10/20 スパークス"SPARKS Show in Tokyo"@Shibuya O-EAST

ついに見ることができたスパークスのライヴ。最高の一言でした。なにしろ“天国一のヒットソング”「No.1 song in heaven」*1を持つバンドによる“地上最高のショー”「The greatest show on earth」*2なのですから!


開場が遅れ1時間押しでO-EASTに入場。フロア中央からやや左で、一段高い位置にある鉄柵の前にポジションを取りました。なにせ4時間以上スタンディングですからもたれるものがないとツライのですよ。ステージ向って右手ではジム・オルーク+五木田智央による「天使と恍惚」がDJをプレイ。ジェントル・ジャイアントやサディスティック・ミカ・バンド「マダマダ・サンバ」なども流れたユニークな選曲でした。


しばらくまったりとしているうちに、ようやくフロント・アクト第1弾、捏造と贋作の演奏がスタート。彼らの演奏を聴くのは初めてだったので楽しみにしていたバンドです。上野耕路松永孝義をはじめ、ホーン・セクションの4人や色っぽいダンスを披露したダンサーも含む大所帯のバンドによる分厚いサウンドにのせて、久保田慎吾が演劇色豊かなステージ・アクションとヴォーカルを聴かせてくれました。グラム・ロック的な響きに絡む上野のアヴァンギャルドなシンセ、そして久保田の芝居っ気たっぷりの歌が交わる世界は「初期ロキシー・ミュージック meets あがた森魚」といった趣があってなかなか楽しかったです。ただ、スパークスのファンが多くを占めるこの会場ではせっかくの熱演もやや空回り気味だったように思えました。アウェイの悲しさですね。久保田自身もそれを感じとったようなコメントをしていましたが、私は気に入りましたよ。新作買おうかな。


フロント・アクト第2弾はヴォーカルに何と野宮真貴を迎えた新生スパンクハッピー。とはいえ、菊地成孔によるとスパンクハッピーは明日の京都公演にて封印されるそうなので、これがラスト・ステージということになります。太いダンス・ビートによる「Fame」のカヴァーでスタートした彼らのステージ。途中振りを間違えたり、香水を吹きかけたりする菊地の動きが面白い。野宮真貴は相変わらずゴージャスでお洒落でクールでした。過去のレパートリーの再演に終始するかと思いきや、中盤で「トゥイギー・トゥイギー」のカヴァーが!そして間髪入れずにスパークス「When I'm with you」のカヴァーへとつながる新趣向がうれしかったです。


これは私の勝手な思い込みであることは承知なのですが、グラム・ロックを彷彿とさせたバンド・サウンドの捏造と贋作が70年代スパークスのオマージュと捉えるならば、完全打ち込みのスパンクハッピーは80年代スパークスのオマージュといえるのではないでしょうか?そんな妄想を頭の中で転がしているうちに、いよいよ現在を生きるバンドとしてのスパークスが登場です。ステージ向って左に置かれたロン・メイルのキーボードにはもちろん“Ronald”のロゴが。それを見ただけでぐっとテンションが上がってきました。
全体は2部構成で、まずは最新作『Hello young lovers』を全曲演奏。ステージ中央にスクリーンが配置され、そこに曲のイメージに併せた映像が流れていきます。しかし、ただ画像を流しているだけではなくて、そこに彼らも絡んでいくところがスパークスのユニークなところ。ロン・メイルがキーボードを離れてスクリーンに向うだけでもう微笑みを押え切れなかった私ですが、スクリーン上の自分とケンカしたり、パイプ・オルガンの画像に向ってエア・キーボード(?)を弾いたりと様々なアクションを見せてくれました。なんとギターを持ってアクションする場面もあり、びっくりするくらいロン兄大活躍。もちろんラッセル・メイルのパフォーマンスも完璧だったことはいうまでもありません。


しばらく休憩を取った後第2部へ。休憩の間は「天使と恍惚」がDJをしていたのですが、開始直前にジュディ・シル「The Kiss」が流れてきたのにはぶっとびました。ジム・オルーク恐るべし・・・。


さあ、スパーク・ショーのテーマが流れてロン・メイルが登場してきました。DVDでしか見たことがなかったコミカルな振り付けが生で見られて感激。そしてその後は怒涛の名曲連発で興奮しっぱなしでした。バンド・サウンドなので70年代の曲がぴったりハマリます。私が「やって欲しい曲」としてmixiのコミュでリクエストした「Achoo」からスタートしたのですからもうたまりません。精力的にステージを駆け回り、飛び回るラッセル・メイルのパフォーマンスは驚異的。声もよく出ていました。そしてバスター・キートンばりのポーカーフェイスで黙々とキーボードに向うロン・メイルとの対照の妙。これまで何十回となく聴いた曲が次から次へと登場するので長時間のスタンディングによる疲れもふっとび、柄にもなく手を振り、飛び跳ね、歌っていました。「Amateur hour」で本編終了。時間も押してるしここまでかな・・・と思ったのですが実に4曲もアンコール・ナンバーを披露してくれました。しかも最後の2曲はサポート・メンバーは退場し、ロンの淡々としたキーボードの伴奏とラッセルのヴォーカルだけでしっとりと歌ってくれたのです。凝ったアレンジが取り払われたことで元々の曲の良さとラッセルの歌のうまさがくっきりと浮き彫りになり、感動で涙が溢れてきました。


こうして“地上最高のショー”は幕を閉じたのです。素晴らしい一夜でした。今回のスパークスの来日に尽力して下さった岸野雄一氏に心から感謝いたします。本当にありがとうございました!

*1:アルバム『No.1 in heaven』収録曲

*2:アルバム『Terminal jive』収録曲