いい結婚式だったね(マジで!)

先日、中国で結婚式をあげた友達から、結婚式のビデオが送られてきた。


こういうのって、何ていうか、ほんともう、使い道っていうのかな、
需要っていうのかな。
いや、もう全然嬉しいんですけど。

私も私で、家に不在過ぎて、
宅配業者の方々が3往復くらいした末にね、

「ほんと、もう、勘弁してください、このアウトドアめ」みたいな電話がかかってきて、

でも不在っていうか、どっちかっつーと居留守寄りっていうか、

宅配業者の頑張りは影でずっと見守ってたっつーか、
他人事じゃなかったっつーか、
インターホンをね、Bボタンあたりと間違ってんじゃないかなくらいの
押しっぷり、しかと見届けてた。息継ぎ無し。

ところが一方、くしくも私、万全のパンツ一枚でしたし。
そのパンツとも三回夜を越してたし。

で、まぁ時間指定って裏技を使ってみたり、
お気に入りのワンピース着て二時間くらい緊張して待ったりで、

やっとのこと届いた品が、コレ、ね。
いや、もう全然嬉しいんですけど。完全サプライズ。
ほんとね、写真で済ますとかいう方法もね、あったんじゃないかなって。


で、まぁ、見るタイミングを完全に失ってた。
ほんと、どう転んでも。


なので、友達から電話かかってくるのがあと一日遅かったら、
金曜ロードショーの「ラピュタ」、これに撮ってた。間一髪。




友達「見た?」

私 「み、見たよー!思わず二回も見ちゃった!」


思わず嘘ついちゃった!


友達「すっごいでしょ?!」

私 「あ、うん!すげぇ。スケールが、まず違う」

友達「ほんと中国びびるよね?」

私 「びびるね!えっと、あそことかほんとビックリした、えっと・・」


って、言いながら、もう必死で受話器片手に、ビデオつっこんで再生。

「二回見た」とか言った手前、後戻りはできない。
完全犯罪目指した。

とりあえず、片っ端から、見た映像の感想を言って、
「ドレスの形がきれいだった」とか「教会がアンティークっぽい」だとか、そういう手法で切り抜けようと思った。


んだけど、ビデオ、しょっぱなから
物凄い勢いで男達が、民家のドアに体当たりしてる映像。

急いで音量上げたら、

どーん
どーん
言ってる。

説明無し。


言葉失うよね。


「え、ビックリしたとこって どこー?」
とかトンチンカンなこと言う友達に、

「もちろん最初!一揆みたいになってるっ!!」て、声荒げました。

ほんと。ビックリつったらココしかないでしょ!


って思ったんだけど、

なんだろう、これ。今、目の前でドアが壊されて、
男達が民家に突入してる。これまたビックリ。


え?結婚って、こういうのだっけ?
入場の場面はあったけど、突入の場面とかあったっけ?

私が「もう結婚なんて!」とか目を背けてる間に、
結婚の仕方ってだいぶ変わった?
もしくは、彼、いかなる時も任務を忘れない特殊部隊(S.W.A.T)の
一員?


呆然と見てると、やっと家の中にウエディングドレス姿の友達登場。

待ってました!
やっとね、ドレスの感想が言える。


「あ、ウエディングドレスさー」


って思ったそばから、ほんとね、男達が友達そっちのけで、
家中の引き出しを開けて、中のものひっくり返してる。

思わず「ドレス・・・大丈夫だった・・?」って聞いちゃったよ。

えっと、これ、結婚式のビデオだよね?
しょっぱなから友達んちが、
すごい勢いで強盗にあってるんですけど。
戸棚とか、引き倒されてんですけど。


観念した。

「ごめん、実は今、初めて見てる。
 見てるんだけど、えっと、なんか、
 とても結婚できる雰囲気じゃないっつーか」

白状すると、


友人曰く、
中国では大切な娘をそう簡単にはやらない みたいな儀式があって、
花婿が迎えに来るとき、家の鍵をしめたり、
花嫁の靴を隠して外に出れなくしたり、
そういう儀式があるらしい。

