昨年末の衆議院選挙で減税日本が、リコール署名簿収集運動の受任者名簿を選挙で利用するということは予め公言されていた。この行動は「違法」である。
しかし、当ブログにご意見を投稿いただいた「広沢一郎」氏はこの「違法性」がご理解いただけないようであるし、当の減税日本の代表、河村たかし名古屋市長も理解できていないようだ。当事者であるネットワーク河村市長の責任者と自称される平野一郎氏も理解していないのだろう。
では、どのような法律のどこに抵触するのか。
まず、前提としてこの受任者は、おおよそ次のような形で募集がかけられているようだ。
このハガキを収集している主体は「ネットワーク河村市長」であり、「名古屋市議会リコール署名受任者係」となっている。
また、ハガキの最下段には
ご登録された個人情報は上記団体以外の第三者に開示提供せず、名古屋市政改革活動の目的に限定して、厳重かつ細心の注意をもって管理いたします。
と明記されている。
ここで指摘しておきたいことが二つある。
今回の選挙で減税日本はこの受任者名簿を使った。「衆議院選挙も名古屋市政に関係ありますから」とは河村代表の言葉だったが。百歩譲って名古屋市政の問題解決の為に、国政選挙に名簿を拡大利用しようというのは認めたとしよう。例えば名古屋市内で要望されている防災施策を国の予算で行うというような事はあるだろう。つまり、国を利用する事によって、名古屋市政の問題を解決する事は確かにある。しかし、名古屋市政の問題解決と、「名古屋市政改革活動」とは違う。
名古屋市は独立した地方自治体なのであり、その議会も独立性を保っている。国政からの干渉で特定の都市やその議会が「改革」を強いられるとすれば、不当な干渉であると言わざるを得ない。
減税日本、または河村代表は「名古屋市政の問題」と「名古屋市政改革活動」の相違が判って居ない。非常にケジメの無い認識であると思われる。
もう一つ。
この受任者名簿の利用について、具体的には候補者推薦(または紹介)のハガキが受任者名簿登載者に送られてきたようだ。推薦者がこの名簿の管理責任主体である「ネットワーク河村市長」であればまだ理解できるかもしれないが、どうも推薦者もすでに「ネットワーク河村市長」ではなく「減税日本」なり(図柄から判断すると)河村代表ということになっていそうだ。
と、すると、「ネットワーク河村市長」は減税日本か河村代表という「第三者」に、受任者名簿登載者の住所氏名等を「開示提供」したということになる。
または。
選挙には公営で郵送できるハガキというものがある。
このハガキの送付主体は当然、「未来の党候補者」であり、「ネットワーク河村市長」が自費でハガキを送っていれば「開示提供」には当たらないかもしれないが、公職選挙法違反という事になるだろう。また、この情報を「提供」して、この公営ハガキが送られたとするならば、公職選挙法には違反していないが、「ネットワーク河村市長」から「未来の党候補者」という「第三者」に受任者名簿登載者の住所氏名等が「提供」されたということになる。
どうもここまでが事実関係のようだ。
では、以下で抵触する法を示す。
対象となる法はいわゆる「個人情報保護法」(個人情報の保護に関する法律)だ。参照
抵触する条項は第十六条 (利用目的による制限)
法では次のように定められている。
個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
法の規定ではこの条項に違反する事実が認められる場合は、主務大臣(総務大臣)は勧告、命令、及び中止をさせ(第三十四条)それでも是正されない場合は「六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」という罰則が定められている(第五十六条)。
「ネットワーク河村市長」が受任者として数千人の個人情報を得ているとされる任意団体であることは明白なので、「個人情報取扱事業者」の定義に当てはまる。
また、第十六条でいう「前条の規定」は
第十五条であり、その1項目は
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
である。
この受任者募集のハガキの最下段に「利用目的」を記載したということは、この条例を意識していることはこれも明白だろう。収集の段階では法に則っているようなスタイルを取っているといえる。
そして、第2項にはこうある。
個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。
この2項を見れば、募集時に言われた「 名古屋市政改革活動の目的に限定して」という言葉と、衆議院議員選挙における利用が「相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲」を超えていることは明白だろう。
もう一度言う「 名古屋市政の目的に限定して」として募集されたのではない、「 名古屋市政改革活動の目的に限定して」として募集されたのである。
その他、「ネットワーク河村市長」がこの法律に抵触している問題は3点ほどある。
1.「開示等の求めに応じる手続」(第二十九条)を公開していない。
「ネットワーク河村市長」は任意団体であって、その存在自体が不明確だ。
