ハンディ測定機の測定値は信頼できるのか?(栃木県編)
(この栃木県の測定結果にいては続編もありますので、よろしければ、こちらもどうぞ。http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110628#p1 ハンディ測定機の測定値は信頼できるのか?(栃木県編) 続編 )
このシリーズは前回で終えたのですが、栃木県で、簡易型測定機とサーベイメータを同一地点で測定したデータがありましたので検討してみました。
5月に簡易型測定機で測定した際、1μSv/h 以上の結果になった31地点について、6月に簡易型測定機とサーベイメータで再測定したとのことです。測定機の型番等は記載されていないようです。
なお、測定日時や(ミクロな意味の)測定地点は書かれていませんが、常識的に考えれば、2機種を同一地点で同時に測定したのだと思います。
出典はこちら。
http://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/c02/hoshano_kyoiku.html 栃木県/教育機関等における放射線量調査の結果
測定結果は、「2 追跡調査」「(4)調査結果」に PDF ファイルがあります。( http://www.pref.tochigi.lg.jp/kinkyu/c02/documents/hoshasen_gakko_tuiseki1.pdf )
追記 1,266地点(?)の測定結果をマッピングしたものがありましたのでリンクしておきます。(ウジャウジャが苦手な人は閲覧注意です) http://geigerdata2.appspot.com/plotter?id=agtnZWlnZXJkYXRhMnIaCxITZ2VpZ2VyZGF0YV9wbG90dGVyMhjkXQw
グラフ化
測定結果を単純にグラフ化してみます
細かくて見づらいと思いますが、青が5月の簡易測定機、赤が6月の簡易測定機、黄色が6月のサーベイメータの測定結果です。
ぱっとみてわかることは、5月より6月は線量が減っていることと、簡易測定機よりもサーベイメータの数値は低い値を示していることでしょう。
また番号8の地点は6月に極端に低下しています。表土をはがすなど何らかの対策をしたのかもしれません。
(追記 検索してみたところ6月2日〜5日に砂の除去工事をしていました)
全体のグラフだけでは分かりづらいので、5月の簡易型測定機の結果は外し、また並び順をサーベイメータの数値の大きい順にしたグラフを作成しました。
簡易型測定機の数字も右肩下がりですが、必ずしもサーベイメータの下がり具合と一致しているわけではないようです。
そこで、簡易型測定機とサーベイメータの測定値の、差と倍率 をグラフ化してみました。
赤が数値の「差」、黄色が「倍率」です。
番号8の地点は極端なので外すと、差は0.4μSv/h 位が多く、倍率は1.5倍くらいが多いようですが、良く分かりません。
差と倍率の散布図を作成してみました。
差よりも倍率のほうがバラツキが小さく見えます。
しかしながら、1.5倍違うとなると、たとえば10μSv/h のときには、15μSv/h を示すということになり、測定機として誤差とはいえなくなってしまいます。
(差が 0.4μSv/h というのであれば、10μSv/h のときでも、10.4μSv/h になるだけなので、機器の内部ノイズ等と考えれば誤差の範疇として良さそうに思います)
したがって、今回の測定結果のように、1.00μSv/h 前後の時の簡易測定機の特性(誤差)と考えるのが妥当かと思います。
機種にもよるのでしょうが、1.00μSv/h 以下の線量では、その程度の誤差はあるものと理解するしかないと思います。
追記
散布図に回帰直線を入れたグラフも作成してみました。
この式をみると簡易測定機の値は、かなり割り引かないといけないことになりそうです。
なお、小学校以下の25施設は50cmで測定しているため簡易測定機にはベータ線の影響が多少はあったのかもしれません(想像ですが)。
2ch 情報によると、計測に使った機種は、PA-1000 と TCS-161 だそうです。PA-1000 なら、先日の記事で検討したつくば市の結果のように、それほど大きな差は出ないと思うのですが、1μSv/h 程度になると、誤差が大きくなるということなのでしょうか。
また、同じく2ch 情報では、誤差の理由は、セシウム137で較正しているため、セシウム134もある環境では、簡易型測定機の誤差が大きくなるためではないかともあります。
データの表
No. | 簡易型5月 | 簡易型6月 | サーベイメータ6月 | 差 | 倍率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1.62 | 1.47 | 0.96 | 0.51 | 1.53 |
2 | 1.55 | 1.54 | 1.06 | 0.48 | 1.45 |
3 | 1.37 | 1.23 | 0.87 | 0.36 | 1.41 |
4 | 1.33 | 1.17 | 0.82 | 0.35 | 1.43 |
5 | 1.28 | 1.24 | 0.83 | 0.41 | 1.49 |
6 | 1.27 | 1.24 | 0.82 | 0.42 | 1.51 |
7 | 1.24 | 1.12 | 0.71 | 0.41 | 1.58 |
8 | 1.23 | 0.32 | 0.18 | 0.14 | 1.78 |
9 | 1.14 | 1.04 | 0.68 | 0.36 | 1.53 |
10 | 1.13 | 0.83 | 0.53 | 0.30 | 1.57 |
11 | 1.12 | 0.83 | 0.54 | 0.29 | 1.54 |
12 | 1.10 | 0.97 | 0.67 | 0.30 | 1.45 |
13 | 1.09 | 1.03 | 0.70 | 0.33 | 1.47 |
14 | 1.08 | 0.89 | 0.59 | 0.30 | 1.51 |
15 | 1.04 | 0.89 | 0.57 | 0.32 | 1.56 |
16 | 1.04 | 0.91 | 0.59 | 0.32 | 1.54 |
