かなりグッときた。どーっと押し寄せるいろいろに飲まれてしまって、どうしようって、ちょっとおろおろするくらい。客観的な感想は書けそうにないけど、つまりとても簡単にいえば、一番痛いところを直に触れられているような気分になる物語だった。
- 作者: 浅野いにお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/05/02
- メディア: コミック
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15話を境に、物語は裏表になって、つまり芽衣子の物語になる。
ビルがあって 道路があって 車が走って 人がいて、
うれしいことも かなしいことも、
すべてが奇跡のバランスで成り立っていて
街のエネルギーみたいなものに
今の私は簡単に呑み込まれてしまいそうで、
自分が、前よりも随分弱くなっていることに、気付く。
#23
いろんなことに気付かないで、疑わないで、赦していられれば、たぶんきっと無敵でいられる。でも一度立ち止まったら、奇跡のバランスに気付いてしまったら、「ふざけんな」って思ってしまったら、そこから抜け出す/続けるには、何かを発見しなきゃいけない、ような気がする。でも、もし「見つけた」と思っても、その先また抜け出せなくなるときがこないとは限らない。いろんなものが、裏表でくっついていて、ぐるぐる同じところを回っているような気分になる。
でも、もしかしたら、良いこと、悪いこと、大事なこと、意味のあること、そういうもの全部が本当は何でもなくて、自分が発見してはじめてそれに名前がつけられるのかもしれない、なんて思う。安全で、確かで、まっすぐな道なんて、たぶんなくて、どうやったらこの輪っかから飛べるのかもわかんない。そんなことを考える自分を笑うのは、いつも、いつかの自分なんだよなぁ。そして、そういう小さな気づきが、いつか「見つけた」に繋がるのかもしれない。なんてことを考えた。
そのへんの葛藤に答えるビリーの台詞がいい。
たぶん俺にとって、人生ってのはただ生きてくってことでいいのかもな。#25
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物語の中に何度も出てくる、この河原には、私も居たことがある。というか、私はここで、卒業制作の映画を撮ったんだった、ということに2巻でやっと気が付いた。
あの頃の私は、真っ青だった。そして無敵だった。こんな「今」にいるなんてことをまるで想像していなくて、その足下がずっと先まで続いていることを信じて疑わなかった。でも、私はそれを笑わないし、この「今」に名前を付けるのはもう少し先でもいいと思ってる。
輪っかはまだ、閉じてないし、いつだって最新だ、と思うけど、時々足の裏にあるそれを思い出す、そんな漫画でした。