冥王星の顛末は久々に面白かった

 国際天文学連合IAU)が冥王星を惑星から外し、水金地火木土天海の8つに減らしたニュースは、久々に「役に立たない?」科学が脚光を浴びた。はじめは冥王星より大きな3つの星を新たに惑星とする見込みだと報道されたが、IAUではそれを進めようとした議長が猛反発を食らい、「良識」ある8惑星案に決まった顛末が大きく報道された。唯一米国人が発見した惑星だからこだわったとか、「科学が政治を押し切る」というような報道は、説得力があった。
 そして、その結果はとてもよい話だったと思う。結局は、8惑星案が妥当という専門家の意見が続出し、よく考えれば新聞も初めからそれを匂わせていた。そもそも、冥王星は惑星とはいえないという意見もあると、子供の図鑑にも書いてあったと思う。また、十数年前だったか、水金地火木土天冥海と書いた広告があった。実際に冥王星のほうが海王星より近くなる時期があると本で読んではいたが、当時がその時代だと思い当たり、この広告にも感心したものである。
 24日の毎日新聞コラムは、最初から結語まで、実にうまく書いていたと感心した。
 冥王星の価値は、惑星かどうかではなく、その発見の経緯にある。天王星が発見された後、その軌道が万有引力の法則に合わないことがわかり、未知惑星の存在が示唆され、「多体問題」を解いた結果、天王星の位置と質量が予測され、ほぼそのとおりに天王星が発見された。さらに軌道の誤差が残ることから冥王星の存在が予想され、やはりほぼ予測どおりの場所に見つかった。私は幼少のころこの話を図鑑で読んで感動した。*1

*1:もっともこれは計算違いがあって、発見は偶然だったという報道もある。まぁ、それでもよい。探すプロセス自体に価値がある、といったら、いかにもアメリカ的だろうか

8.24 駒場シンポジウムのお礼

Date: Fri, 25 Aug 2006 08:57:33 +0900
皆様
 昨日のシンポジウムはたいへん勉強になりました。MCMCが何の略語なのか、ベイズと経験ベイズの違いもわからなかったので、○○さんの仕分けはたいへんわかりやすかったです。
 最後に変な質問をしてごめんなさい。しかし、私はいまだに納得できません。「このシンポジウムの講演には、基礎も応用も含まれていたはずである。基礎科学ならば、何が【】尤もらしいかではなく、どこまで証明できているかが問われる。応用科学ならば、現時点での情報から、どう意思決定すべきかが問われる。この両者で、統計的手法の使い方、考え方は違うはずである。しかし、このシンポジウムでは、その違いがよく見えなかった。」というのが私の質問の趣旨です。
 あの場の議論では、今回の講演はすべて基礎であったというお返事でした。私はそうは思いません。科学的議論という意味での迫力は十分に感じましたが、講演の半分くらいは、まさに応用研究だったと思います。
 途中での○○さんのお返事では、統計学というものは、帰無仮説の棄却検定も含めて、後者、あるいは先入観のない客観的判断というものでは「ない」という認識だったと思いますが、これも私には理解できません。「オッカムのかみそりと帰無仮説」という考え方は、「どこまで証明できたか」を判断する上で、私は明快な基準だと思います。「AIC(など)によるモデル選択」はとても便利だと思いますが、なぜあの式(パラメタ数の割り引き方)でよいのかは私には説明できません。ベイズの事前分布という考え方は、主観を明示するという意味でわかりやすいし、順応的管理などによくあっていると思います。しかし、それが「客観的証明」といえるとは思いません。【】
 昔から統計学は苦手ですが、今回、ますますわからなくなりました。しかし、さまざまな技法の入門としてはとても有意義でしたので、これから勉強させていただきます。今後ともよろしくお願いします。

Date: Fri, 25 Aug 2006 11:26:40 +0900
○○様、皆様
【科学的命題は決して証明されず、確からしさ、信じる度合いを増していくのみだという指摘に対して】そうでしたか。私はそこまで悟れませんでした。だから私には統計学がわからないのでしょう。まだわかりませんが、何がわからないかはわかってきました。ありがとうございました。
Date: Fri, 25 Aug 2006 15:07:27 +0900
○○さん
予防原則では、Full Scientific Certaintyがない場合でも対策をとると書いています。ということは、十分な実証のある場合とない場合があるはずです。基礎科学は、当然十分な実証を求められるはずで、予防原則はそうではない。 実証が不十分であることを自覚しつつ、意思決定することがあると思っています。
 皆さんの議論を聞いていると、その違いがみえて来ませんでした。ごめんなさい。