米国における死刑制度

Capital punishment in America : Revenge begins to seem less sweet (The Economist)
2007年8月の記事。最近、Audio Editionのバックナンバーから面白そうなものを聞いていてこれを見つけた。聞くだけではあまり理解できないので読むことに。
米国では死刑を実施する州はどんどん減っているという。廃止してしまった州も多い。連邦最高裁は過去において死刑を違憲だと判断した時期もあったが、すぐに立場を変えて州の判断に任せるようになったという経緯がある。連邦レベルでは死刑があるのかどうかはよく分からない。テキサス州だけは例外的な存在で、死刑判決や死刑執行が他州と比較して異常に多いという特徴がある。もちろん住民の死刑制度に対する支持も強い。非常に驚いたのが、死刑実施のコストである。ある州では死刑実施するために一件当たり200万ドル以上かかっているというからビックリである。そのため終身刑よりも死刑の方が低コストという見方は正しくない。終身刑だと途中で恩赦により釈放されるという懸念が、死刑制度を容認する背景にもあったが、恩赦なしの終身刑を導入する州も増えている。死刑実施に多大なコストがかかるのは、死刑実施までの期間が非常に長くなっているという点と、再審請求や弁護人との法廷闘争に費やされるコストが多いためである。死刑が犯罪の抑止力につながっているとの研究もあるが、サンプル数が少なく、殺人事件の件数も年ごとに非常に変動するために説得力にかけるのが実情だ。死刑のない欧州のほうが殺人事件が少ないという例もある。ただ人口構成や雇用状況なども考慮しないと比較することは意味がない。死刑にそれだけコストをかけるのであれば、死刑を廃止してその分を捜査に投入するという考えもある。多くの殺人事件が未解決のままになっている。死刑宣告しようにもそもそも逮捕されないことには意味がないのだ。