器の破壊を追認しているのであるから、京極としては社会的地位を失ってまでも強引な手段で魔神器を奪う必要は無かったかもしれない。しかし京極からは米田は時代遅れの超保守派の老害にしか見えなかったのであろう。
米田の方でも、京極が魔神器を破壊するために奪おうとした際に、その動機を「魔」の側に使わせるためだと完全に誤解していた。
魔を抑圧し続けるだけでは戦いは半永久的に続くであろうし、かといっていきなり人と魔の共生する社会を創るというのも、現状では理想論に過ぎるであろう。米田と京極が互いに相手を認め合った上で話し合いと妥協を重ねていれば、無駄な犠牲を費やさずに「先ずは降魔保護地区の設置から」といった穏健な解決へと向かったかもしれない。
ミイラ男
少年レッドのラジオ番組では、悪役としてミイラ男が出てきた。
史実ではミイラが悪役という発想は1932年公開映画"The Mummy"からであり、さらにはミイラ男がミイラ姿のまま悪役として活躍するというのは1940年公開の"The Mummy's Hand"からの筈である。
何故この世界で悪役としてのミイラ男という発想が早く生まれたかについて、整合性のある設定を色々考えてみた。
行き着いた先は、『サクラ大戦V』と『サクラ大戦 紐育・ニューヨーク』である。『サクラ大戦 紐育・ニューヨーク』では史実と同じ1922年に墓を発掘されて蘇ったツタンカーメンが登場していたし、『サクラ大戦V』ではまだ弱かった頃のツタンカーメンが引き起こしたと思われるミイラの大軍による騒動が語られていた。してみると、1922〜1925年においてもツタンカーメンは少数の弱いミイラを召喚出来た可能性が高い。これが噂になれば、史実よりも早くミイラを悪とする発想が常識化しても不思議ではない。
もしも制作陣が1925年を舞台とする本作でミイラ男を悪役として登場させてしまったのを恥じて、これを自然な形にするために後にツタンカーメンを悪役とする作品を創ったのであれば、その誠実さは実に素晴らしい事である。
忘れられた設定? 「乙女学園」
次世代の花組を養成するために作られた乙女学園だが、この設定は現在ではほぼ忘れ去られている。
原因の一つは、『サクラ大戦3』第五話で開発された携帯型霊力計測器が、僅か一日で北大路花火という逸材を発掘出来た事にあると思われる。
おそらく花組の候補者の集め方は、「噂を頼りに即戦力を探す」→「可能性のある候補者を育てる」→「携帯型霊力計測器を頼りに即戦力を探す」と変化していったのであろう。
また、乙女学園の試みが失敗に終わった事を間接的に教えてくれるのが、『サクラ大戦物語 〜ミステリアス巴里〜』で発覚したパピヨン計画の破綻であろう。このパピヨン計画こそ、ヨーロッパにおける「乙女学園」的な試みであったのであるから。
降魔兵器の材料は?
降魔兵器の材料となった降魔については、京極が内輪に向けて語った台詞では、降魔戦争で回収された死体であった。しかし鬼王が帝国華撃団に語った台詞では、これが一昨年の戦いで捕獲された降魔という事になっている。
因みに米田が聞いていた「噂」の内容は、京極の見解に近い。
鬼王は帝国華撃団を混乱させるために偽情報を流したのであろうか?それとも反魂の術によって蘇った存在であるので、本人の体感時間では降魔戦争が二年前の出来事なのであろうか?
操縦士としての京極慶吾の能力
最終決戦において「情報」で「新皇」のデータを見ると、「操者」である京極の能力が極めて低かった。五行衆最弱の水狐が弱っている時よりも更に弱かった。
しかしこの少し前の金剛の台詞では、京極は金剛よりも遥かに強いとされていた。
原因として一番考えられるのは、口先では強気の京極であったものの、この時点でかなり弱っていたという事である。鬼王戦の直後に京極が全ての法力を使い切って退却する場面があったので、これとの整合も付け易い。
他には「新皇の操縦は余程練習しなければ難しい」や「金剛は京極のハッタリに騙されていた」等の原因が考えられる。
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