( 河村サポーターズ オフィシャルブログ | ネットワーク河村市長 | 名古屋市議会リコールについて掲載しています。 いつの間にか「河村サポーターズ」のブログに「ネットワーク河村市長」の名前が入っているが、この任意団体に対しては所在も連絡先も不明だ)
平野一郎氏が「受任者から申し出があれば受任者名簿から削除する」と記者会見で述べたようだが、この法に定められたような手続きについては開示されていないし、そもそも連絡先が無いのだから「申し出」のしようが無い。
法第二十三条の5には次のようにある。
個人情報取扱事業者は、前項第三号に規定する利用する者の利用目的又は個人データの管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置かなければならない。
ところで「ネットワーク河村市長」の代表者は鈴木望氏であった筈だ。それが知らない間に職を離れ、いつしか維新から候補者として出て、今では衆議院議員となっている。
ところがこの条項に示されたように、受任者に対してネットワーク河村市長の代表を降りたとか降りて居ないとかが公表されていない。
現在、この名簿については平野一郎氏が管理責任者という事になっているようだが、その責任の根拠も不明だ。ネットワーク河村市長を構成していた団体の内、すでに解散した団体もあるはずだ。「ネットワーク河村市長」の団体としての存続根拠も危ういものだろう。
とするならば、鈴木氏の離脱、構成組織の解散等を受けて「ネットワーク河村市長」も解散して、管理責任を持つ個人情報についても破棄すべきだったのだろう。
3.「安全管理措置」(第二十条)を怠っている。
法の第二十条には
個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。
とされている。
ところがリコール署名簿について、その一部が流出するという問題が起きている。
明白に法的な問題が起きている。
または、自分たちが集めた大勢の市民の個人情報が、流出してしまったにも関わらず、「ネットワーク河村市長」という団体は何も対策を取っていない。
敢えて言えば、無知から、その拡散に手を貸したとも言える。
この問題に関していうと、未だに明白な原因の究明も行われていないし、原因も不明なのだから再発の対策も不明なのだろう。
そして、誰も責任も取らなければ謝罪もない。
自分たちの政治的主張に賛同してくれた人々の気持ちを踏みにじって、だだくさにその情報を取り扱った結果がこれで、その責任も感じない。
これは最早社会人として失格としか言いようが無い。
このように「違法性」は明白である。
では、なぜ法第三十四条の規程に従って主務大臣が勧告を行わないのか。
それはこの法の「第五章 雑則」の中の第五十条「適用除外」の規定があるからである。
その5に「政治団体 政治活動(これに付随する活動を含む。)の用に供する目的」の場合、「前章の規定は、適用しない。」と「適用除外」されているのである。
違法性は明白であるが「除外」されているのである。
「除外」されているから「適法」であるわけではない。
適用除外を受ける場合であっても、第五十条の3項には努力義務を謳っている訳であるし、個人情報の取り扱いに関して、その目的の開示、自己コントロール権の確保等は一般事業者と同等かそれ以上の社会的責任の下にあることは明白だ。
除外はされていても違法は違法なのだ。罰則規定にかからないだけだ。
そして、もう一歩考えてみて欲しい。
この法第五十条の適用除外の規定について、その理由はどこにも述べられていない。
なぜ、これらの業務に関してだけ適用除外になっているのか。
これは単に「特別な権利」、つまり「特権」なのである。
一般の国民、事業者、税金を払っている人、(顧客会員を募っているのであれば、ラーメン屋のオヤジでも)個人情報を収集し、それを利用しようとする際には開示窓口であったり、問い合わせ窓口を設置するものだ。(天下一品 個人情報保護について、株式会社 藤一番「プライバシーポリシー」)
それを「減税日本」や「ネットワーク河村市長」または河村代表は、この適用除外という「特権」にあぐらをかいて、問題が起きても責任も対策も取らない、そして違法な目的外使用をしても恥じない。
昨年の選挙では「減税日本」の訴える減税政策の根拠の無さ、支持の無さが河村代表の迷走を産んだのではないのだろうか。
減税日本や河村代表は、こういった経済理論であるとか、法的解釈について、もっと謙虚に、当然の社会通念(つまり、「常識」)を受入れるべきであろう。常識の無い態度に人々が付いていけなく思っているのでは無いだろうか。
・・・・・まあ、私としてはそうやって何時までも自分勝手にムチャクチャしていてくれた方が支援者、つまり被害者が減って良いのですけどね。
情報をいただきました。
なんでも昨年の衆議院議員選挙において、減税日本でも各地で塾を開いて候補者を一般公募しましたよね。
減税日本ではこの応募者のエントリーシートを約百人分、紛失しているのですか?
その為に、応募者に再提出を求め、中にはこういっただらしない情報管理に嫌気がさして、減税日本からの立候補を取り止めにした応募者も居たそうですね。
なぜ、こんな問題が起きるのか。
それは緊張感が無いからですよ。
問題が発生したときに、その原因を追究してしかるべき責任を負う、その決意が無いから、組織に緊張感が無く、同じような問題が繰り返されるのです。
・・・・・まあ、私としては(以下繰り返し)