2014 fiction

こちらは恋愛小説が主ですかね。昔はあんまり着手しなかったけど、読んで共感できるようになってきたので、大いなる進歩だと自分でも思います。


東京タワー (新潮文庫)

東京タワー (新潮文庫)

同僚から江國香織を一気に借りて読んだ。どれもするりと読めるし、それなりに心に響く気がするのに、後から思い返しても今一つ思い出せない。そんな中、『東京タワー』は比較的こびり付いたままな気がする。
どんどんと詩史さんに吸い込まれていって、透明に迷いなくのめり込んで詩史のための存在へと成っていく透くんというひとに、酷く共感してしまった。物語がひとまずの幕を閉めても、彼等は幕の向こう側でそのまま生きていくのだろうなと思った。それほどに肉感的な人物たちでした。


子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)

子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)

辻村深月はいつ・どこから着手すべきか随分と悩んだ。『名前探しの放課後』を上司から戴いて中々面白かったので、のんびり着手し始めています。
『ぼくのメジャースプーン』『冷たい校舎の時は止まる』を読んだが、とにかくくどい。序盤どころか中盤までは、有り得ない程に苛々させられた。こんなに読んでいて苦痛な本も珍しいなと思っていたが、『子どもたちは夜と遊ぶ』も同様に上巻は苦しんだ。しかし下巻は凄まじかった。
正直、ミステリーとして上質とは全く思えない。構成ももっとやりようがあるだろうと何度も舌打ちしたし、後半での飛翔の為にある助走が執拗に長く単調すぎるという意見は変わらない。それでも尚、最終部に雪崩れ込む感情の波には抗えなかった。再読してもこの高揚感には屈服してしまうだろう。
辻村深月に関しては、非常に複雑な気持ちで今後も取り組んでいく他あるまい。両手を広げて好きだと豪語できないが、無視できない潮力を持った作家という認識。


恋愛中毒 (角川文庫)

恋愛中毒 (角川文庫)

去年ヒットした女性作家が津村記久子なら、今年は山本文緒。『プラナリア』から始まり『ブルーもしくはブルー』『みんないってしまう』『絶対泣かない』『パイナップルの行方』『ブラック・ティー』『シュガーレス・ラヴ』と読み漁ったが、『恋愛中毒』は最もヘヴィで最もコメントしづらく、最も泥沼へと引きずり込んでくれた。
少しずつ制御不能になっていく主人公の様子を、まるで腕や足を次々骨折していくのに運転し続ける自動車の助手席に乗っているような気分で眺めている。心臓に悪い。
『眠れるラプンツェル』『きっと君は泣く』も好きなので悩んだが、『恋愛中毒』は特に構成も秀逸なので。


ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

川上弘美と言えば『センセイの鞄』が絶対の名作ですが、私はこちらを推したい。
ニシノユキヒコと様々な時期に出逢い、様々に恋模様(時々、恋愛未満)を繰り広げた10人の女性たち。どんな女性にとってもニシノユキヒコは心に残る男だったが、ただ彼の本質を正確に掴んだ女性は一人もいない。蜃気楼のような掴みどころのない男だが、10人の女性の目を通してきた私たち読者にだけ解ることもある。
単純に時系列順に並べるのではなく、かなり意図的に、巧妙に配置されているので、その点も読み終えたら「川上弘美ってスゲェ作家だなぁ…」と感心させられます。


勝手にふるえてろ (文春文庫)

勝手にふるえてろ (文春文庫)

綿谷りさを読んだのは本当に久々。最近面白いものを書いていると風の噂で聞き齧ったので読んでみたところ、確かに面白かった。
飾ったところのない、少々露悪的な、悪い意味で「素直になってやろう」という気概で書かれた彼女らしい十代の頃の文体はそのまま。内容の変化があったのは、著者自身がやはり二十代をちゃんと生きているんだなぁという印象。
今作での一番の読み所は何と言ってもオチですね。読んでいて何となく「こう落ち着くだろう」と思っていた予想を綺麗に裏切ってくれた、その手法が鮮やかで気持ち良かったです。


上遠野浩平は昔からファン。ジョジョは一昨年頃にハマった。さて、スピンオフ作品には手を出すべきか? ―YESッ! べきでした、大正解でしたッ!!
ブギポ×ジョジョの親和性たるや。文体やスタンドの設定がただ馴染むというだけではなく、ジョジョ第五部で未解決のまま終わったフーゴのその後を見事に描ききってくれた。物語としても最高の結末を見せてくれたので大満足です。