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2013-08-23

全国百貨店の売上高変調に見る アベノミクスの真の持続力

| 16:31

7月の百貨店の売上高がマイナスに転じました。6月に大きく伸びた反動か、猛暑の影響か。アベノミクスで好転してきた消費が曲がり角に来ているのかもしれません。9月20日頃発表される8月のデータに要注目です。

オリジナルページ→講談社現代ビジネス http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36771



安倍晋三首相が進めるアベノミクスの効果で好調な伸びが続いてきた百貨店の売上高に変調をきたし始めた可能性が出てきた。

 日本百貨店協会が8月20日に発表した全国百貨店の7月の売上高(店舗数調整後)は、前年同月比で2.5%減少した。今年1月にプラスに転じた百貨店売上高は4月に0.5%のマイナスになったものの、その後も伸び続け、とくに6月は7.2%増の高い伸びを示していた。それだけに7月の数字の行方が注目されていた。

 協会の発表では、「7月は中旬まで、九州北部の豪雨災害をはじめ全国的な低温や天候不順によって集客に影響を受けたほか、セールの分散化で一部需要の後ろ倒しが見られた」ことを販売が落ち込んだ理由とみていた。また、土曜日が前年と比べて1日少なかったことが経験値では−1%前後の影響を与えているとしていた。

 それを差し引いてもマイナスであったことが分かる。

8カ月連続でプラスだった「身の回り品」がマイナスに

 中でも目を引いたのが「身の回り品」の売り上げ減少。前年同月に比べて2.3%減少した。靴、アクセサリー、ハンドバッグ、財布、傘といった商品。百貨店関係者によれば、景気に敏感な商材で、景気が良くなる時はまっ先に売れ始め、悪化する時はまっ先に売りなくなるという。景気に敏感な女性の支出が多い部門だからだろう。

 月次の統計でこの「身の回り品」がプラスに転じたのは昨年11月。

 それ以来、今年6月まで8カ月間連続でプラスが続いてきた。その「身の回り品」がマイナスに転じたのは、消費が変調をきたし始めていることを意味しているのかもしれない。

 もっとも、6月の「身の回り品」の伸びは14.0%増。夏のボーナスが増えたことで、前倒しで一気に財布のひもが緩んだという見方もある。7月は6月が大きく伸びた反動だった可能性もあり、8月以降の売れ行きを見なければ即断できない、という指摘もある。

 もう1つ注目されるのが「美術・宝飾・貴金属」の売り上げ。7月は14.2%増と引き続き2ケタの伸びを示したが、6月の16.3%増に比べて伸び率が鈍化した。この部門の売上高は昨年9月にプラスに転じて以来、伸び続けているが、明らかに傾向が変わってきた。

 12月0.7%増→1月6.8%増→2月8.6%増→3月15.6%増→4月18.8%増→5月23.3%増→6月16.3%増→7月14.2%増と、きれいに弧を描いている。5月をピークに伸び率が低下しているのだ。

「美術・宝飾・貴金属」はいわゆる高額消費の代表格である。

高額消費は株価の変動と相関がある

 プラスに転じた昨年9月は株価が上昇を始めた時期で、伸び率のピークだった今年5月には上昇し続けた株価が急落している。株価の上昇と相関関係にあるのだ。

株価の上昇によって保有株の資産価値が増えたり、売買益を得たものが、高額品の消費にまわる、いわゆる「資産効果」と言われる現象である。株価は7月に戻り歩調となったものの、5月までのように高額消費にどんどんおカネが回るという状況ではなくなっているということだろう。

 もちろん、これをもって、消費に一気に陰りが出ているとは言い切れない。伸び率が低下したといっても2ケタの伸びが続いているのだ。株価が上昇基調になれば、再び伸び率が盛り返す可能性がないわけではない。また、昨年11月以来プラスが続いている「食堂・喫茶」もプラスを維持しており、一気に消費を引き締めたという感じではない。

 地域別にみると6月の伸びが大きかった名古屋東京の7月のマイナスは1%以下で、土曜日が1日少なかった影響を除けば横ばいだったとみることもできる。

 7月の売り上げ減少は猛暑による影響も考えられる。衣料品の売り上げ減少が7.3%と大きかったが、暑さで衣服を買う気になれなかったのではないか、といった声も聞かれる。だが天候のせいだとすると、8月に入っても猛暑が続いており、売り上げ減少の傾向が続くということになりかねない。

アベノミクスでは大胆な金融緩和を打ち出したことで、デフレマインドが緩み、消費におカネが向かうようになった。百貨店の売り上げ増だけでなく、スーパーや外食産業の売り上げも6月は増えていた。今後、月末にかけて統計が発表されるスーパーや外食チェーンの売り上げがどうなるか、注目される。

消費税は予定通り引き上げられるか、8月の統計データに注目

 8月12日に発表された4−6月のGDP国内総生産)速報値でも、プラス成長が続いたけん引役は個人消費だった。安倍首相は来年4月の消費税率引き上げを予定通り行うかどうか、10月に最終決断するとしている。

 仮に7月の百貨店売上高のマイナスが、個人消費の変調を示しているとすると、消費税率の引き上げによって、消費の変調がさらに加速される可能性が出て来る。7月のスーパーの売上高や外食チェーン売上高がマイナスに転じ、9月下旬に発表される8月の統計データでもこの傾向が続くようだと、消費税引き上げの決断に黄色信号が灯ることになりそうだ。