飯舘村は負けない
- 作者: 千葉悦子,松野光伸
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/03/22
- メディア: 新書
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1956年、飯曽村と大舘村が合併してできた飯舘村。広大な村域でよく言えば集落の独立性、悪く言えば旧村対立が続いていた村をまとめるために取られてきた試みがようやく実を結ぼうとしていた矢先の放射能汚染。第3章の「村づくりのこれまで」に見る飯舘村の履歴書は一読の価値がある。役場の職員時代から旗振りをしてきた現村長は、計画的避難地域指定後も村内の事業所を存続させ(従業員は村外から車で通勤)除染を国の事業として行わせるために東奔西走するが、その政策が100%村民から支持されているわけではなく、特に若い世代からの反発が強い。
「がんばろう!」「負けない!」「被災地」というレッテルを貼ることで、思考停止してしまいがちなジャーナリズムに対して「物言う少数派」の主張と行動を汲み取って問題提起する姿勢は高く評価できる。ただ、「中立」に徹するあまり、著者の考え方が今ひとつ見えない。調査者としての姿勢かもしれないが、もう少し社会科学の研究者としての肉声が欲しかった。