ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

ムスリムのキリスト教改宗

昨日と今日付の英語版はてなブログLily's Room”には、今年のイースターに、ヴァチカンで教皇ベネディクト16世から洗礼を授けられた、55歳のエジプト出身イタリア在住の元ムスリム・ジャーナリストの記事を掲載しました。
マレーシアでは、昨年5月末に、ジャワ系マレー人女性リナ・ジョイさんのカトリック改宗が最高裁で却下された件で大騒ぎとなったため、私にとって本件は他人事ではありません(参照:2007年6月27日・7月12日・10月16日・12月3日・2008年2月12日・2月28日付「ユーリの部屋」)。ムスリムカトリック改宗について、マレーシアならダメでも、イタリアのヴァチカンのお膝元なら大丈夫なのか、ということになります。その場合、国連憲章では保障されマレーシアも署名上では批准しているはずの、個人の信教の自由、すなわち、宗教を自分で選択する自由は、国によって左右されることになるのか、という大問題が噴出します。同時に、一個人のカトリック改宗を権利として認めた時、ムスリムウンマ(共同体)が大騒ぎになり、流血の惨事を招く可能性が皆無ではないと予想されるならば、個を優先すべきか共同体の安寧秩序を優先すべきかという問題も考慮しなければなりません。
イタリアではシャリーア法がないのに対し、マレーシアではシャリーア法が強化されつつあります。モダンなムスリムによれば、シャリーア法も改良が加えられ、現代社会に適応できるようになっているとのことですが、それにしても、教会と国家をとりあえず分離させた知恵を有するヨーロッパ諸国と、法も信仰も経済も教育もすべてがイスラーム的であることを理想とするムスリム社会とでは、少なくともしばらくの間は、どうしても齟齬を避けられないのではないでしょうか。
例えば、今回のイースター洗礼の件は、昨日届いたマレーシアのカトリック週刊新聞『ヘラルド』には掲載されていません。もし載せたとしたら、マレーシア国内のカトリック教会およびその他のプロテスタント教会正教会などに、どんな負の影響が及ぶかを思うと、複雑な気分になります。

トップのムスリム学者・指導者レベル138名がローマ教皇に公的書簡を提出して(参照:2007年10月24日・10月31日・11月1日・11月10日付「ユーリの部屋」)、現在も少しずつ対話の機会が拡大進行しつつあるとはいえ、その高次レベルの議論と、ムスリム社会において草の根レベルで起こっているぎくしゃくとの間で、どのように調和させ問題解決を図っていくのかは、かなりの難題であるといえましょう。

ところで、今日はマラヤ大学の元指導教官であったマヤ先生(参照:2007年12月29日付「ユーリの部屋」)からメールが届きました。復活祭の休暇で、ロンドンに4月15日まで滞在されるとの由。そして、新しく編集された本『言語と人権:マレーシアを焦点に』のご紹介がありました。インド系・マレー人・華人のプロフェッショナル女性達による分析と見解を集めたものです。マヤ先生らしいな、と思いました。

こうしていつまでもご連絡をいただける関係は、大切にしたいものです。