虹をつかむ男

1996年作品
監督 山田洋次 出演 西田敏行、田中裕子
(あらすじ)
白銀活男(西田敏行)は徳島県の片田舎にある映画館オデオン座の経営者。無類の映画好きである彼は、古今東西の名画の数々を一人でも多くの人々に見てもらうことに情熱を燃やしていたが、映画産業の衰退の影響を受け、オデオン座の経営は決して楽ではなかった。そんな彼の心の支えは、大好きな映画と幼なじみの未亡人八重子(田中裕子)の存在であった….


山田洋次見直しシリーズの第3弾は、恐れ多くもダニー・ケイ主演の「虹を掴む男(1947年)」と同じ題名の「虹をつかむ男」。

観る前は、過去の映画の中から選りすぐった名場面の数々を出演者がパロディで演じてみせるのかなぁ?とちょっと期待していたのだが、大ハズレ。映画館が舞台ということで「ニューシネマパラダイス(1989年)」から「男はつらいよ(1969年)」まで、なんと実際の映画のワンシーンがそのまんま流されるんだよね。(唯一、「雨に唄えば(1952年)」のあの有名なシーンを西田敏行が演じるところはあったけど。)
ほとんど昔観た映画ばかりだったけど、活ちゃんが引用されているシーンの前後関係を解説してくれるので、観たことのない人でもちゃんと理解できるようになっているのはとても親切(?)。

でもね、残念ながら、肝心の名作のワンシーンが、(「野菊の如き君なりき(1955年)」を除き)この作品のストーリー展開というか、テーマを語る上であまり活かされていないんだよね。せっかく映写技師役に田中邦衛をもってきたんだから、「ニューシネマパラダイス」に絡んだエピソードの一つでも入れとけば良かったのになぁ。それと、映画という「夢の世界」を題材にしながら、何故活ちゃんが八重さんにフラれるという妙に現実的な結末を採用したのか、俺には理解できませんでした。

主演の西田敏行のウソくさい芝居は、こういった作品ではちょっとスベリ気味。彼はもっと乾いた感じの作品のほうが向いていると思われ、松竹が「寅さん」の後釜として、この作品を見限り、「釣りバカ」を採用したことは、その意味では正解だったと思う。