この支出からの卒業

Jeffrey Frankelらが、「景気循環的な財政支出からの卒業」と題した論文を書き(原題は「On graduation from procyclicality」)、その内容をvoxeuで紹介しているEconomist's View経由)。論文の主旨は単純で、発展途上国は、景気拡大局面で税収が増加するのでそれに応じて財政支出を増やすという政策を採りがちであるが、成熟するにつれ、むしろ反景気循環的な財政政策を取るようになる、というものである。


論文の内容は次の図に集約される。

横軸は1960-1999年における財政支出GDPとの相関(ただしHPフィルタを用いて景気循環部分を抽出している)、縦軸は2000-2009年における相関である。反景気循環的な財政政策を取っていればこの相関はマイナスになる。従って、左下の第3象限に位置する国は、一貫して先進国型の財政政策を取っていたことになる。それに対し、左上の第2象限は以前は先進国型だったがその後途上国型に逆戻りしてしまった国、右下の第4象限は途上国型を卒業して先進国型の仲間入りをした国、そして右上の第1象限はずっと途上国型に留まっている国を意味している。


元の論文では、どのデータポイントがどの国に対応するかの注記があまり付与されていないので、ここでは、両期間の相関係数の棒グラフを見ながら、国名の注記を若干追加してみた。日本は第3象限に属しており、スペインに近いところに位置している。その他の主要先進国もここに入っている。ただ、先進国以外でイエメンも入っているのが目を惹く。


その一方で、フランスやスイスやスウェーデンギリシャと並んで出戻り国になっているのがやや意外である。また、ドイツが卒業国になっているのもやはり意外と言える。ノルウェーボリビアも卒業国であるが、両国の現在の反相関度は米国に次いで高い。


BRICsのうちロシアは分析対象外で、ブラジルは卒業国、中国とインドは途上国型に分類されている。先進国の中ではニュージーランドポルトガルの二ヶ国が途上国型に分類されている。


こうした指標がどこまで参考になるかは未知数の部分も多いが、興味深い分析と言えるだろう。