カシミールの平和を求めて始まった 子どもたちのための印パ共同出版が完成

2011年、日本は地震津波原発事故と大震災に見舞われ悲しい年になりました。特に日本の子どもたちは福島原発放射能拡散によって、未来への道のりが一層険しい年になっています。大人の責任が深刻に問われた厳しい年でした。こうした中からでも希望への道のりをしっかりと見つけていきたいものです。

1.こうした状況の中で、世界で初めてインドとパキスタンが共同制作した「平和絵本」が2011年には完成しました。喜びを持ってご報告したいものです。これは1998年、国際識字文化センター(ICLC)が、カシミール問題で激突して対立を深めるインドとパキスタンの国境紛争において、どうしたらインドとパキスタンが共同で平和を子どもたちのために育むことができるか、徹底して議論した末に1998年から開始された平和プロジェクトです。

2.2001年、東京で、インド、パキスタン、中国、アメリカ、日本など5カ国の参加者が招聘され、第1回平和絵本の共同編集会議が開かれました。会議では、インドとパキスタンが、1998年にそれぞれ制作した2つの素案を討議しましたが、それをもとに2004年、ネパールのカトマンドゥーで、ICLCの主催のもと、インドとパキスタン、ネパール、日本から16名の作家、編集者、画家などが招聘され、さらに絵本の内容が煮詰まっていきました。



3.この会議では、3日間にわたって子どもたちの平和を阻害する問題が徹底的に討議され、共同で平和絵本の骨子が作られ、最終素案が共同制作されました。これをもとに編集作業は進みましたが、内容の表現やイラストの内容、出版方法などをめぐって難航を重ねましたが、2011年、平和絵本の英語版がついに完成、インドのデリーにあるNBT出版社から出版されたものです。2012年1月25日にデリーで、関係者が出席して出版記念会が開催される予定です。


4.今後は、この英語版をもとに、インド、パキスタンなどのそれぞれの言語、ヒンディ語ウルドゥー語ベンガル語など10数言語に翻訳され出版されていくことが始まっています。このプロジェクトには、「国際交流基金」、「広島祈りの石」、ネパールのユニセフなど多数の団体や個人などが協力を惜しみませんでした。紙面をお借りして、心からお礼を表明したいと思います。

5.熾烈な国境紛争で犠牲になるインドとパキスタンの二つの国のこどもたちにとって、平和絵本という新しいアプローチが楽しい絵本でもって示されたことは、小さなことのように見えて実は世界の歴史にもなかったような新しい融和と寛容の時代が始まっていることを意味しています。平和は叫びでは決して達成できません。具体的に子どもたちの心の中に平和の礎をしっかりと築いていかねばならない課題です。それには、感動の中でメッセージをきちんと届けることです。



6.ここに紹介したのは3点の絵本ですが、プロジェクのト最終には全部で4点が出版され配布されることになっています。このプロジェクトのあと、国際識字センター(ICLC)は、日本・韓国・中国の子どもたちへ、3カ国の近代の歴史を扱った歴史共同出版パレスチナイスラエルの子どもたちへは、平和のための共同出版を開始することになっています。いずれも世界で最も難しい課題ですが、「これからの子どもたちに、世界で一番大切な問題」を絵本を通じて真っ先に届けていきたいのです。今年は、子どもたちに希望の種をまくことのできた年です。関係の皆様に心から感謝申し上げます。

7.平和問題は、遠くの理想や平和を語ることではありません。、現実の厳しい環境の中で苦しむ子どもたちの心の中に具体的な果実を実らせていくことが必要なのだと思います。絵本は今後、ネットや語りなどでも広く配布され、世界中の子供たちへも届けられていくことになっています。

心からの感謝と共に

国際識字文化センター(ICLC)



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ティトリと希望の音楽


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2004年、ネパールで開催された平和絵本の共同編集会議