ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

堅実に確実に

公私ともに名古屋人との付き合いが増えた主人にとっては、「どうも名古屋人は口うるさい」のだそうです。私にとっては、それが名古屋経済の堅実さの秘訣であり、尾張徳川家支配下の城下町文化の誇りでもあるのに、よろず大ざっぱな(?)商業の町大阪で育った主人にとっては、戸惑うこともあるようです。
家計簿をつけるのが習慣のため、どんなに小さい買い物であっても、「レシートちょうだいね」とお願いしています。金銭感覚がよく似ているために、お金の問題で喧嘩をしたことは一度もなく、概ね協力的で助かります。でも時々、鞄やコートのポケットを探ると、よれよれになった古いレシートが出てきたりして、「申告忘れ」と私から注意される羽目になります。
これは家庭内での話ですが、名古屋出張に行くと、お店の人が必ずといっていいほど「レシートはいかがでしょうか」と申し出てくれるのだと主人が言いました。(そんなの当たり前だ)と思っていたものの、確かに関西では、場所やお店にもよりますが、レジ係が勝手に、機械から出てきたレシートを手で握りつぶして処分しそうになることもあります。慌ててこちらが、「あ、レシートください」と言うと、かえって怪訝な顔をされてしまいます。(ケチなヤツ)ということなのでしょうか。
でも、「一銭を笑う者は一銭に泣く」「小事に忠実なる者は大事にも...」の諺に従い、大切な習慣として守りたいと思っています。なんといっても、こちらは家計を預かる主婦。病持ちの主人が一生懸命に働いて得たお金は、とても貴重なのですから...。
もう一点、主人が褒めてくれた名古屋人気質としては、人の対応や仕事ぶりがきちんとしているということです。関西でなら口約束程度に済ませてしまうところも、何でもきちんと書類にまとめて提示するよう求めてくるし、そのように実践しているとのことです。「やっぱり落ち着いているよなぁ。堅実だなぁ」と。
結婚直後は、何事も私の細かい性格のせいだと思っていたようですが、ここまで来ると、(名古屋人ってそういう文化なのか)と納得がいくようになった模様です。かてて加えて「だけど、ユーリは寛容な方だよね」とも言い添えてくれました。やっと価値を認めてもらえたようで、我ながらうれしいです!
そこで、昨日書いたことの補足になりますが、多分、本売りビジネスを始めた人から見れば、私が「口うるさい日本人」という受け止め方なのだろうと想像します。でも、こちらだって、最大限、現地事情を理解し、現地文化を尊重してきたつもりですし、現地の他の人達との接触経験を鑑みて、できるだけ余裕をみているつもりでもあります。
例えば、リサーチ・テーマや研究発表日が決まってから資料を集めていたのでは到底間に合わないことが、仕事で滞在していた当初からわかっていたので、テーマは予め十ぐらい考案しておき、十年ぐらい前から、チャンスをねらって臨機応変、先回って、少しずつ資料を集めています。
フィールド・リサーチではとにかく時間が限られているため、「嘘も方便」よろしく、帰国日時を一日早めに伝えることもあります。信頼できてきちんとしている人には、「いざ何かあった時のために、予備日をとってあるの」と説明はしますが、そのことで怒り出す人もいません。むしろ、「あぁ、やっぱり日本人って、そういう風に前もって何でも計画しておくのね。私達も少しは見習わないと」などと、肯定的に言ってくれる人も少なくないのです。文献資料の購入だって同じです。シンガポールでもマレーシアでも、組織販売の場合、請求書などに「私達のことに興味を持ってくれてありがとう!」と、添え書きまでついてくることさえあります。だからこそ、単独で本売りを始めたその人のムラ気というのか居丈高な態度には、驚きを超えてすっかり落胆してしまいました。
ムスリム同士のビジネスは、非ムスリムとの交渉より信頼ができてうまくいく、と読んだことがありますが、商業ベースのイスラーム文化の一側面を表しているようで、納得がいきます。これもそれも、商売の原則を共有してこその話でしょう。
昨日の夕刊で、経済大国世界第二位を誇っていた日本が、ついにGDPで中国に抜かれたという悔し紛れの記事が掲載されていました。今後の国の方向性を見誤らないためにも、ここは一つ冷静な対応が求められるところですが、個人レベルでは、自分の力量の範囲内でコツコツ堅実にやることが肝心かと愚考します。ビジネスでも学問でも、視野を広く保ちつつも、急に先走って一人で手を広げない方が賢明ではないだろうかと思うのです。