17 | 1.02 | 0.99 | 0.68 | 0.31 | 1.46 |
18 | 1.01 | 0.92 | 0.61 | 0.31 | 1.51 |
19 | 1.00 | 0.91 | 0.60 | 0.31 | 1.52 |
20 | 1.24 | 1.10 | 0.75 | 0.35 | 1.47 |
21 | 1.22 | 1.05 | 0.71 | 0.34 | 1.48 |
22 | 1.21 | 1.11 | 0.72 | 0.39 | 1.54 |
23 | 1.20 | 1.07 | 0.75 | 0.32 | 1.43 |
24 | 1.19 | 1.04 | 0.71 | 0.33 | 1.46 |
25 | 1.19 | 1.04 | 0.71 | 0.33 | 1.46 |
26 | 1.14 | 0.99 | 0.68 | 0.31 | 1.46 |
27 | 1.12 | 0.97 | 0.64 | 0.33 | 1.52 |
28 | 1.11 | 0.87 | 0.62 | 0.25 | 1.40 |
29 | 1.08 | 0.81 | 0.59 | 0.22 | 1.37 |
30 | 1.02 | 0.93 | 0.65 | 0.28 | 1.43 |
31 | 1.01 | 0.85 | 0.60 | 0.25 | 1.42 |
. | . | . | 平均値 | 0.33 | 1.49 |
. | . | . | 最小値 | 0.14 | 1.37 |
. | . | . | 最大値 | 0.51 | 1.78 |
. | . | . | 標準偏差 | 0.0700 | 0.0732 |
なお、値が飛んでいる番号8の地点を除いた場合は以下のようになる。
. | 差 | 倍率 |
---|---|---|
平均値 | 0.34 | 1.48 |
最小値 | 0.22 | 1.37 |
最大値 | 0.51 | 1.58 |
標準偏差 | 0.0618 | 0.0524 |
.
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常総市の自然放射能は年間2.6ミリシーベルト?
茨城県常総市では学校等の放射線量を測定しウェブサイトで公表しています。
http://www.city.joso.lg.jp/joso/www/02608.html 常総市ホームページ - 健やかに ひとを育み みどり豊かな まちづくり
謎めいた一文
そこに、謎めいた一文があります。
(平常時でも0.3マイクロシーベルト/時程度の値が観測される場合もあります)
普通に読めば、常総市の自然放射線量が0.3μSv/h ということなのでしょう。
しかし、0.3μSv/h に24時間365日を掛けると、2.6mSv/y になってしまいます。
日本での自然放射能の平均値は、1.0mSv/y 前後だそうです。高いとされる山口県でも1.2mSv/y 位のようです。
これは学術的な新発見かと思います。中心市街地活性化(にぎわい事業)のネタになるんじゃないでしょうか。
しかも、武田邦彦教授が言われていることから考えると、常総市に生まれ育った人間は、放射能に強い人間になっています。
地元住民はその体質を生かした支援活動で東電被害者の救済ができるという、とっても素晴らしいニュースでもあります。
http://takedanet.com/2011/04/post_14f6.html 武田邦彦 (中部大学): 原発 緊急情報(52) 低線量率の危険性(どうして違うのか?)(平成23年4月11日 昼の12時に執筆)
また、人間には「人種」があり、南の方に住んでおられる人は肌が黒いのですが、これは紫外線が強いので、紫外線によって皮膚ガンにならないように皮膚が黒くなっているのです(メラニン色素の沈着で紫外線を防御。おそらくその他の修復力も高い。)
このように人間はその環境にあった体になりますので、基本的には放射線が強い地域にお住みの人は、放射線に対して体が防御する力も強いということが言えます。
さらに謎めいたリンクが追加されてた
今週の初めにはリンクが追加されていました。
参考リンク … 国立がん研究センターホームページ
リンク先に行くと、国立がん研究センターの「見解と提案」が表示されます。
常総市の「参考」が、「研究センターの見解と提案」?
何かが関係するのか思い、国立がん研究センターのページを見ていたところ、こんなページが有りました。
http://www.ncc.go.jp/jp/information/sokutei_ncce.html 国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)敷地内における放射線の測定結果
そして、そこ記載されている研究センターの敷地境界の値は5月ごろから 0.3μSv/h 台が続いています。
ひょっとして、常総市の 0.3μSv/h というのは、この値のことを言っているのでしょうか。
常総市のサイトにある「・・・観測される場合もあります」というのは、(場所やタイミングによって)瞬間的に表示された最大の値を言っていると読解していたのですが、このリンクによって振り出しに戻ってしまいました。
あの一文とリンクは、どういう意味なんでしょう。
追記
ちなみに、常総市のサイトの測定結果に書かれている測定高さの注意書きですが、火曜日には「中学校」の記述がなかった(抜けていた)のに、水曜日には書かれています。担当者が修正したのでしょう。
そういう修正なら可能なのに 0.3μSv/h の記述は修正できないということは、担当者レベルでは処理できないような思惑があるということなのでしょうか。
6月15日 追記 謎めいた一文が削除されました
本日、サイトを見てみると、「平常時でも0.3マイクロシーベルト/時程度の値が観測される場合もあります」という文言は、削除されていました。
一体、なんだったんでしょうね。
追記 9月1日 市議会会議録に、この件について記載がありました。
こちらで記事にしましたが、議会で質問の有った頃に、削除したようですね。
http://d.hatena.ne.jp/hyakubann/20110901#p1 6月の常総市議会で「平常時でも0.3マイクロシーベルト/時程度の値」の件の答弁があった