明日の広告

『明日の広告』(佐藤 尚之著)
明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法 (アスキー新書 045) (アスキー新書 45) 780円 240p 1.10.2008


Information
「消費者」なんてもう古い
消費者というコトバはもう古い(わかりやすさのために本書では使われていますが)。
もはや、「消費するだけのもの」ではないからです。
「生活者」 「ユーザー」 「オーディエンス」といった言い方が現代的なようです。


ネットで商品はスッピンに
著者は、ネットを「ラーの鏡」に例えています。
ネットの開放により商品は、そのままの姿を晒されることになります。
商品をその商品以上に見せるように工夫を凝らしてきた広告は、変わらなければなりませんね。
決して悲観的になっていないという点で、稀有な本書ですが現状維持を推奨しているわけではありません。
また、ネットを使ったプローモーションにより通例の広告よりも「深いexperienceを与えることができる」としています。


これからの広告媒体は、ネットに限らず 先入観なくニュートラルに選んでコミュニケーションの真ん中に据えるべきだと指摘されています。
本書では、「NIKE+」が例に挙がっていますが 「広告とコンテンツのシームレス化」というのも重要な点ですね。
コンテンツにしても、2種類あります。
1.プッシュ型コンテンツ ―消費者に一方的に送り出すコンテンツのこと
2.プル型コンテンツ   ―消費者がわざわざ探して見に来たくなるようなコンテンツ
著者の設計する「プル型コンテンツ」は大変魅力的です。
スラムダンク1億冊突破キャンペーンを実現したのも著者のチームです。


キャンペーンの組み立て
上記のキャンペーンから学んだこととして著者は、以下のことをあげています。
・初動に時間をかける
・自分たちが「伝えたい相手」になってみること
・商品は消費者のものであるという発想
・相手が一番望んでいることをするという考え方
・伝えたい相手にだけ伝えるというスタンス
・相手を巻きこみ、参加してもらうことの大切さ
・コミュニケーション・デザインをやりぬく というのは実はすごく大変であること


他には、
・広告は「消費者が予期せぬ時に偶然を装って現れ 出会うもの」だった。
・ヴィジュアルや、コピーの面白さだけではなく 仕組みそのものが、クリエイティブジャンプになる。
・商品設計にコミュニケーション設計を内包させる。
といった話がありました。


About author
佐藤 尚之
広告会社勤務
CMプランナー、ウェブ・プランナーなどを経て、
現在 コミュニケーション・デザインを主たる領域とするクリエイティブ・ディレクター
JIAAなど受賞多数
また、「さとなお」のペンネームで著書多数
著書 『人生ピロピロ』 『沖縄やぎ地獄』など
HP www.さとなお.com(さなメモ)


Contents
はじめに −「なんだか小難しい時代になっちゃったな」とお嘆きの貴方に
【1 消費者へのラブレターの渡し方】 −広告という名の「口説き」の構造
   広告は消費者へのラブレター
   ラブレターを普通に受け取ってくれていた時代は楽だった
   いまやラブレターを受け取ってくれすらしない
   モテない人はどうやってラブレターを渡せばいいのか
   もっと相手をよく知り、しっかりと手渡しする
   ラブレターは渡した後も大事
   購入後にこそ、ブランド・イメージができる
   軽い付き合いと重い付き合い
   自己変革でモテを目指す
   ラブレター職人で本当に満足している?
【2 広告はこんなにモテなくなった】 −変化した消費者と広告の20年
   広告がモテていた古き良き時代
   CMという「部品」への疑問
   インターネットの出現
   消費者の逆襲としてのインターネット
   ヨコでつながり、ボトムアップする
   ネットとは、商品の真の姿を映し出す「ラーの鏡
   ネットの出現+情報洪水+成熟市場
   疑い深い消費者の登場
   もう消費者はお茶の間にじっとしていない
   「友達・好きな人・信頼できる人」という強力なメディア
   消費者の発信が世の中を変え始めた
   広告は素人投稿ビデオに勝てるか
   受け手から送り手へ。ターゲットからパートナーへ
   消費者は変わった。広告も変わらないと!
【3 変化した消費者を待ち伏せる7つの方法】 −彼らと偶然を装って出会うために
   気まぐれにメディアを渡り歩く消費者をどこで待ち伏せるか
   1.消費者のコンタクト・ポイントで待ち伏せ
   2.新しいメディアを創って待ち伏せ
   3.口コミを利用して待ち伏せ
   4.CGM待ち伏せ
   5.エンターテイメントの中で待ち伏せ
   6.検索結果で待ち伏せ
   7.メディアをニュートラルに考えてクロスに待ち伏せ
   これらすべてを使ってコミュニケーション・デザインする
【4 消費者をもっとよく見る】 −コミュニケーション・デザインの初動
   その人のことをきちんと知ろうと眼を凝らし、耳を澄ます
   消費者本位という視点
   「伝えてもらいたがっいる人」のことをリアルに想像する
   あるクルマの話
   初動で徹底的に消費者を分析すること
   F1M1なんて消費者はいない
   高校生=モバイル?
   買いたい人を作り出してしまう
【5 とことん消費者本位に考える】 −スラムダンク一億冊キャンペーンより
   スラムダンク一億冊キャンペーン
   それはこんなオリエンから始まった
   星野仙一阪神優勝感謝広告」との違い
   「ありがとう」を伝える相手に目を凝らし、耳を澄ます
   もうスラムダンクは井上さんのものではなく、彼らのものだ
   キャンペーンは自然とメディア・ニュートラルになっていた
   めちゃめちゃ閉じた新聞広告
   めちゃめちゃ不親切なウェブサイト
   めちゃめちゃ限定して告知したイベント
   伝えたい相手のをとことん理解した少人数が最後までやる
   「広く伝えること」と「深く伝えること」
   このキャンペーンから学んだこと
【6 クリエイティブの重要性】 −商品丸裸時代とネオ茶の間の出現
   それは広告ではなく、インフォメーション
   圧倒的に不利な二番手が一番手をひっくり返す
   クレバーな仕組みの上にフールなクリエイティブを載せる
   クリエイティブ・ジャンプの余地を残してデザインする
   商品丸裸時代にイメージ広告は通用しにくくなる
   商品丸裸時代のクリエイティブ
   コミュニケーションデザインは、既存マスメディアをもう一度魅力的にする
   ネットも動画の時代に入り、テレビの力は再認識される
   お茶の間が消滅し、テレビの力が弱まった
   新しいお茶の間「ネオ茶の間」の出現
   ネオ茶の間により、テレビはまた人気者になる
   ネオ茶の間では、CMもそんなにスキップされなくなる
   若いクリエイターには大チャンスの時代
【7 全ては消費者のために】 −消費者本位なチーム作り
   で、で、どうすれば・・・・?
   ある営業さんの一枚のシート
   仕事の進め方は「消費者の変化」似合わせて変化する
   消費者本位に考えてチーム編成する
   コミュニケーション・デザインを学ぶ方法
   どんどん領域侵犯しよう
   より長期的に消費者とつきあっていく
   大切なのは「消費者本位」ただひとつ
   企業ソリューションから消費者のソリューションへ
【おしまいに】 −楽しくエキサイティングな時代なのだ


体制を大きく変えるのは困難が伴いますが、上手く調整するだけでコミュニケーション・デザインができると指摘しています。
コミュニケーション・デザイナーという職業について知るにも良い一冊ですね。 (私は知りませんでした