花婿たちは、靴、探してたのね。

中国すげぇ。

嫁の実家、完全にボッロボロだけど、なんかもう、中国すげぇ。

花婿、花嫁の父に言われて、最終的に玄関で、すげぇ腹筋してる。
「こいつが欲しかったら、腹筋100回しろー」みたいなことになってる。

それを皆、和やかな雰囲気で見守ってるけど、
その後ろで玄関のドア、完全に外れてる。
中国すげぇ。何でもアリ。



で、まぁ、何とか花嫁と無事、結婚式場へ行けたっぽい。

いよいよ入場の場面になった。


私 「こっからは、普通?」

友達「まぁ、見て。」



入場。



なんか、ギーって扉が開いたかと思ったら、
花嫁じゃなくて、

「なんか、ちっこいオッサン出てきたけど」

「あれ、司会者だから」

その後ろから花嫁。
完全に被ってる。花嫁、見えにくい。
オッサンなめの花嫁になってる。

しかも、その司会者のオッサン、こんな厳かな場に、
マイク持ってきちゃった!って思ったら、

「ねぇ、何か、めっちゃ喋ってる!中国語!いいの?」

「中国はね、結婚式に司会者がいるの」

「仲人じゃなくて、あえて?」

「あえての、司会者」

「なんか、みのもんたの朝ズバに見えてきたよ?」

「うん、式の中心は、司会者だから」

「えっと、この人、親戚?」

「知らない人」

「え!こんな喋ってるのに?!」

「初めて会った」

5分位して、ようやく、
カメラがアングルの悪さに気がついたようで、
オッサンをよけて花嫁を映し始めた。

したら、丁度、子供たちが花籠もって花嫁のまわりにやってきて、

「あ、いいなぁ、あの花を まかれるやつ、私もやって欲・・・」

友達、ぶつけられてました。花。
花っていうか・・・マリオでジュゲムが雲から投げてくるようなヤツ。
明らかに、花じゃないの混ざってる。
子供達、完全にワルノリ。
思いっきり振りかぶって投げちゃってる。

「すげぇ痛かったよ」

うん、やっとビデオに映った友達の顔が、
完全に笑ってないもん。真顔だもん。

「この子供たちって」

「初めて会った」

あ、やっぱ?


なんか、そろそろ言いたい。
「いーなー、私も結婚したくなったー」ていうセリフを使いたい。
使ってあげたい。


「えっと、そういえば!
 あれどうした?私達が作った、出会いから結婚までのビデオ!
 評判良かった?」

「あーあれ?」

「うん」

「中国では流行らないから、やめなさいって言われた」

「え・・・」

私、あれ撮るために、仕事休み取って江ノ島まで撮影に行ったのに?

「あ、でもそこは譲れなかったから、流してもらったよ」

あ、ほんとだ、流れてる、VTR。
流れてるけど、そのスクリーンの前で、

「なんか、オッサン歌ってない?」

「なんかね、中国の司会者って歌とかも披露してくれるみたいで…」

今、歌っちゃった!
VTR流れてるのに、今、歌っちゃった!
我慢できなかった!

「なんかVTRで盛り下がったとこを、助けたって言ってた」



どうしよう・・
このビデオ。
私、本当に、もう一回見ちゃうかも。
二回見ちゃうかも。

いま、この瞬間にすら、また最初っから見たい気持ちがヒシヒシと。

心なしか、このオッサンを好きになり始めてる。
そんなオッサンの後ろで、笑顔を忘れたカナリアみたくなってる友達も、抱きしめてあげたい。

今なら素直に「結婚、おめでとう」て言える。言わせて。


その後も、友達がお母さんに感謝の言葉言ってんのに、
日本語だから盛り下がると思った司会者が、
いきなり手招きして、中国人の子供が歌、歌ったり。

それが何か、日本語の歌で、光GENJIだったり。

横についてきたその子のお母さんも得意げに
「すごいでしょー」みたいな顔で手拍子してたり、

あわせて司会者も手拍子、会場も手拍子。
してるのに、

「あの子、後で聞いたら、誰の知り合いでもなかった」

って、ミラクル———————!
(でも何か、そんな気してた—————!!)


「なんかね、中国って結婚式に招待するってのが無くて、
 「結婚式してっから行こうぜー」みたいな感じなの」

「席は?」

「早い者勝ち」








「なんかさ、ごめん。
 私、このビデオ、大切にするわ。」

「そう思って、みんなに送ってんだ」

「落ち込んだ時、絶対これ見る」

「ありがとう」




んで、電話切って、
すぐ見た。


あっぶねー、ラピュタ撮らなくて良かった。
飛行石より、がぜん浮けるわ。