半熟三昧(本とか音楽とか)

半熟ドクター(とはいえ気がつくと医師20年選手だけど)の読んだ本とか音楽とか

ミクシィアプリ「脳力大学―漢字テストについて」

 ミクシィにアプリが出てから、どいつもこいつも(俺も)、単独だったら遊びもしねえようなどうでもいいようなゲームに熱を上げやがって、職場の生産性が下がってしようがないのです。特に自分よりも年上のええ年した人達が「サン牧」などをやっているのを見ると、涙を禁じ得ないのであります。

 それはさておき、「脳力大学−漢字テスト」というのがありますな。(右図)
http://social.drecom.co.jp/yomi


 もと進学校出身の私はこういうのに弱くて、まあ、「平成教育委員会」でいうところの辰巳琢郎病なわけですけれども、コツコツとやっております。
 この漢字テスト、通常モードの「連続正解モード(ま、いうなればアーケードモード、みたいなもんだと思ってもらったら幸い)」なら、別にいつまでも延々やっていればいいのですが、ジャンル別モードというのが10月の半ばに導入されまして、その際に、チケットという制度も導入されました。

 「ジャンル別」というのは、いわゆる漢字クイズにおけるジャンル、たとえば「食品」とか「魚介類」とか「外国の地名」とか、そういうまとめごとの問題をクリアーするとメダルが得られる。メダルが増えると、またジャンルが増えたり、上級に挑戦出来たりする。 50問中連続30問*1回答したらクリアーだと、そういう趣向。ま、ロールプレイングゲーム的な要素が取り入れられたわけですよ。

 ジャンル別に挑戦するのには、ペリカ、もとい、チケットを一枚消費するわけです。間違えるとチケットは没収。チケットはマイミクを招待したり(マルチだよねこれ)、毎日ログインするたびにちょこっともらったりで増やしていくわけですが、正直あまり増えません。

 最初プレイした時には、50問中、30問答えたらOKなら、まあ、正答率6割でOKってことで、割と楽勝なのかなーと漫然と考えていましたが、実はそうではない。結構回答できているのにな、と思うシチュエーションにおいてさえ、チケットを5-10枚消費してしまい、予定外の出費に焦る、ということがなんどかあったので、クリアーするのにチケットがどれくらい必要なのか、ということを考えてみました。

*1:実は上級だとプール問題100問らしい

ジャンル別テストの前提

  • それぞれのジャンルについて50問が出題される
  • 50問は、毎回シャッフルされるが、問題そのものは不変。
  • チャレンジする毎にチケット一枚を消費する
  • 一問でも間違えるとその場でアウト
  • 50問中30問まで正解すると、そのジャンルのレベルのメダルが賞として与えられる

ジャンル内の問題50問の中で、自分が何問答えられ、何問がわからないか、というのは終わってみるまでわからないわけですが、かりに50問中n問が答えられないとしましょうか。
この場合に、
一回チャレンジして クリアできる確率を f(n)とします。

f(n)の算出

まずf(0)、つまり すべてわかっている場合は、当然クリアーの確率は100%、1。

f(1)、つまり50問あり、わからない問題が1問ある場合のクリアの確率はどうでしょうか?

 漠然と、8割くらいはあるのかな?と思っていま-したが、よく考えたら、そんなに高くない。
 問題をシャッフルして、このわからない問題が 1-30問目にあれば、アウトなのである。41-50問目にくるよりも、当然ながら多い。
 従って、f(1)は 20/50= 0.4
 実は、そのジャンルの50問中1問わからないだけで、 クリアの確率が100%から40%になってしまうのです。
 これは、予想外に厳しい。

 問題を単純化*1すると、この計算は、

「わかる問題を白玉、わからない問題を赤玉として、計50個の玉をランダムに並べて、
 50個の玉のならびの1-30個目まで、すべて白玉が並んだ状態」

 と言い換えることが出来るわけ。

f(2)はどうだろうか?
 2個の赤玉、48個の白玉がある。
 50個並べる場合、すべての順列組み合わせは 50C2=50*49/2 とおり。
 条件を満たすのは、前半にすべて白玉が30個ならび、のこり20個のスペースに赤玉2個が配置されている状態であるので、
 20C2 =20*19/2通り。
 従って、
f(2) = (20*19/2) / (50*49/2) =0.15 (約 15%)

 15%になります。

 続けて、このように考えていくと

f(n) = 20/50 * 19/49 * 18/48 …… * (20-n)/(50-n) と表される

  (うーん、こういう数式って、Σじゃなくて何使うんだったっけ? Πだっけ?)

