法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』大あばれ、手作り巨大ロボ

スネ夫のいとこスネ吉が作った「グランロボ」*1でいじめられたのび太が、対抗して巨大ロボットの秘密道具「タイタニックロボ」を組み立てる……
プラモデルのような組み立ての楽しさ、巨大ロボットの快楽を率直に描写した、子供心くすぐる原作をアニメ化。


コンテ演出は寺本幸代が担当。
ロボットを下から見上げる構図を多用したり、機体表面で固まっていた雪が起動とともにはがれたり、遮蔽物を手前に配置して奥行きを演出したり、人間とロボットを同じ画面に入れたり、いちいち手間をかけて巨大感を出す演出が嬉しい*2。脚本の仕事かもしれないが、買い物のため街中に巨大ロボットが登場する場面が付け加えられていたのも良かった。
ただし、演出の要求に作画が応えきれていないカットも散見された……正直、タイタニックロボの顔作画がカッコワルイ。ロボットの作画に慣れたアニメーターが足りないのか。


物語は、タイタニックロボを道具扱いしていた原作と異なり、感情移入できる対象として描いている。原作では組み立て時のミスという理由づけだったタイタニックロボ暴走を、あたかも正義の心を持ったかのようにのび太は感情移入する……
しかし、お涙頂戴ではあっても、押しつけがましくはない。タイタニックロボが意識を持った可能性をあえてロボットのドラえもんに否定させたり、涙すら見せない抑制した演出で結末を描いたり、描写は抑制されている。もともとタイタニックロボ自体が表情のない、しゃべらないロボットであることも、過剰な泣かせにならず、効を奏していた。
また、タイタニックロボがグランロボをふみつぶす場面で、ドラえもんの存在をからめている脚本も地味に巧い。やや原作では説明不足だったドラえもん不在の理由を示しつつ、タイタニックロボ登場の爽快感が増していた。

*1:無線操縦で二足歩行およびパンチやキックを行える、子供と等身大のロボット。まるで未来技術が使われたかのような高度なロボットだが、二足歩行が競技ルールで必須になった2008年度の高専ロボコンを見ていると、高専生でも現在の技術で制作不可能ではないとわかる。しかしアニメオリジナル描写の、追尾し続けるミサイルパンチは、さすがにオーパーツか。

*2:一般のロボットアニメでは、視聴者に印象づけるまでは巨大感を演出していても、途中から手を抜くことが多い。巨大ロボットという記号として受け入れてもらって省力しないと、制作の手間がかかるばかりだからだろう。