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枯れた知識の水平思考 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-10-29

Bダッシュの意味

 というわけで、Bダッシュについてです。



 まず、当たり前の話ですが、Bダッシュってのは、速度を上げるという機能があります。


 ゲームにおいて速度を上げるってことは、難易度が上がるってことです。


 ゆっくり飛んでくる弾と、速く飛んでくる弾、どっちがかわし辛いかっていったら、速いほうです。ゆっくり走る車と、速く走る車、どっちが操作するのが困難かって言ったら、速いほうに決まってます。


 ゲームの難易度っていうのは、単位時間あたりにどれだけの情報を処理するかってことで決まりますので、同じ情報を処理するなら、時間が短ければ短いだけ難易度は上がります。つまり、Bダッシュで、マリオの移動速度を上げるってことは、スーパーマリオというゲームの難易度を上げるってことなんです。


 これが、Bダッシュの持つ機能の一つ、「リアルタイム難易度調整機能」です。一つ一つの障害をじっくり見極め、立ち止まったり、歩いたりしながらプレイすれば、スーパーマリオは難易度が下がりますし、常にBボタン押しっぱなしの、駆け抜けプレイを志向すれば、スーパーマリオというゲームは難易度が跳ね上がります。立ち止まらないってことは、パワーアップのアイテムも取らないってことだからね。


 Bダッシュの持つ機能は、それだけではありません。昨日のエントリでも説明しましたが、横スクロールアクションというゲームジャンルは、プレイヤーに時間的な自由を委ねます。そして、そこに更に、Bダッシュという加速装置が加わることで、よりプレイヤーの時間的自由は広がります。自由に進むこと、自由に止まることに加えて、自由に急ぐこともできるようになったのです。


 ゲームというのは、何度も同じステージを繰り返しプレイしながら、障害を超えていくっていう側面がありますが、強制スクロールのゲームの場合、同じステージを何度プレイしても、同じ時間をかけなければなりません。自分が躓いている部分に何度も同じ時間をかけて辿りつくしかありません。


 しかし、急ぐ自由をユーザーに許可しているマリオというゲームなら、最初はゆっくりゆっくり進んで、ある特定の障害でミスし、再挑戦することになった場合、一度目はゆっくり進んだエリアを、Bダッシュでとっとと駆け抜けてしまうことが可能なんです。


 ゆっくり進む自由と、急ぐ自由を同時に許可しているマリオというゲームは、ライトなユーザーとコアなユーザーの両方に受け入れられ易いゲームであると同時に、ライトなユーザーが、徐々にコアなユーザーへと変貌していく様が実感でき易いゲームでもあるのです。


 かつては、ユーザーの腕前を評価するために「得点」という要素が重要なものとして、扱われていました。しかし、マリオというゲームは、ユーザーの腕前を評価するものとして、「得点」ではなく、ステージクリアにかかる「時間」を提示することで、ユーザーの腕前の差がわかるようになっているのです。かつて下手くそで、ギリギリの時間でステージクリアするのがやっとだった人も、繰り返しのプレイにより、流れるようなBダッシュによる駆け抜けを出来るようになることで縮まったクリア時間の差の中に、自分の腕前の向上が実感できるようになっているのです。


 これがBダッシュの二つ目の機能、「時間的自由を最大限許すことによる、時間という評価軸の導入」です。自分の腕前の示すために、出来る限り短い時間でクリアするというのは、長く遊ぶために知恵を凝らすアーケードゲームとは全く逆の発想ですね。そういう意味でもスーパーマリオブラザーズというゲームはファミコンを象徴するゲームだと思います。



 そしてBダッシュのもつ3つ目の機能、それは、「生理的に気持ちの良い操作感の演出」です。


 この辺の話は、非常に感覚的な話になるんで、具体的に説明するのが難しいんですが、Bダッシュっていう機能は、マリオにおけるジャンプとジャンプの「繋ぎ」に必須の機能だと俺は思うのです。


 横スクロールというシステムと、Bダッシュという走りつづける機能を得ることで、スーパーマリオブラザーズというゲームは、とにかく右へ進めという、一つの「流れ」を得ることになります。そして、そこに、宮本茂がかねてより取り組んできたジャンプという垂直方向に飛び上がる操作を加えることで、マリオというゲームは「リズム」というものの演出にも成功します。


 「流れ」と「リズム」を得ることで、マリオというゲームは淀みなく操作することが、プレイヤーに生理的な快感を感じさせるゲームになることが出来たのです。スーパーマリオの1−1は慣れてしまうと、死ぬのが難しいくらいの簡単な難易度のステージですが、生理的に気持ちの良い操作が出来るように絶妙なコース設計もしてあるため、何度プレイしても飽きないステージになってます。


 んー、なんかこの辺はすごい抽象的な説明になってるな…、でもスーパーマリオブラザーズを何度もプレイしている人はなんとなくわけってもらえるのではないでしょうか?生理的な気持ち良さの導入に成功しているゲームというのは、簡単であること=つまらないことではないのです。むしろ簡単なのに、気持ちよいという、何度聴いても飽きないスタンダードナンバーを聴くような感覚をプレイヤーに提供するのです。