20個以上わからない場合は、いうまでもなく、f()はゼロである。当然だよね。

 この数式からわかるように、累乗していくので、確率は劇的に下がってゆく。例えば、f(5)は 0.7%。

 50問中 5問わからないだけで、クリアする確率は0.7%になってしまうのだ。

*1:というか、受験数学化、ということか

クリアできるまでに消費するチケットの枚数(期待値)は?

 必要なチケットの枚数を仮にT(n)としてみましょう。

 T(0)は、すべての問題に答えられる状態なので、1枚使って必ずクリア。つまりT(0)は1。

 では、T(1)、一問わからない場合はどうか?
 先ほどのf(1) = 0.4なので 40%の確率で 1枚クリア。
 では、一回試行して不正解だったらどうなるかというと、チケット一枚を使って、正解を知ることが出来る。
 つまり n=0の状態に遷移する。この場合、次で必ずクリアできる。

 もちろん、この計算は間違えた答えは、二度と間違わない、ということを前提としています。実際僕もプレイする時は、途中から間違えた単語はノートに書いて、二度とは間違わないようにしました。

 つまり T(1) = 0.4 x 1 (一発クリア) + (1-0.4) x 2 (再チャレンジでクリア)= 1.6 枚 ということになります。
 もうすこしまとめると
 T(1) = f(1)x 0 + (1 - f(1)) x T(0) + 1 となる。

 つまり、

 T(n) = (1-f(n))xT(n-1) + 1 とあらわされるわけです。

 これを計算すると、

 まあ、期待値と、50問中、知らない単語の個数はほとんど変わらなくなります。
 つまり、クリアとコンプリートにはほとんど差はなくなってしまう。

付表


n

f(n)

T(n)

0

100.0%

1.0

1

40.0%

1.6

2

15.5%

2.4

3

5.8%

3.2

4

2.1%

4.1

5

0.7%

5.1

6

0.2%

6.1

7

0.1%

7.1

8

0.0%

8.1

9

0.0%

9.1

10

0.0%

10.1

11

0.0%

11.1

12

0.0%

12.1

13

0.0%

13.1

14

0.0%

14.1

15

0.0%

15.1

16

0.0%

16.1

17

0.0%

17.1

18

0.0%

18.1

19

0.0%

19.1

20

0.0%

20.1

まとめ

 うだうだ計算してきましたが、要するに

  1. 50問中30問でクリア、というと6割程度できればOKか、と思わせておいて、クリアできるかどうかの分水嶺は 50問中知らない問題が1問か2問というところである。
  2. したがって、クリア(50問中30問)とコンプリート(50問中50問)との間に大きな差はない。
  3. かりに、間違えた単語は二度と間違わない、という条件のもとでさえ、n個わからなければ、クリアするのに、チケットはn枚必要になる。逆にそのジャンルをクリアするのに使用したチケットの枚数は、わからなかった問題の個数にほぼ等しい(nが5以上であれば、ほぼ間違いない)

 うーん、予想外だった…

 結論3に関しては、実は論理の飛躍がありまして、期待値っつーのははともかく平均にすぎないわけで、90%信頼区間をだす必要がありますが、数式の性格上、nが増えるほど分布は収斂していくはずです。

 個人的には現在のチケット制導入直後はともかく、ゲームバランスとしては、今後チケットの供給はもう少し増やしてもいいと思う。
 マイミク招待によるボーナスは20枚とでかいのだけれども、生命保険の外交員初年、みたいなもので、永続的に供給できるものでもないからだ。なんだか『カイジ』の限定じゃんけん、のような話だが、Mixiアプリの大方は今後数ヶ月以内にマイミク紹介によるインセンティブを調整しないと、ほとんどのゲーム系アプリのゲームバランスは破綻するだろうと思われる。このような「一人遊び系」のゲームでさえもだ。