東大教師が新入生にすすめる本2008

毎年恒例であるが、結構楽しみにしてます。今日郵送でUP4月号が届いてたので早速見てみました。18名の先生方が、

  1. 私の読書から−印象に残っている本
  2. これだけは読んでおこう−研究者の立場から
  3. 私がすすめる東京大学出版会の本
  4. 私の著書

の4つの設問について答えています。

最初の設問であげられている本の中で、自分が知らなくて(or未読で)読んでみたいなと思った本を以下メモしておきます。

  • 数理科学研究科の斎藤毅教授

楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)

楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)

大正から敗戦までの時の流れを、著者の一族をモデルに描いた長編小説です。何年かに一度読み返しますが、そのたびに違った面を見せてくれます。

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

科学哲学の冒険 サイエンスの目的と方法をさぐる (NHKブックス)

心という不確かなものを「科学的」に扱おうとする心理学に携わっていると、どうしても「科学とは?」「理論とは?」「何のために研究をするのか?」という問いに突き当たる。もっとも、この問いは学問に携わるすべての人にかかわる、一度は真正面から取り組むべき問いであろう。その作業を助ける書として、また、科学哲学が何者かを知るための入門書としておすすめの書。

  • 総合文化研究科の村上郁也准教授

残像に口紅を (中公文庫)

残像に口紅を (中公文庫)

軽薄SFで爆発的人気作家の一時代を極めた作者が、次第に作風を実験的なものに以降させ、筒井文体を保ちつつ難解なメタフィクションばかり書くようになった、その中でも際立つ里程標といえる長編。世界から「音」がひとつずつ失われてゆく中で、主人公(作中人物にして本小説執筆者でもある)の日常が描写される。この小説を入り口として、ポストモダン文学や言語愛好にはまりこんでいくのもよし。

  • 人文社会系研究科の下田正弘教授

他人の顔 (新潮文庫)

他人の顔 (新潮文庫)

レヴィナスなぞ知らない私にも、やさしく哲学をさせてくれました。読み進める途上、虚数を自乗したかのように、ふと仮面の自分が消えてしまう地点があり、狼狽します。偶像を破壊する宗教と、御影としてすがた全体を写しとらせる宗教とが、同じできごとを根底にかかえているように思いました。

ちなみに経済学研究科の藤原(奥野)正寛教授が設問2に答えられている中のうちの1冊に、自分もおそらくあげるであろう本を取り上げていたので、こちらも引用させて頂きます。

システムの科学

システムの科学

  • 作者: ハーバート・A.サイモン,稲葉元吉,吉原英樹
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社会には、コンピュータや自動車など人工物が満ち溢れている。市場もまた人間が作った人工物に他ならない。人間は、人工物との協力で複雑性妙な社会システムを作り上げているのである。人間にはどんな限界があり、どうして人工物が必要とされるのか、経済学や経営学にとっても本質的なこの問題を、わかりやすく面白く解説してくれる。