 以上が自分なりに考える、マリオというゲームにおけるBダッシュの持つ機能です。「プレイヤーごとのリアルタイムな難易度調整」、「時間的自由を最大限許すことによる新たな評価軸の導入」、「生理的に気持ちよい操作感覚の演出」、これら3つの機能をたった一つのボタンを押しっぱなしにして、十字キーを操作するだけで得られるんだから、やっぱりBダッシュというアイディアは凄いアイディアだったんだと思います。宮本茂は「アイデアというのは、複数の問題を一気に解決するものである」と語っていたそうですが、Bダッシュはまさしくその通りの機能を果たしていますね。


 スーパーマリオブラザーズというゲームを考える上で重要な要素は、他にも色々あります。ジャンプという機能についても、まだ色々語らねばなりませんし、精妙なステージ設計も欠かすことはできないと思います。そんな中で、今回、Bダッシュという操作にスポットを当てて語ったのは、Bダッシュという操作こそが、絶妙な難易度調整や時間の自由や気持ちよい操作感触という広いユーザーへ訴求するために重要なポイントを押さえる上での要の操作になっていると思ったからです。そして、そのことを考えることこそが、宮本茂という世界中で敬愛されるクリエイターの謎を解き明かす鍵であると自分は考えるからです。


 今回でその謎の全てが解き明かせたとは思いません。未だに考え続けています。この記事で、少しでもマリオというゲームの奥深さや宮本茂という人物に興味を持って頂けたら幸いです。それでは、次回「ゼルダの謎」にてお会いしましょう。さようなら。

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TobishimaTobishima 2008/11/03 18:52  ダッシュは断然レバー2回入れ派です。これの問題点は、当然発動までにタイムラグがあることと、ちょっと進んでしまうので目測が狂う、なんてところがありますが、ボタンが一つ多くなる欠点はありません。
 意外とボタンでダッシュするゲームって、スーパーマリオ以外にヒットってないんじゃないかと思います。
 ちなみに、サイバーボッツはブーストボタンでもレバー二回入れでもダッシュ可能。まぁ蘊蓄ですが。

 ショートカットという意味では、土管も素晴らしい発明でしたね。

hamatsuhamatsu 2008/11/03 21:55 セーブが出来ない当時の状況で、出来る限り奥行きのある世界を表現し、かつ一日でもクリア出来るという矛盾した状況を克服するために、Bダッシュや、ドカン、ワープゾーンみたいなアイディアが出てきたのかなあと自分なりに考えています。

MorisanMorisan 2008/11/04 20:37 >Tobishimaさん
スーパーマリオの設計思想からすれば、レバー入れ2回のダッシュはあり得ません。レバー入れ2回のダッシュをしなかったからこそ、広い層にヒットしたと言ってもいいくらいです。

loderunloderun 2008/11/04 21:30 横レスで申し訳ないのですが、Morisanさんの「スーパーマリオの設計思想からすれば、レバー入れダッシュはあり得ない」との主張には違和感を感じます。
まず大前提として、85年当時のアクションゲームでは「ダッシュ(走る)」という動作は決してポピュラーなものではありません。むしろ等速移動が基本でした。
第二に、「ボタンでダッシュする」というシステム自体、直感的ではありません。例えばスーマリ以前の作品としては、Williamsの「ジャウスト」やatariの「Major Havoc」はレバー入れっぱなしで素早く走ります。

私としては、「何故、ダッシュをボタン操作にしたのか?」という疑問に対して、「レバー操作はあり得ない」との一言で済ますべきではないと考えます。

hamatsuhamatsu 2008/11/04 23:30 さらに横レスで失礼します。なぜマリオはBボタンでダッシュしたのかについては、
自分なりに考えるところがあるので、新しく記事を書きます。

hamatsuhamatsu 2008/11/05 01:03 記事の補足としてコメントしとくと、レバー二回入力ダッシュはあり得ませんが、レバー入れっぱなしダッシュという可能性は有りだと思っています。

つーかレバー(キー)入れっぱなしダッシュで世界的にヒットしたのが、ソニックですね。

imo758imo758 2008/11/05 05:43 >ゲームにおいて速度を上げるってことは、難易度が上がるってことです
基本的には仰る通りですが、常にそうだとは限りません。
速度が速いほうがかえって簡単になることもある、と釘を刺させていただきます。

hamatsuhamatsu 2008/11/05 07:59 そうですね。そういう場合もありますね。
戦え!応援団というゲームでも超絶難易度を楽勝でクリアできるようになってから
最初のステージやったりすると、「待ち」の時間が多すぎて返ってミスしたりしますし。

nanenane 2008/11/06 15:44 ゆっくりでもGBの画面を埋め尽くしそうな位の戦艦なら避け辛い